「はがき通信」 からたくさんの元気と情報をもらいました
「はがき通信」 は、当事者の経験やアドバイスが書かれていて大変参考になりました。例えば、突然、血尿が出たときはびっくりしましたが、過去の投稿を調べて情報を得ることができ、不安の中でも心強かったです。
さらに、投稿者の方とのメールや紙面上のやり取りで適切な情報ももらえました。そして私も、この経験を他の人に役立ててもらうために投稿をしたりしました。どんどん体験談や情報が増えていく良い仕組みであったと考えています。
全国の仲間が一堂に会する懇親会もありがたかったです。懇親会参加によって、四肢麻痺者の旅行の仕方を教えてもらい、もう諦めていた旅行が可能になりました。
最初の参加は広島大会(2006)でした。宮島での記念撮影では、多数の車いすが勢揃いしたのを見て嬉しくなりました。「こんなにたくさんの仲間がいて一人じゃないのだ。」と実感しました。
横浜大会(2011)では、高齢の母と二人で参加して横浜みなとみらいにある大観覧車に乗りました。車いすが乗れる特別仕様のゴンドラが一つだけあり、健常者にはなかなかそのゴンドラが当たらないので「幸運のゴンドラ」と呼ばれていました。そのゴンドラに最優先で乗せてもらい、とても得した思いをしました。テレビなどでこの横浜みなとみらいの大観覧車の映像をみる毎に、母と二人で乗ったことをなつかしく思い出します。
●沖縄懇親会
沖縄大会(2010)では、美ら海水族館の巨大なジンベエザメが印象的でした。
「はがき通信」 がこの号で終わりになると思うと残念でなりません。奇跡が起こり、起死回生があればといまだに思っています。毎回、発刊日の25日を待ち遠しく待っていました。投稿者の名前を見つけては「お元気なようで良かった」とか、逆に長いあいだ名前が見つからないときは「ご病気ではないか」とか心配していました。廃刊になるとこんなこともなくなり寂しい限りです。
スタッフの皆様、大変お世話になりました。そして、ありがとうございました。
追伸 福岡市の舞鶴公園の牡丹芍薬園に行ったときの牡丹です。
福岡市:Y.I.
この出会いに心からの感謝を込めて
福島のSです。今回は、「はがき通信」が最終号を迎えるかも知れないということで、一言だけでも感謝の言葉を伝えたいと思い、投稿させていただきました。でも「はがき通信」を改めて読み返してみると、私にとってどれほど貴重なものなのか、大切なものなのかを、思いがけず別の視点から痛感したのです。無くして欲しくない、残して欲しい、という思いがさらに強くなってきました。
「はがき通信」には苦しんで倒れそうになりながらも頑張ろうともがいている昔の自分がいて、今の私を励ましてくれるんです。どんな生き方をしたいのか、今何をすべきなのかを思い出させてくれて、私の背中を力強く押してくれるんです。私自身、この不思議な感情に驚きました。胸が熱くなってきて涙があふれてきます。
なのに笑っちゃうんですよね。当時の自分の悲鳴が鮮明に聞こえてくるのですが、あの時の苦境を私は乗り越えて来たんだ!ということに初めて気が付いたんです。とてもしんどい時期に私はたびたび「はがき通信」に登場させていただいているんですね。
「はがき通信」の仲間たちは、誰でも、どんな言葉でも、温かく受け入れてくださいます。私が幾度となくお力をいただいてきた方々の言葉、勇姿が「はがき通信」の中で今もなお生き生きと存在していて、きっと今苦しんでいる仲間の心の支えにもなってくれているに違いないと思うんです。
「四肢マヒ小百科」の生の情報は、身近に頸損者がいなかったこともあり、私は誰よりも活用させていただいてきたと思います。問い合わせがあれば、私は必ずここからの情報を参考にさせていただいてきました。私たち頸損者にとっては、当事者の体験談から得る情報ほど頼りになるものはありません。
これだけ膨大な情報をこんなに分かりやすくまとめてくださって、代々「はがき通信」を築き上げてくださった編集、広報、関係者、支援者の皆様にはただただ感謝するばかりです。「はがき通信」の存続のために身を削りながらご奮闘くださって、本当にありがとうございます。最後の最後まで存続を祈っておりますが、今声を大にして伝えたいこと……私は「はがき通信」と出逢えてとても幸運でした。
2023.4.18.
