No.185 2020/10/25
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 コロナ禍での経験 

 皆様、コロナ禍の中、いかがお過ごしでしょうか?
 思い起こせば、2月初旬から通勤時におかしな光景が見られました。多くの中国人観光客がサンタが使うような大袋に、商品を入れて背負っている姿です。会社の近くには、大型商業施設があります。
 今になって思うと袋の中身は、その後の2か月間みんなが探しまくった「マスク」だったのです。彼らは、母国で起きているコロナ感染を認識してたんでしょう……。
 日がたつにつれて行き交う観光客が減り、挙句の果てにはアーケードがガラガラになり、もはや閑古鳥が鳴く状態になりました。
 いつしか、人とすれ違うたびに、マスクをしているかどうかを瞬間に見分けてしまうようになりました。いわゆる、マスク警察と呼ばれる一部の方が地下鉄の中で、ノーマスクの方に対して大声で強要している姿も見ました。

 さて、このような中、腎臓や肺への影響を受けやすく、感染したら重篤になりやすいわれわれ頸損者は、いかに過ごすべきなのでしょうか? 通常のマスク着用や手洗いは当然として、自分なりに実践したことは以下の通りです。

●出勤時のマスク姿


 ①夏に限らず起きているときは毎時水分補給をする(総計1日2L)。
 ②毎日体温を測り、無自覚症状感染に気付けるようにする。
 ③食欲がない場合は、甘いものでもいいから食べたいものを食べる(また、苦手な肉も食べるように心がけている)。
 ④ぐっすり眠る(眠れない場合は眠剤を使っても)。
 ⑤人の集まるところは極力避ける。しかし、あまり神経質にならず、動けるときは思い切り漕いだり、テレワーク明けの出勤時は一駅前で降りて、長い距離車いすを漕ぐ。
 ⑥勤務の3分の1がテレワークになり、移動がなくなり、感染リスクが減るものの適度なストレッチを欠かさない。




●自粛期間のトレーニング

 以上が私なりに心掛けている点です。
 さらに書面をお借りしてお話させていただくと、「コロナ危機」は悪いことばかりでなく、体の不自由な方に就労などの「社会参加の機会」を与えてくれたように感じます。
 それは、前述の⑥のようにテレワークが義務付けられるようになったときには、庶務の仕事がテレワークでできんの?と疑問を感じていました。だが慣れてくると、ズームやチームス等の通信手段を駆使してできることが増え、移動なしで仕事ができます。クレームや事故処理、支払起票、リモート会議など可能性は無限大。
 「ガイアの夜明け」では、ロボット喫茶が紹介されていましたね。寝たきりの方が遠隔操作で、都内にあるロボット喫茶で働くロボットを操作して、きちんとお客さんと会話をしているのです。お客さんの人と接触したくないが、情には触れたい!!という期待に答えた新しい業態です。

 このように大切なことは、苦境があったときに嫌な思い出ととらえるか、新しいことをする機会と思うかで、その後の人生が変わってくると感じました。
 最後になりますが、福岡では第二波が来ており、お取引様にも感染者が出ております。しかし、ここまで防御してなったとしても、それは運命だと思って出勤しています。だからこそ、今日できることを一つ一つコツコツとこなすことが大切であると思います。
 皆様、どうぞご自愛ください。ご精読いただきありがとうございました。

◆福岡市:E.U.

 ◆北海道の南端から(2) 

63歳、ロシア春夏脳炎罹患後27年

 皆様、全国的に季節が秋らしくなってきたことと存じます。さまざまな天災に遭われていらっしゃらないことを願っております。そして、不運にも被災された方には心からお見舞い申し上げます。
 さて、「はがき通信」前号(184号)で、私たちの会「With You〔前向きな障害者と仲間達〕」が6月に発行した会報90号で、それぞれの立場から見た新型コロナを取り上げて、With You内外から寄せられた声の一部をお届けいたしました(With You会報90号発行が6月でしたので内容にタイムラグがございますがお許し下さい)。今回も全体では長くなりましたが、一人々々の投稿と思って読んでいただければ幸いに存じます。
          *
 ◇O氏:北海道/公務員/頸損歴17年

