No.199 2022/3/25
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 リハビリテーション工学カンファレンス『抱えない介護』に参加して 

(60代) 

 8月20日21日、第36回日本リハビリテーション工学カンファレンスin中国・四国大会が、オンラインで開催されました。20日、オープンカンファレンス:当事者座談会①『抱えない介護』にパネリストとして参加し、谷口さんの進行で、移乗機器に詳しい先生方とお話をさせていただきました。

 《パネリスト》
 ・M.K.(広島頸損ネットワーク)
 ・古田恒輔氏(神戸学院大学、作業療法士、移乗機器SIG代表)
 ・青木久美子氏(作業療法士、移乗機器SIG事務局)
 ・金城知子氏(社会福祉法人おもと会 本部、作業療法士、移乗機器SIG役員)

 《実行委員》
 ・谷口公友氏(広島国際大学所属)

 《概要》
 内容としては、頸髄損傷者(C5レベル)の移乗にかかわる身体状況、住宅環境、介護者についてのモデルケース紹介。マンションという制限のある住宅環境で、どのような工夫をしているのか、困っている点など「モデルケース」を通じて、専門家の方々と移乗機器について話し合う。「他の人はリフトをどのように使っているのだろうか?」などの意見交換の場にしたいということでした。

 《身体状況》

 (写真①身体状況)

 頸髄損傷C5受傷年数28年、と簡単な自己紹介後、身体状況の説明。両肩へ足の腱を移行、左手は肘の固定術を受け手首が少しグリップするようになり、可動域が増えました。手動式車いすに座ると、座位が保てます。
 ヘルパー・訪問看護・訪問リハビリ等の1週間のスケジュール表をもとに、介助内容、訪問状況の紹介。これからの改善点、要望等も話させていただきました。

 《住宅環境》

 (写真②住宅環境)

  谷口公友氏
 6年前、夫の退職を機に広島市へ帰って来ました。転勤で離れていた自宅は築30年のマンション。在宅生活を始めた時の1戸建てとは間取り等の環境は大きく変わり、トイレを使用するということもありリフォームは難航。在宅生活が始まったとき夫は勤務で、平日は7:00~20:00はヘルパーと訪問看護が頼りでした。そのため、当初からリフト使用。1戸建てではリフトは天井走行を使用し、ベッド移乗、トイレ、風呂と1つのリフトで賄えていました。しかしマンションにはそれは不可で、ベッド、トイレ、風呂へそれぞれリフトを付けるとなると、費用はかかるし狭いスペースには限りがあります。リフォーム業者さんと考えながら、リフト問題でトイレ・風呂の配置に悩みリフォームは長引きました。
 そんななか福祉機器業者さんのアイデアで、モリト―「つるべー」2関節アームリフトを提案していただいて、トイレ・風呂を1つのリフトで賄えるとわかりすんなり悩み解決。リフトはベッドへ1台、トイレ・風呂へ1台と2台で収まりました。和室の廊下側の壁を撤去し、可動式の4枚引き戸に変え、畳をフローリングにしてベッドを置き、洗面所・トイレ・風呂へ行きやすくしました。車いす・介助者スペースを考え、風呂の隣の洋室を半分使って洗面所、トイレ、風呂を一体化。それでもトイレでの介助者スペースが狭く、廊下側の壁を撤去し引き戸にして、トイレ使用時は引き戸を開け廊下を活用することにしました。

 ◎古田先生より、①2関節アームリフトの発想と、絶妙なポジションへの設置をされた福祉機器業者さんのこと、②廊下側を引き戸にして廊下を活用のこと、良いアイデアだと言っていただきました。

 (写真③トイレ移乗)

 トイレと浴槽に使える位置に、福祉機器業者さんが配置してくださいました。トイレ移乗時は、車いすでこの位置に。車いすからトイレ移乗、トイレから車いす移乗時は、前と後ろから2人体制で支え、良いポジションへ誘導。便座前に置いてあるイスは、血圧が下がるのを防ぐために使用。


 (写真④風呂・浴槽移乗)

 ベッドからスリングシート(吊り具)でシャワーチェアーへ移乗し、風呂へ行きます。シャワーチェアーの前と後ろに介助者が立ち、体を洗ったりシャンプーをしてもらいます。その後、浴槽へ浸かります。浴槽から上がりシャワーチェアーへ移り、ベッドへ帰ります。

 ◎濡れたシャワーチェアーで帰ると床が濡れるのではと聞かれましたが、浴槽に浸かっている時シャワーチェアーを拭き、浴槽から上がったときも簡単にシートごと体を拭いているので、ほとんど濡れることはありません。入浴時、体が浮いて不安定になるのを防ぐには、浴槽は狭い方がいい。わが家の浴槽も浴槽内の段が仕切りになって、深い所だけを使うと浴槽が狭くなり、入浴時体が浮くのを防ぎいいですねと言われました。たまたま段が付いた仕様でしたが、段を足の裏で支えられ、「狭い浴槽」使いになり助かりました。

 《悩み事》
 リフト移乗で使用するとき、短時間で1人の介助者でも簡単に取り付けられるため、入浴時以外は明電パートナーツーピース2本ベルトを使用。肩の調子が悪い時や、いい位置にベルトをセットしないと痛みがあり。

 ◎2本ベルトは、基本頸損者には使用不可。ただ、今は販売させていないけれど『ネバ社 NEBAスリング(2本ベルトタイプ)』は負担が少なく良いそうです。リフトのハンガーにはサイズがあり、体形や吊り具に合ったサイズのものを選ぶ。2本ベルトには34~38cmが適している、つるべーは50cmとスリングシート仕様のようです。50cmに2本ベルトを使っているので、肩が広がり痛みの原因になるのではと言われました。
 古田先生のアドバイスに従い車いすからベッド移乗の時、車いすのブレーキを解除すると無理のないポジションに体が誘導され、脇、肩の痛みがなくなりました。

 《その他アドバイス》
◎つるべーの吊り下げハンガーのポールを、ベッドの頭側に付けていますが、正しい位置は足側でした。でもそうなるといろんな面でじゃまになると伝えると、ベッドの位置を変える、向きを変えるとか、図面をもとにいろいろ提案をいただきました。

◎トイレ使用の際、お尻部分をくりぬいたシャワーチェアーだと移乗せず、そのままトイレにセッティングできると提案がありました。今までのスタイルを変える自信がないと言ってしまいましたが、福祉展に行くチャンスがあれば見てみようと思います。
このような場所での話は初めてで、不慣れなオンラインでとても緊張しましたが、いろんな意見やアドバイス、情報が聞けてとてもいい機会をいただきました。このようなイベントがあれば、また参加させていただきたいと思います。お声をかけてくださった谷口さん、ありがとうございました。

広島県:M.K.

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