福島県:T.S.
「はがき通信」ありがとうございました!
コロナ禍が丸3年間を越えました。私が生活している施設は通院以外の外出を4月中旬にやっと解禁しました。近いうちに自宅へ一時帰宅する夢を叶えられそうです。季節外れですが、お雑煮を食べたいなぁ(笑)。
この3年間でQOLがかなり落ちてしまいました。頸椎後縦靭帯骨化症の影響も大きいと考えられますが、コロナ禍以前に週3回だったリハビリメニューが月1回に激減してしまい、肩可動域が狭まったことと、大胸筋の緊張が強くなったことが主な原因だと思われます。こういったものがリハビリによって維持されていたことを痛感しています。
まず、電動車いすの操縦が不自由になりました。随意運動可能な左肩の一部の筋力で微妙にジョイスティックを倒して操縦していますが、肩の内転力が強くなり、左方向への旋回や直進に苦労しています。次に、パソコンのトラックボールマウス操作を継続できる時間が短くなりました。せっかく始めたオンライン英会話を継続できなくなり昨年7月で休止しました。また、食事のときにあごを動かし続けるのが辛くなりました。
夜間は2時間おきに体位交換をおこなってもらっていますが、コロナ禍以前よりも肩と腕、背中の痛みが強くなり、うまく眠れずに、睡眠不足が続いています。
頸髄負傷後に回復期で入院した病院を退院したあとに入所したリハビリ施設で、3年間、涙を流しながら痛みに耐えてリハビリを頑張りました。全国の理学療法士名簿の連番で先頭の1桁に載っている先生が担当で、東京大学が研究・考案した施術方法だと言っていました。この先生のリハビリのおかげで、電動車いすの操縦や、パソコンをトラックボールマウス操作で使えるようになりました。
このあと施設を変えましたが、リハビリは同じ内容を継続し、QOLを一定レベルに保持できていました。しかし、今現在の体調は過去10年間で最悪の状態にあるように思えます。
……と、私の近況はこんなところで。
さて、「はがき通信」の発行が終わりを迎えることになり、長い期間にわたってご尽力されてきたスタッフの方々に慰労の気持ちを捧げます。私は2015年2月から5年間で編集担当、その間の2年間でネット版更新を兼務で勤めた経験がありますので、編集スタッフの仕事の重さは理解しているつもりです。
「はがき通信」からは頸髄損傷C5の四肢マヒの自分が生きていくうえで多くの勇気や知恵をいただきました。旅行やスポーツへのチャレンジ、イベント参加、病の克服などなど……四肢マヒご本人からのいろいろな投稿記事を驚きながら読ませていただく中で、私自身の心の持ち方が変わっていったのだと思います。
私は「はがき通信」編集担当だった期間中に、内視鏡検査で食道と大腸にポリープが見つかりました。食道は組織採取検査によってがんと診断され、大腸は3つのポリープがすべて5mmと組織採取検査で悪性か否かの判断ができない大きさなので緊急性がないと言われました。当時「はがき通信」は3人の編集担当が年6回発行を1人2回ずつ分担していました。「はがき通信」の自分の編集担当時期に支障が出ないように食道がんと大腸ポリープの摘出手術をスケジュール設定している自分がいました。術後の体力低下があった中、無理をして頑張っていました。それが当然のことというように自分の気力が強くなっていたのだと思います。
頸髄損傷の身になってから、外出するときの交通手段はすべてドアツードアで福祉タクシーを使っていました。2016年に電動車いすをペルモビール製の前輪駆動に更改したところ、サスペンションがよく効いて振動を吸収して体の揺れが少なくなり、屋外でのジョイスティック操作がしやすくなりました。そこで、地下鉄で街へ出てみようかと思い、翌年挑戦を始めました。最初はかなり苦労しましたが、次の年は施設~地下鉄駅の間の道路を試行錯誤で良いルートを選んで時間短縮、コロナ禍直前の2019年は天気が良ければ毎週1、2回ランチに出かけていました。毎回とても疲れましたが、気分転換や楽しさによる精神的な満足感が上回っていました。
