No.179 2019/10/25
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 痛みと痙性に悩まされて 

C5.C6完全 ♀ 56歳

 こんにちは。初めて投稿いたします。
 2年半前、交通事故により(対向車線からのはみ出し)頸髄損傷という、人生最大の苦痛を見ず知らずの他人様から受けてしまいました。年齢が更年期で筋肉量の少ない女性ということも重なってか、自身の努力不足か思うようにリハビリも進まず、首から下はほとんど動かせません。
 心の傷はもとより、身体の痛み、痙性と毎日戦い、痛み止め(リリカ)を処方していただいたり、痙性(けいせい)緩和剤(ダントリウム)を内服したり……。ボトックス注射も1年半ほど試みましたが、効果は部分的に少し緩む程度でした。
 本当にこんな症状の方は私の周囲には、誰一人といなく頸損の症状は100人いたら、100通りだと聞かせていただいたことはありますが、私は同じ受傷レベルでも、100番目だろうなと勝手に思い、一人深海の深い深い底へ沈んだ気分になりました。

 そんなときに偶然「はがき通信」をネットで知り、同じような悩みを抱かれている方、悔しい思いをされておられる方、我慢強く生きていらっしゃる方、乗り越えられた方、いろいろな思いをされていらっしゃる方が実際にいることを知り、たいへん参考になりました。
 特にITB療法(バクロフェン髄注療法)は私の興味深いところで、今後受ける予定をしています。手術を受けられた方、その後の経過、痙性の具合、トラブル、薬液の調整量、通院頻度など教えていただけたらありがたいのですが、よろしくお願いします。
 正直、受傷時の手術は、無我夢中で考える余地もありませんでした。今は時間の経過とともに、身体の変化を受容しなければいけない時期、取捨選択の時期かと思っています。
 あと何年周囲に迷惑をかけながら生かされるかわかりませんが、苦悶、悶絶の日々は少しでも脱したいものです。

P.S.
制作スタッフの皆様、お疲れ様です。アナログ派の私には詳しいことは口出しできませんが、「はがき通信」長期的継続は困難ということで、少しショックです。1号でも長く続けていただけることを切に願います。

奈良県:M.K.

 ※M.K.さんのご投稿は、ネット版メールアドレス経由でいただきました。

 その後、入院され、ITB療法(バクロフェン髄注療法)のオペを受けられました。その際、同じオペをされた171号に掲載のKさんから情報を瀬出井がお聞きし、入院前ギリギリにお伝えすることができました。

「バクロフェン持続髄注療法:ITB療法(intrathecal baclofen therapy)」

 彼女とのメールのやり取りの中で、心に深く留まった言葉があります。
 「頸損当事者でしか解ってもらえないことを伝えられて正直、ほっとしました」
 「自分でできることは無くなりました。すべて誰かの助けが必要です。ときどき、私は厄介者だなあと思うことがありますが、自分の体験を伝えることで、存在価値を見出せることができるならば自尊心のカケラを拾うこともできる気がします」

(編集担当:瀬出井弘美記)

 ITB療法の手術体験談 

 入院中も「はがき通信」を閲覧し、身体が苦痛になったとき「一人ではないんだ」と、何度も何度も読み返しておりました。
 さっそくITB療法の感想ですが、あくまでも個人的な感情も入っていますがお伝えします。

 全身麻酔で、手術は2時間半(施術そのものは1時間少々)マスクを当てられてから1分ほどすると意識がなくなり、深い眠りについた。吸入麻酔の臭いが残り覚めてからも気分が悪かったが、痰の絡みは思っていたほどなく数時間かすれた声になっていた。
 バクロフェン薬は、ポンプの埋め込みとともに体内に流された。
 50μg(マイクログラム)からスタートし、痙縮が軽減しないため翌日には60μgに増量した。(1日20%しか増量できない)3日目10%増量し66μg、就寝時ベッドに休むと脚から体幹にかけて突っ張り感が強く、夜間だけ73μgになるように増量してもらった。その後、増減を繰り返し62μgで2週間後の退院となった。
 5日目でシャワー浴、傷口は抜糸なしで退院前日、ガーゼを除去していただいた。背中の5センチほどの傷口は、車椅子の背もたれが褥瘡をつくるのではないかと2週間ほどそのままにしておくということで、ガーゼを当てたまま退院した。
 脚のクローヌス(貧乏ゆすりのような震え)は消失することを期待していたが、2日目に出現した。これは完全になくならないとのこと。
 車椅子に乗って、膝と膝が内側に力が入ってクッションを押しつぶしていたが、膝の力が抜け隙間ができるようになると同時に、左上腕三頭筋の不随意な運動はなくなった。
 腕全体の突っ張り感は変化なく、食べ物を口へ持っていくのに以前と比べ労力が必要となった。指先の曲がりが強くなり、術後のリハビリは苦しいけれども早く再開するべきだと思う(私は、手術翌日に車椅子に乗せてもらいました)。
 全身に効果の出る薬液が作用していることを常に頭に入れ、自分なりの目標設定をしていかないと、薬液の調整は難しいと思う。私は、内服薬の減量と介護者の負担軽減、可動域の拡大、痛みによるストレスの軽減を目標にした。
 最も気になった痛みの状況ですが、痙性に伴う痛みは伸展、屈曲が軽減した分(5割方)なくなった。しかし、体位変換による痛みは依然続いている。
 頸髄損傷自体の痛みの軽減は少し期待していたが、虚しいものとなった。しかし、痙性の点では効果はあったので、個人個人で何を優先するかだと思う。
 ITB療法は、日本で10年以上取り扱われている割に、頸髄損傷に対して理解し、なおかつこの療法に熟知している医療関係者が少ないのではないのかと懸念した。
 排便管理、留置カテーテルによる感染、詰まりの対策と共に自己管理の一要因に追加されたが、外出先でのトラブル時、この療法に対処できる病院が増えることを願う。
 自己の体調管理にばかり気を取られる生活は、したくありませんからね。
 以上、術後2週間余りの個人的な感想と現状でした。何かのお役に立てれば幸いです。