 これまではIT企業に勤めていましたが、この4月から役所勤めになりました。どうしても押印が必要な部署で、テレワークは無理とわかりました。
 感染予防のため手洗いうがいを徹底してますが、自走式車椅子の場合はハンドリムも消毒せねばなりません。でも、自力ではちゃんとできないので、職場のトイレで手を洗った後に車椅子をすぐ操作すると「これダメなんだろなあ」といつも思います(デンマーク留学での料理の授業では、手洗いのときにハンドリムもアルコール消毒することが徹底されていました)。
 あと、タイヤ自体もすごく怪しい気がします。僕的には、欧米とアジア圏の感染規模の差は「家の中で土足かどうか」が一因なのでないかと考えております。感染者がゲホゲホする→飛沫が床に散乱→ほかの人が靴で踏む→家に持ち帰る→靴を脱がない欧米は、生活エリアにウイルスが……。という感じです。
 この考えからいくと、車椅子で仕事(or買い物)に行く→車椅子のタイヤにウイルス付着→家に帰って、家の中にウイルスが……。になってしまい、車椅子ユーザーはリスクが高い恐れがあります。←ぼく個人の憶測です。
 そこで、これまでは、1台の車椅子で屋内・屋外を過ごしていたのを家用と屋外用を分けることにいたしました!←普通そうでしょ?とツッコまれるかもしれません(笑)。ただ、車椅子から車椅子の移乗が困難なひとは、けっこう1台で兼用してるのではないかなあと思います。みなさんどうしてます?
 僕は現在、車椅子グローブも家用・仕事用・屋外用の3つを使用し、車の運転席からの乗り降りの際にもう1台の車椅子にチェンジして、家の中にウイルスを持ち込まないように生活様式を変えました。これはコロナに限らず、衛生的に良いことですね。障害があるからしょうがないと、妥協していた部分をだいぶ見直せたと思います。
          *
 ◇竹田 努氏:長崎県五島市/市職員/ダニ媒介性感染症研究者

 こちら五島市では、昨年度4月10日にダニ媒介性の感染症である重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の患者さんが出てしまい、赴任直後の着任手続きに追い回されていたとはいえ、忸怩(じくじ)たる思いでおりました。患者さんは回復したということではありましたが、今年度は決してそのようなことがないようにと、3月から老人会などを中心に勉強会を予定しておりました。
 しかし、covid-19(コロナ)の広がりのため、長崎県によりイベント自粛を求められ、市役所から中止を勧告されたことから、一人一人に語りかける啓発ができずにいました。けれども、あきらめることなく、たまたま別件で取材を受けた市のケーブルテレビに交渉して、マダニ感染症の啓発番組を撮影していただくところまで漕ぎ着けました。それでも、放映を渋る市の広報課に「コロナはまだ五島には来とらんばってん、マダニ感染症はすでにあるけん。人が死んでからでは遅かよ」とようやく習得しつつある五島弁で訴えて、放映を実施し市民の生活を守るため頑張っています。
 一つの感染症のために、他の喫緊(きっきん)に存在する危機を回避できなくなってしまっている状況は問題があります。

 ◇I氏:東京都杉並区/薬膳師

 感染した人や家族を罪人のように思ったり、扱ったりする人がいるのは本当に悲しい。誰だってその立場になる可能性はあるのに!
もちろん、盛り場で遊び歩いて感染したのは同情できないけれど、それは「感染したこと」を責めるんじゃなくて、「盛り場で遊んでいたこと」を責めるべきだと思う。
 私だって感染は怖いし、特に91歳の母や、ステロイド治療中の姪にうつしたくないと心底思うから、隣人や友人が感染したら、会わないようにしたり家の消毒をより熱心にすると思う。でも、それは「嫌う」のとは違う。会わないけれど、一生懸命できるサポートを探したいと思う。心では、一生懸命回復を祈りたい。
 「アベノマスク」には腹立たしいし、10万円もいつになるやら……で腹立たしいことは多いけれど、こんなときほど、身の回りの嬉しいことや楽しいことを見つけて生きていきたいな~と思います。
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 ◇J氏:東京都調布市/ミュージシャン