「はがき通信」の131号「けい損者の排便管理と便秘」、164号「乳酸菌で有形軟便」を読んで、2017年6月に下剤を刺激性のアローゼンから非刺激性のマグミット錠に変更しました。これに加えて整腸剤ビオフェルミン錠剤の服用を続けており、摘便による排便の時間が短縮し、便失禁の根絶にも成功しています。これも「はがき通信」の情報があってこそと、とても感謝しています。
私の夢のひとつは、iPS細胞などの幹細胞による再生医療で慢性期頸髄損傷の治療を受ける人が増えて、その経過を「はがき通信」で報告し合って情報共有することでした。
札幌医科大学が2018年に「ステラミック注」の治験結果をもとに厚生労働省から承認を得て2021年に急性期脊髄損傷患者の治療を始めました。慶応義塾大学は10数年前から「5年後にiPS細胞移植治験を開始、慢性期脊髄損傷患者の治療が目標」とアナウンスしながらも、1年前にやっと急性期患者の治験を始めたばかりです。慢性期脊髄損傷の再生医療が実現するにはまだまだ長い年月がかかりそうです。おそらく自分に治療のチャンスが回ってくることはないでしょう。とても残念です。
それでは、今年も猛暑や豪雨災害が増えそうな予感がしますが、「はがき通信」のスタッフと投稿者、読者の皆様のご無事とご健康をお祈り申し上げます。
どうもありがとうございました! では (^0^)/。
[2023年4月20日投稿]
札幌市:戸羽 吉則
帯状疱疹(ほうしん)ワクチンを接種
年を取るにつれて、帯状疱疹になった人の痛さ、大変さを聞くようになりました。母もなりましたが、病院の先生がすぐに気づいて薬で完治しました。母はおでこにできました。
ヘルパーさんも頸損の友人・知り合いも、帯状疱疹ワクチンを打った人が何人かいたので話を聞くと、打った後、体調を崩す人が何人かいました。聞くと、生ワクチン(ビケン)1回7,000円くらいで、打った後に下痢が続いてだるさが1週間取れなかったり……ふだんの生活が送れなかったそうです。
私も知らなかったのですが、ワクチンには2種類あります。生ワクチンと不活化ワクチンです。どちらも50歳以上が対象で、自治体によっては補助があります。値段は、不活化ワクチン(シングリックス)は2回打つので22,000円×2です。
どちらのワクチンも病院によって値段が違うので選んで接種できますが、私が通院している病院はシングリックスしかおいてなく、まだ1回目ですが打ちました。次の日の夕方に38,5℃熱が出ましたがカロナールですぐ下がりました。
恐れていた下痢も1回もなく、通常の生活がおくれました。シングリックスワクチン2回のほうが効果が長く続くそうです。私的にはシングリックスで正解でした。下痢は困りますよね。
長年「はがき通信」を購読していましたが、1回も懇談会に参加できなかったことが残念です!
静岡県:ロッツォ
「はがき通信」ありがとうございました。
1990年、「はがき通信」1号に自己紹介を書かせていただきました。当時は群馬県の病院に入院中で本当に引きこもりの状態でした。その中でも「はがき通信」の発行の呼びかけが一筋の光でありました。「はがき通信」による高位頸髄損傷者の存在、情報は大きな励みとなりました。それからは「はがき通信」が届くのが楽しみで、唯一、宿泊できる外出が「はがき通信」懇親会でした。東京・横浜・浜松・京都・大阪・小倉・那覇など本当に楽しかった想い出です。
インターネットが当たり前にある時代、「はがき通信」は立派に役割を終えたと思います。たくさんの頸髄損傷者当事者、家族、介護者、関係者をつなぎ、情報交換できたと思います。その中で少しですが、呼びかけから今まで携われたことは私にとって大きな宝であり、現在の糧にもなっています。
●京都懇親会2007 奈良国立博物館
情報がありすぎる時代、自分が本当に必要な情報を得ることが逆に難しくなり、街がバリアフリーに、高位頸髄損傷者の環境が良くなる一方で地方格差や情報格差も大きくなった気がします。
全国頸損の仲間も高齢化し(もちろん私も)コロナ禍もあり交流も難しくなりました。少々さみしい終わり方にもなりますが「はがき通信」がなければ、私は今ここにいませんし多くの皆さんとも時間を共有できていません。
今まで「はがき通信」に携わった皆さん、投稿された方、特に編集・発行をされた方々には本当に感謝申し上げます。本当にお疲れ様でした。
東京都:T.F.