奈良県:M.K.

 病気自慢!? いやいや健康こそ一番の財産!!  

52歳

 皆様、いかがおすごしでしょうか? この原稿をお読みになっているのは、ちょうど過ごしやすい秋の頃でしょう!!
 2019年は、ケガや病気の連続で苦しみました。
 2月中旬から喉の痛みで声が出なくなり、治るまでに1か月間ほどかかりました。その間仕事は休みませんでしたが、帰ってからは、栄養を十分に摂り、できるだけ休息をとったため治癒しましたが。足のかかとに褥瘡ができかけました。
 ようやく2つとも治ったかと思っていたら、今度は風呂に入って気づいたのですが、お腹の周りが赤くはれ上がり、皮膚病か帯状疱疹(たいじょうほうしん)かまったくわからず、脊損センターに駆け込みました。受信結果は、思惑とは違い、腹部全域にわたる内出血でした。
 血液検査では、内出血のせいで超貧血状態でした。(基準の最低値14に対して8でした)原因は、買い物の際に重いものをいれたかごを腹の上に乗せたせいかと考えています。
 治療方法は鉄分を摂取することしかできなかったため、だるさに耐えながら、毎日を過ごしました。(ドクター曰く、人は血液検査結果の「高」ばかり気にするが、実は「低」部分が悪さをすることがあるそうです)こうして、2か月間の鉄剤摂取で最低基準値まで戻りました。また、たんぱく質も不足していたので、プロテインを摂取しています。
 よっしゃ!! これで安心だ!!と思っていたら、左の腰骨の先端が3センチくらいとがって、でっぱっていることに気づきました。押しても、痛みはありませんが、妙にコリコリしています。気になって、褥瘡でお世話になった病院に行くと、即MRIを取ってくださり、結果は骨の周りの腱や筋肉が骨化した良性腫瘍とのことでしたので、放っています(骨肉腫かもしれないと勝手に思っていたので、ほっとしたのは言うまでもありません)。寝る際、同じ姿勢で寝ていることが、原因のようです。
 ということで、「ようやくすべてが終わった!!」で締めたかったのですが、またまた問題が発生!! トイレが硬くて出せないのです。過緊張で頭はガンガン、通常80しかない最高血圧が200まで上がる始末……困り果てて、これまでは飲んでいなかった下剤(リンゼス)を処方していただき、また食生活も意識して根菜類をいただくようにして、少しずつ改善傾向にあります。
 頸椎損傷をして32年目になりましたが、これだけ病気が集中したのは初めてのことでした。これは、老化やこれまでの無理の蓄積のせいであると思います。年相応に生きなさい!!という、警鐘かもしれませんね。
 とはいえ、本来のじっとできない性分は変わることはないから、これ以上続けたらやばい!!というときには、必ずいったん休むことにしています。また、可能な限り、人に気持ちよく動いてもらい、体力を温存することも学びながら過ごす毎日です。
 「何かありました? お手伝いしましょうか?」がいえるのに、「助けてください!! 困っています」というのは、なぜにこんなに難しいことなのでしょうね……。そんな矛盾を抱えながらも、なんとか過ごしております。
 くどいようですが、もう一度言います。『健康に勝る財産はありません』


●「9月7日結婚記念日(23周年)の食事会にて」

 それぞれのペースで、それぞれに合った健康維持をしながら、楽しく生きてゆきましょう!!

福岡市:E.U.

