No.193 2022/3/24
Page 1 . 2 . 3 . 4

前ページへ戻る

 『臥龍窟日乗』-74- オデッサ・ファイル 

 本に馴染みはじめたのは小学校高学年だった。まだ本屋も少なかったころで、親が買い与えてくれた。『今昔物語』や『ギリシャ神話』をボロボロになるまで読んだ。本格的に取り組んだのは中学に入ってからで、ドイツの青春小説、ロシア小説へと進んだ。ちょっとひねた高校生になったころには、耽溺(たんでき)なフランス小説の世界にどっぷりのめりこんだものだ。

 27歳のときから海外出張が多くなった。当時、欧州便はアンカレッジ経由で片道15時間くらい、ロサンゼルスだと13時間くらい掛かった。これが苦痛でならない。ふだん読まないミステリーの文庫本を、10冊くらい持ち込んだ。以来30年、名作といわれる作品はほとんど読破した。クロフツの『樽』やフォーサイスの『オデッサ・ファイル』などが印象に残っている。
 


 1月17日、AFPが驚くべきニュースを配信した。1944年8月に、『アンネの日記』で知られるアンネ・フランク一家の隠れ家を、誰がナチスに密告したのか、との内容だ。犯人はユダヤ人公証人アーノルト・ファンデンベルフと断定された。ファンデンベルフは、自分の家族を守る条件で、同胞であるフランク家を売った。密告者が誰かというよりも、犯人探しがまだ続いている事実に衝撃を受けた。ホロコーストは、まだ生きている。

 アンネの家には3回行った。アムステルダムの家は、4~5階建てのマンションが縦割りになっていて、最上階の狭い屋根裏に、一家がひっそりと隠れ住んでいた。二度目に行ったときには、隣の棟も買い取って資料館にしてあった。

 ユダヤ人団体は、なんと78年も昔の事件を、いまだに糾弾している。その執念と持続力に驚く。第二次世界大戦後、旧ナチスの残党が秘密組織「オデッサ」を結成、南米などに雲隠れした。それを諜報機関モサドが検挙したというニュースが、時おり伝えられてはいた。

 AFPのニュースに接したとき、ユダヤ人団体の「ナチス狩り」はまだ続いているんだ、というある種の感慨に見舞われた。ナチス残党といっても、生きていれば、もうとっくに百歳は超えているはず。100年以上も持ちこたえる憎しみについて、改めて考えさせられた。

 『オデッサ・ファイル』を思い起こした。ネタバレになりかねないので、さわりだけ紹介しておく。

 ルポライターのペーター・ミラーは旧ナチスの幹部組織オデッサの存在を知る。そのなかに強制収容所長、ロシュマンの名前があった。ロシュマンはミラーの父を謀殺(ぼうさつ)した犯人でもあった。しかもドイツ国内でのうのうと生きている。、ロシュマン追及の旅が始まる。

 おそらくは実在するであろう秘密結社が、つぎつぎに登場する。このあたりはノンフィクションさながらの迫力だ。オデッサの殺し屋マッケンゼンに命を狙われるが、実際、作者のフォーサイスも強迫にさらされたというから、事実なのかもしれない。


 いま日本では、佐渡金山を世界遺産に入れてもらおうとの動きが活発になっている。「何がなんでも押し込んでやる」と発言する政治家もいる。だが佐渡金山をはじめ、石見銀山、生野銀山、近いところでは三池炭鉱など、〝恥部〟を抱えた遺産も少なくない。あまりごり押しすると『負の世界遺産』にされてしまうのではなかろうか。

千葉県:出口 臥龍

 スウェーデンのSpinalistips 

(60代、男性、受傷後20年、C5/6)

 スウェーデンのSpinalis財団が、脊髄損傷者の便利グッズと暮らしのアイデアのデータベースとして公開しているSpinalistips。そこには、多くの記事がカテゴリー毎と受傷レベル毎に整理されている。英語を読めなくても写真があれば、同じ悩みを持つ者には内容を想像することができる。
 この度、Spinalistipsの記事を見返したので、気になったもののいくつかについて内容と私の感想を紹介する。

 改造カバーオール・ズボン
  (Ylva、C5-6)
 両サイドがジッパーで開く重ね履き用ズボンを購入し、尻の部分を切り取る(写真1)。
 裁縫に必要なバイアステープの記述はあるが、腰背部の切断箇所に関する記述はない。
 カバーオールが重ね履きのことであれば、車いす上では腹部と脚部をカバーするだけで十分である。座っていて着用するのが簡単なのは助かる。


【写真1】
 https://spinalistips.se/en/tip-modified-coverall-trousers-1443

 特注のフィンガースリーブ
(Kenneth、C2-Th1)
 痙縮により内側に曲がる人差指を伸ばして、保持するための矯正材料製のフィンガースリーブ。フィンガースリーブには、その脱着を容易にするための取っ手が付けてある(写真2)。
 私が興味を引かれたのは、キー部分が凹んだキーボードである。キーの上に手を置けるくらいなら、ミスタッチも少ないのかもしれない。


 【写真2】 
 https://spinalistips.se/en/tip-custom-made-finger-sleeves-1422

 Spinalistipsは“非商業目的で出典を明らかにすることを条件に、そのヒントとアイデアを拡散するためにデータベースの写真を含むコンテンツを使用してもよい”としている。ここでは、Spinalistipsと写真を含む各記事のURLを明記した。
 日本せきずい基金の会報50号から会報52号の3号には、暮らしのグッズ&アイデア:C2-4損傷、C5-6損傷(1)、C5-6損傷(2)が紹介してある。また、C2-4編のグッズ&アイデア150件は、基金ホームページに掲載してある。

福岡県:DRY

Spinalistips
  https://spinalistips.se/en

日本せきずい基金会報50号
  http://www.jscf.org/pdf/k50.pdf

日本せきずい基金会報51号
  http://www.jscf.org/pdf/k51.pdf

日本せきずい基金会報52号
  http://www.jscf.org/pdf/k52.pdf

日本せきずい基金ホームページ:C2-4編のグッズ&アイデア
  http://www.jscf.org/attach/FfE691C+1f.pdf?PHPSESSID=52879f11d515ff1bba07de0aada7d8d0



【編集後記】

 昨年末に感染者数が大幅に減少し、少し明るい希望が見えてきたのかなと思っていた新型コロナウイルス……しかし、新年が明けたとたんに、唖然とするような感染者数の増加!! この不安と閉塞感は、いったいいつまで続くのか……? 接種券はきたものの、ワクチン不足からか3回目の接種ができないという事態。(この編集後記を書いているのは2月4日。父は運良く1月のうちに接種ができた)もういい加減うんざりする。
 個人的には昨年末に『一大イベント』を無事クリアし、乗り切ることが最優先となり、年賀状は作成できず。お年賀をいただいた方々には、たいへん失礼いたしました。申し訳ございません。
 


 次号の編集担当は、藤田忠さんです。

編集担当:瀬出井 弘美


………………《編集担当》………………
◇ 瀬出井 弘美 (神奈川県)
◇ 藤田 忠   (福岡県) 
………………《広報担当》………………
◇ 土田 浩敬  (兵庫県) 

post_card_comm_14520@yahoo.co.jp

発行:九州障害者定期刊行物協会
〒812-0044 福岡市博多区千代4-29-24 三原第3ビル3F
TEL:092-753-9722 FAX:092-753-9723
E-mail:qsk@plum.ocn.ne.jp

このページの先頭へもどる


HOME ホームページ MAIL ご意見ご要望