最終号に際して
「はがき通信」との出会いは、以前から知り合いだったIさんと瀬出井弘美さんからハワイ行きの懇親会(2004)にお誘いを受けたことからです。母と姉妹の4名で参加させていただき、全国から参加された多くの皆さんと知り合うことができてとても有意義で貴重な体験ができました。
その後も近くで開催される集まりには参加させていただき、東京・神奈川合同開催の「いざない」では、ヘルパー利用のことを始めとしたいろいろな情報交換ができ、また松井先生・Mさんご夫妻にお逢いできることがとても楽しみでした。
「はがき通信」は最終となりますが、このご縁を大切にずっと交流を続けていきたいと思います。最後に、長年「はがき通信」の編集に携わって下さった皆さまに感謝申し上げます。本当にお疲れさまでした、そしてありがとうございました!
川崎市:S.K.
「はがき通信」さんありがとう
私が受傷したのが、2016年12月(C5〜C6完全)。半年間の入院期間を経てその後、頸髄損傷に対して何の情報もなく不自由な身体で在宅生活に戻る。いや担当Ns(ナース)に「ここは生活の場ではないんです!」と戻される。
退院しても周囲には頸髄損傷者はだれ一人いない。タッチペンを装着して、やっと使うことができるようになったタブレットで、頸髄損傷のことや同じような経験をされている人がいないか検索した。
その中でやっと見つけた頸髄損傷仲間。その後、2か月に一度文面上ではあるが仲間に出逢える気がした。為になる情報もいただくことができた。
何十年の「はがき通信」の歴史からすれば、私なんて大したことないが、一つお伝えしておきたかった。編集者の方々や関係者の皆さんおつかれさまでした。楽しみは減ったけれど、少し淋しいけれどありがとうございました。
奈良県:M.K.
膀胱ロウになるまでの経緯
頸損になり30年以上になりました。受傷して長期になると身体にいろいろとガタが来ます。これまで排尿は、叩いて押してのタッピング手法と失禁多少で暮らしてましが、2015
年秋ごろに急に尿が出にくくなりました。自律神経過緊張反射が続く状態となり、発汗が酷く血圧も高い状態が続きました。
頸椎の麻痺が進んできてるかいろいろと心配になり、せき損センターを受診することにしました。整形外科での頸椎のMRI検査写真で空洞症等は見られず、以前の状態と変わりなく、頸椎は問題なしとのことで安心しました。
一方で泌尿器科のウログラムの検査では、膀胱に尿が 300ml 以上たまっても膀胱の反射が起きず、泌尿器のマヒが悪化してるとのことでした。尿が溜まると過緊張が続きしんどく、タッピングしても反射が起きず介護者が強く圧迫するとちょっとずつ尿が出る感じです。
排尿すれば過反射症状はおさまるんですが、これから生活続けるためには、誰かに定時に導尿をしてもらうか、膀胱ロウにするかの選択でした。膀胱ロウにするしかないと思ったんですが、今後の生活はどうなるか不安でした。
私が心配してた点ですが、入浴は可能か? 車いすに移乗可能か? です。オペする前に、「はがき通信」の仲間である膀胱ロウの先輩方にメールでアドバイスもらったところ、皆普通に生活できてるようで、ひと安心で膀胱ロウにしました。
オペ自体は大したことなく無事終了しました。しかしオペ後には血圧が高い状態が続き(上が200ぐらい)苦しみました。徐々にカテーテルの外径を広げていき、20fr(フレンチ)まで 大きくすると安定してきました。
【膀胱ロウつけた後の生活】
入浴は可能か?:蓄尿袋を湯船に沈めないように注意すれば今までどおり入浴できました。シャワーで多少濡れても問題なしでした。
車いすに移乗可能か?:蓄尿袋が膀胱より下になるよう注意すれば大丈夫とのことです。私は電動リクライニング車いすに乗ってるのですが、後ろに蓄尿袋を手提げバッグに入れて固定してます。背もたれを倒したときに蓄尿袋が床に着かないよう、S字フックやクリップで車いすに固定して工夫してます。
生活するためには定期的にバルーンカテーテルの交換が必要となりました。主治医によると経験則で、2週間に1回の頻度でカテーテル交換すれば、大きなトラブルが少ないとのことでした。病院によっては月1回でいい、というところもありますが、私は現在、月2回ほど、カテーテル交換と膀胱洗浄してもらってます。今のところ、それで大きなトラブルはないようです。
ちょっとしたトラブルとしては、カテーテルの閉塞で過緊張反射を起こしました。カテーテルが 屈曲して尿の流れが滞ってました。流れると改善します。またカテーテルに尿が滞留してくると、混濁して匂いが気になってきます。それからは気をつけてミルキング(カテーテルの中に詰まった尿を手で揉むなどして流す手技)をやっています。
血尿がひどいときもありました。膀胱内視鏡検査では膀胱壁に傷がありました。カテーテルで傷をつけたようです。トラブルはつきものですが、今のところこのくらいで生活しております。
「はがき通信」のネットは、いろんな情報が蓄積されてて大変ありがたかったです。今までの 運営作業大変だった思います。この場を借りてお礼を申し上げます。ありがとうございました。
匿名希望
終活を始めています
昨年より少しずつ終活を始めています。金融機関、クレジットカード、サブスクと不要なものを解約し、少しではありますが小綺麗になりました。今年はいよいよ遺言書です。地獄で高笑いできるよう付け入る隙のないものを作りませんと。
先日瀬出井さんとそんな話をしていると「入院時の保証人は?」と問われ、そんな大事なことすらすっかり抜け落ちていたことに気付かされました。「保証人」というと良い印象のない制度ですが、入院限定であれば友人たちが受けてくれるかな。相談してみようと思います。
さて、このたびのご決断、さぞやご無念であったことと察します。そして30年以上にわたりご尽力いただけましたこと、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。あと何年生きられるかは分かりませんが、せいぜい愉快に過ごしたく思います。「はがき通信」に関わられた全てのみなさんにも穏やかな日々が巡ってくることを願いながら御礼とさせていただきます。お世話になりました。そしてお疲れさまでした。
鈴木@横須賀
『臥龍窟日乗』-81- 寺村(左膳)道成日記