 ただただ、地道に泥臭く自分の身を守るのみです。それが、周囲の人を守ることにもなると思うので。今、自分で実践できるのはこの程度。アフターコロナなんて、そんな先のこと言われても……。
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 ※私の独り言

 料理も裁縫もろくにできず、ただ動物好きなだけが取り柄の私が佐藤牧場に押しかけたのに、快く迎えてくれた義母(以下、母と記します)は、酪農の魅力と生命の輝きを教えてくれました。
 母は、幼い頃から兄弟姉妹、家の内外にいた牛を始めとして数々の動物たち、野菜や花をずっとずっと世話してきたそうです。私がここに来てからも、母の愛情あふれる生き方は変わらず、共に酪農に専念しながら孫たちも育ててくれました。そして、27年前に倒れた嫁の私を笑顔で介助し、見守り続けてくれました。
 今年の1月初めから特養に入っていた母の元へ夫は毎日、通いました。でも、コロナ禍で3月からは面会もかなわなくなり、皆どれほど寂しかったことでしょうか。
 そして、母は、3月末にくも膜下出血で救急搬送され、それ以降、意識のないまま3ヵ月が経ちました。ちょうど母が慈しみ続けたバラが満開になった頃、庭のバラの花に包まれて母は旅立ちました。
 いろいろな思いの中、この夏を過ごしました。あんなに穏やかでひたむきに自然を愛し、私たち家族の要であった母の最期を、孤独へと追いやったコロナを怨んでいます。そして、自分は在宅生活を送らせてもらったのに、母を自宅で看取れなかったことが返す返すも悔しいのです。
 秋の夜、夫と二人きり、母の愛猫に甘えられながらも家の中はがらんとしています。
  *
 貴重な「はがき通信」の場をお借りして、おかげさまで前号から合わせて8名の思いをお伝えできました。まことにありがとうございました。
 皆様、これからもどうぞお大事にお過ごしくださいますよう。

北海道:A.S.



【編集後記】

 小池東京都知事が「特別な夏」と、テレビで報道陣に向かって言っていた。本当だったら、オリンピック・パラリンピックの開催で日本中が盛り上がり、歓喜する「特別な夏」だったはずだ。
 まだ2ヶ月余りあるが、今年2020年という1年はいったい何だったのだろう? “ウイズコロナウイルス生活”……横須賀から市外に出たのは3回のみ。頸損仲間に会うこともままならない。今年は訃報も多く、心が砕けそうになる。
 そして、気候も、体温調節がうまくできない頸損には過酷だった。毎日を、何だか「生き延びている」ような気さえする。高齢の両親とも今のところ、何とか大きく体調をくずすことなく過ごせたことは本当に幸いなことだ。“平凡な日常”の有り難さをかみしめる。
 これからまた冬に向かい、インフルエンザ等にも気をつけなければならない。まぁ、あまり神経質に、シンドく感じ過ぎても身が持たない。それでなくても、「心のバランス」を保つのが難しいのに……。ようやく、フラワーアレジメント教室とフラダンスのレッスンが再開され、心の平穏が少しだけ戻ってきた。
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 ホームページ(ネット版)編集担当の後任者が、なかなか見つからずに再度、誌面にて自薦・他薦を問わず広く募集させていただきました。まずはお気軽にお問い合わせください。どうかよろしくお願いいたします。
 また、手元にWebページ作成ソフトのホームページ・ビルダー21(Win版)通常版の未使用品があります。サイト編集の経験があるが、編集ソフトがないという方等々、後任者はご活用くださればと思います。
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 次号の編集担当は、藤田忠さんです。

編集担当:瀬出井 弘美


………………《編集担当》………………
◇ 瀬出井 弘美 (神奈川県)
◇ 藤田 忠   (福岡県) 
………………《広報担当》………………
◇ 土田 浩敬  (兵庫県) 

post_card_comm_14520@yahoo.co.jp

発行:九州障害者定期刊行物協会
〒812-0054 福岡市東区馬出2-2-18
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