 本の紹介『やっぱり高血圧はほっとくのが一番』 

 電車内で本を読んでいる人は今や絶滅危惧種とか、実際、乗客の大半はスマホ、皆一様にスマホ操作に没頭している。でも私には本は必須、今でも週1回は本探しに出かける。お気に入りは東京駅丸の内の丸善、先日、その新書コーナで『やっぱり高血圧はほっとくのが一番』(松本光生著、講談社+α新書)に眼がとまった。

 著者は内科医、高血圧を心配する人々を50年間診てきて、心配ない、降圧剤は不要といくら説明しても納得せず、薬を欲しがる「血圧心配症」の人があとを断たない。その原因を探りつつ、納得のいく説明を試みて執筆したのが本書、活字も大きく、電車内でも読みやすそう、購入し、さっそく読み始めた。
 高血圧心配症の受診者は大半が治療不要、心配症の原因は4つ、①正しい医学知識がない、②不調=悪いこと=薬で取り除くべきとの思い込み、③老化現象を治療すべき病だとの思い込み、④不調を放置することが不安でたまらない、そのため不必要な受診をしてしまう。
 「人間は強いのです。人はちょっとやそっとのことでは死にません。自然治癒力があるから受診しなくても大丈夫」と著者は強調する。自然治癒力には3つの働きがある。1つは、身体を一定に保とうとする「恒常性維持機能」、具体的には震えによって運動エネルギーを生み出し、体温が下がらないようにする、体温を一定に保つための鳥肌や発汗、2つは、傷ついたものを元に戻そうとする「自己再生機能」、3つは、異物を排除して自分を守る「自己防衛機能」である。

 自然治癒力とは、人の体内にある有能な主治医であると著者は強調する。体内への異物の侵入に対して自然治癒力は発熱、咳、鼻水、痰、くしゃみ、下痢、嘔吐(おうと)などの反応で防御する。これらの症状を薬で阻止しようとするのは、自然治癒力を妨害することと警告する。
 さて、これからが本題、高血圧は放っておいてもなぜ大丈夫か。「血圧心配症」の人には2つのタイプがある。1つは、医師から「高血圧症」と言われた慢性の高血圧状態の人、2つは、血圧の急上昇が心配な人、著者はいずれのタイプも心配なし、大半が降圧剤は不要、むしろ害になると、断言する。たとえば、有害な微生物が体内に入ったら、それを体外に排出するために嘔吐する。血圧も同じ、血圧が高くなるには原因がある。その原因から命を守るために最適の値にコントロールしたのが、今の血圧値である。
 たとえば階段を上っているときは血圧を高くし、怒っているときは血圧は上がり、リラックスしているときには血圧は下がる。その人の状態に合わせて最適な血圧を身体は選ぶ。血圧は一定ではなく、誰でも高くなったり、低くなったりする。身体は、その場面にふさわしい血圧を自動調節してくれている。血圧は変動するもの、立ち上がるということは、心臓よりも高いところにある脳に血液を送らねばならないということ、年をとると血管は狭くなり、弾力がなくなる。若いころと違って、上の血圧が120や130の力では脳にまで血液を送れなくなってしまう。圧力をあげて心臓から上へと血液を送り出さないと、脳はたちまち血液不足に陥ってしまう。だから年齢とともに人間の血圧は上がる。
 生きるためにわざわざ身体が血圧を上げてくれているのに、なぜ薬を飲んで下げるのか。血圧を下げたら、脳の血流が低下して脳に栄養や酸素が行きわたらなくなってしまう。
 血圧は自然治癒力のおかげで、今の状況に応じて最適な値になるようにつねに自動的にコントロールされている。健康を保つために最適な血圧の目安として、経験的に「年齢+90」という数値が使われており、著者もこの数値を目安にしてよいという。しかし大半の医師は「年齢+90」は昔の基準と退け、今は日本高血圧学会の「高血圧症治療ガイドライン」に従う。しかも2019年版ガイドラインでは、成人の降圧目標は130/80mmHg未満に引き下げられた。
 「年齢+90」が最適という著者は、降圧剤で血圧を引き下げることがいかに危険か、水道のホースを例にして説明する。ホースが古くなって中にゴミが詰まっていたら、普通の水圧では遠くまで水は飛ばせない。水道の蛇口を一杯にあけて水の勢いをよくし、遠くに飛ばす。水道の蛇口を閉じて水圧を弱くしたら、水は遠くに飛ばないし、ホースの中でゴミが詰まってしまう。降圧剤を飲むということは、人為的に血液の流れを弱くすること、血液の塊が血管内で詰まらせてしまうのだと強調、さらに著者によれば脳梗塞の増加の背景には降圧剤の関与がある。クスリは終わりから読み、リスクと考えよと薦める。
 確かに私の周辺でも高齢者の脳梗塞は目立つ。相次いで脳梗塞になった夫妻もいる。奥さんは、降圧剤を10年も服用してきたのにと嘆いていた。じつは私も潜在的高血圧心配症の一人、現役のころ、定期健診でも血圧は問題なかったのに、加齢とともに血圧上昇、4、5年前白内障手術の前日には、上の血圧が180台、いくら術前の不安からとはいえ、あまりの高さにショックだった。その後、自宅で測定しても、160前後、これでは受診すれば降圧剤処方の対象患者にされてしまうと、以後、血圧測定を中止、なるべく高血圧のことは考えないようにしてきた。

 本書は活字が大きく、文章も読みやすく、電車内で読むにはちょうど良いと、著者には大変失礼だが、軽い気持ちで購入した。読了して著者に感謝の気持ちが湧いてきた。臨床医にとって権威ある高血圧症治療ガイドラインに公然と反論し、高血圧の不安から解放してくれる著書である。

千葉県:松井 和子

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