『グラバーの暗号』を上梓してから5年になる。読み返してみると、いろいろとアラが見えてくる。この辺はもっとコブシを効かせたほうがよかったんじゃないか、というようなアラなのだが、気になりだすと止まらない性分だ。というわけで、幕末から明治にかけての類書にあたっていたら、この時代の世情は想像を絶するおぞましさに満ちていたと分かった。
幕末から維新にかけての歴史は、たびたび大河ドラマにとりあげられるほど人気だが、実情はこれほど人心の乱れた時代もなかった。陰謀、腹の探り合い、甘言、二枚舌、裏切り、騙し討ち、野合、裏取引きなど、ありとあらゆる権謀術数が渦巻いていたはずだ。そりゃそうだろう、260年も続いた徳川幕府が崩れ、王政が復古する。一歩踏み誤ると明日は乞食か、はたまた大臣か。
明治維新の源流は、私はマルコポーロの「東方見聞録」にあると考えている。実際には彼は日本に到達してはいないのだが、日本を「黄金の国・ジパング」と記している。やがて大航海時代になると、欧米諸国は、日本には黄金があふれていると妄信した。アメリカをはじめ、捕鯨目的の船が日本近海をうろつきだした。彼らは水や食料を求め、日本に開国を迫る。
鎖国でつんぼ桟敷にあった日本は、大荒れだ。ペリーに脅された幕府は、アメリカと修好通商条約を結ぶ。これに孝明天皇が激怒した。尊王攘夷派の西南諸藩が後押しをし、時代は佐幕派と倒幕派の睨(にら)み合いになる。
尊王攘夷派と佐幕開国派の対立は日ごとに深まる。治安の乱れた京都街中は、幕府が派遣した新撰組が暴れまくり、庶民は夜歩きもできない状態になった。蛤御門の変、第一次、第二次の長州征討が進む一方では、倒幕派の野合が拡大する。
だが薩長土肥を中心とする倒幕派にも、温度差があった。幕府に恨み骨髄の長州と違って、関ケ原の戦いで土佐を与えられた土佐藩主・山内容堂は、ドライに倒幕には踏み切れない。だから、自由に動き回る龍馬がうるさくてしょうがない。公武合体派にこだわったり倒幕派に寝返ったりだ。
今回集めた史料は、古文書から手紙、いかがわしい暴露本に及ぶ。だから龍馬の実像が手に取るように分かる、龍馬はけっして偉人ではない。尻が軽く、人見知りなどしない、気さくでやんちゃな男だった。大物に会ってもビビることなく、大見得を切ったりする。つまり、どこの町にでもいる気のいいアンチャンなのである。これが龍馬の魅力だ。
今回入手した史料の中に、田中光顕という人物の『維新風雲回顧録』なる本があった。土佐の浪士だが、のちに宮内大臣も務めた。得体の知れない男である。この本に『寺村(左膳)道成日記』が紹介されている。寺村(左膳)は土佐藩の京都屋敷留守居役のような男で、こまめに日記を付けていた。京都四条の近江屋で龍馬が殺されたのは、慶応三年十一月十五日のことだが、この辺りの記述が怪しいと田中光顕が指摘している。
龍馬暗殺の下手人には諸説ある。京都の警察に該当する見回り組、幕府が雇った新撰組、いろは丸事件の紀州藩、土佐藩、薩摩藩などなど。どこが殺ってもおかしくない、と筆者は考えている。どの組織も、龍馬に対しハラに一物も二物も持っていた。頭を横斬りにされた龍馬も、(巻き添えを食った?)中岡慎太郎も、ぶすぶすとニ十数か所もとどめを刺されていた。現代の事件でもそうだが、こういう殺されかたは、よほどの恨みをかっていたといってよい。
いまだに見回り組説が根強いが、これは松平容保·会津藩主が務める京都守護職の下部組織。大政奉還が固まりつつあるこの時期、龍馬暗殺どころではなかったろう。
英国製の武器弾薬、軍艦を売りまくったのは龍馬だが、売上金がいっこうに入ってこない。当時、英国はヴィクトリア朝で、世界中に植民地を展開していた。黄金の国·ジパングは、なんとしても手に入れたかった。「我々のビジネスを邪魔するものは葬れ」、ただし首謀者が大英帝国であることはけっして明らかにしてはならない。下手人が誰であろうとよかったのである。
千葉県:出口 臥龍
【特集のまとめ】
特集!「パソコン入力の工夫」97(2006.01)
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc97a.htm
特集!「猛暑に向けての暑さ対策法」99(2006.05)
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc99a.htm
特集!「介護する側、される側」101(2006.09)
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc101a.htm
特集!「頸損と合併症」104(2007.03)108(2007.11)110(2008.03)114(2008.11)128(2011.04)
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc104a.htm
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc108a.htm
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc110a.htm
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc114a.htm
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc128a.html
特集!「尿路管理」105(2006.05)
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc105a.htm
特集!「私の常備薬」106(2006.07)
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc106a.htm
連載特集!「介護する側、される側」106(2006.07)110(2008.03)111(2008.05)122(2010.04)127(2011.02)137(2012.10)
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc106a.htm
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normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc122a.htm
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc127a.html
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc137a.html
特集!「車いすの工夫あれこれ」109(2008.01)111(2008.05)113(2008.09)
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc109a.htm
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc111a.htm
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc113a.htm
「人工肛門(ストマ)関連」 109(2008.01) 118(2009.08) 143(2013.10) 157(2016.02)161(2016.10)164(2017.04)166(2017.08)175(2019.02)
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc109a.htm
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc118a.htm
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc143a.html
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc157a.html
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc161a.html
「はがき通信」No.164 - 1 (normanet.ne.jp)
「はがき通信」No.166 - 1 (normanet.ne.jp)
はがき通信 No.175 - 1 (normanet.ne.jp)
連載 「ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)の樹立に成功—再生医療前進へ」1~5 109(2008.01)~115(2009.02)
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc109a.htm
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc110a.htm
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc111a.htm
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc112a.htm
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc115a.htm
特集!「私の入浴」110(2008.03)
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc110a.htm
特集!「どうしています?連絡方法」112(2008.07)
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc112a.htm
特集!「四肢マヒ者のスポーツ」116(2009.04)
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc116a.htm
連載 「どたばた、パパ」1~6 117(2009.06)~143(2013.10)
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc117a.htm
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc119a.htm
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc125a.htm
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc130a.html
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc137a.html
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc143a.html
特集!「起立性低血圧」125(2010.10)
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc125a.htm
特集!「四肢マヒ者のデジカメ撮影法」126(2010.12)
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc126a.htm
特集!「食事の工夫あれこれ」128(2011.04)
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特集!「四肢マヒ者のスポーツⅡ」130(2011.08)131(2011.10)132(2011.12)133(2012.02)
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normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc131a.html
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc132a.html
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc133a.html
特集!「けい損者の便秘について」131(2011.10)
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc131a.html
特集!「移乗(トランスファー)をどうしていますか?〈旅先編〉」134(2012.04)179(2019.10)
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc134a.html
はがき通信 No.179 - 1 (normanet.ne.jp)
特集!「ネットで社会とつながろう」136(2012.08)
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc136a.html
特集!「移乗(トランスファー)をどうしていますか?〈自宅編〉」139(2013.02)
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc139a.html
特集!「車イスで空を飛ぶ術」140(2013.04)141(2013.06)
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc140a.html
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc141a.html
特集!「どうしています夏の体調管理法」141(2013.06)135(2012.06)
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc141a.html
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc135a.html
特集!「人工呼吸器を使用しての生活」144(2013.12)124(2010.08)
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc144a.html
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc124a.htm
特集!「四肢マヒ者の創作活動」146(2014.04)
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc146a.html
特集!「移乗(トランスファー)をどうしていますか?〈自宅編〉」151(2015.02)
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc151a.html
連載 「頸損と介助犬」1~6 151(2015.02)~159(2016.06)
normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc151a.html
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連載 「『夜と霧(新版)』書評」1~6 152(2015.04)~159(2016.06)
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特集!「どうしています冬の体調管理法」152(2015.04)133(2012.02)
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「睾丸の痛みについて」153(2015.06)154(2015.08)
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特集!「失敗から学んだこと」 158(2016.04)
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特集!「電動車椅子-その細かな進化」160(2016.08)
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特集!「四肢マヒ者の排便」164(2017.04)
「はがき通信」No.164 - 1 (normanet.ne.jp)
特集!「身体的苦痛について」166(2017.08)167(2017.10)168(2017.12)
「はがき通信」No.166 - 1 (normanet.ne.jp)
「はがき通信」No.167 - 1 (normanet.ne.jp)
「はがき通信」No.168 - 1 (normanet.ne.jp)
特集!「褥瘡予防、私はこうしている」170(2018.04)192(2021.12)
「はがき通信」No.170 - 1 (normanet.ne.jp)
はがき通信 No.192 - 1 (normanet.ne.jp)
特集!「四肢マヒ者の創作活動(その2)」176(2019.04)
はがき通信 No.176 - 1 (normanet.ne.jp)
連載 「小さなおじさん」1~9 181(2020.02)~197(2022.10)
はがき通信 No.181 - 1 (normanet.ne.jp)
はがき通信 No.183 - 1 (normanet.ne.jp)
はがき通信 No.185 - 1 (normanet.ne.jp)
はがき通信 No.187 - 1 (normanet.ne.jp)
はがき通信 No.189 - 1 (normanet.ne.jp)
はがき通信 No.192 - 1 (normanet.ne.jp)
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はがき通信 No.195 - 1 (normanet.ne.jp)
はがき通信 No.197 - 1 (normanet.ne.jp)
特集!「介護保険が組み込まれての生活」182(2020.04)
はがき通信 No.182 - 1 (normanet.ne.jp)
「新型コロナ関連」184(2020.08)
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特集!「情報機器(パソコン・スマホ)操作の工夫」188(2021.04)126(2010.12)173(2018.10)
はがき通信 No.188 - 1 (normanet.ne.jp)
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「はがき通信」No.173 - 1 (normanet.ne.jp)