No.179 2019/10/25
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 経肛門的洗腸療法について 

C5、頸損歴13年、55歳

 ちょうど2年前の「はがき通信」167号に「刺激性下剤からの脱却」というタイトルで投稿しましたが、下剤を排便日前日のアローゼン1gから毎日酸化マグネシウム錠(マグミット錠)1gに変更し、ビオフェルミン錠剤の服用を追加して、それ以降私の排便は順調にできています。看護師の摘便も楽になったようで、浣腸から排便終了までの時間は30分ぐらいで、以前の半分程度になりました。また、便失禁もほとんどなくなりました。オリーブオイルは私には効果がないようでしたので、2ヶ月ぐらいで飲むのやめました。
 さて、「はがき通信」では話題にあがってきませんでしたが、経肛門的洗腸療法について、ご存知ない方もいらっしゃると思いましたので書かせていただきます。

 日本せきずい基金ニュース№76(2018-4)のトップ記事で、「外科治療に踏み切る前に」と紹介されていました。「ぺリスティーン・アナルイリゲーションシステム」という専用医療機器を使用します。この機器等に関する費用が、2018年4月から保険適用になりました。
 この保険適用には下の2つの条件があります。

 ①3ヶ月以上の保存的治療によっても十分な改善を得られない、脊髄障害を原因とする排便障害を有する患者。
 ②専用医療機器「ぺリスティ一ン・アナルイリゲ一ションシステム」の導入を指導できる医師や看護師がいる医療機関に限って提供する。

【経肛門的洗腸療法の実施医療機関一覧】

《栃木県》
 自治医科大学附属病院 消化器外科
《千葉県》
 医療法人鉄蕉会亀田総合病院 消化器外科
《神奈川県》
 神奈川リハビリテーション病院 外科
《愛知県》
 藤田医科大学病院 消化器外科
《兵庫県》
 社会福祉法人兵庫県社会福祉事業団兵庫県立リハビリテーション中央病院 泌尿器科
《香川県》
 香川県立白鳥病院 外科
《福岡県》
 独立行政法人労働者健康安全機構総合せき損センター 泌尿器科

 災害時に備える方策にはならないと思いますが、外科的治療を検討されていて、実施医療機関への通院が可能な方は、受診して試されてはいかがでしょうか。
 詳細は、日本せきずい基金ニュース№76やコロプラスト社ウェブサイトでご確認ください。
 また、すでに試された方がいらっしゃるようでしたら、「はがき通信」あてにレポートを送っていただけますと幸いです。

編集担当:戸羽 吉則

「刺激性下剤からの脱却」

「日本せきずい基金ニュース№76」

 宿泊時のベッドへの移乗について 

 最近、「持ち上げない介護」と言われているのを聞いたことがある方も多いと思います。私は、地域で暮らしはじめた20年前から、リフトを使ってベッドへの移乗をしていました。あのころ、在宅でもリフトを使っている方は、それほど多くなかったように思います。特に頸髄損傷者は、ベッドだけでなく入浴やトイレ、自動車への乗り移りなど多くの場面で、介護者への負担、褥瘡の心配などリスクの大きい時間でもあります。
 最近では当たり前のようにリフトを設置し、浴室内や自動車に取り付ける機器や、旅行用などのリフト製品も出てきました。
 「はがき通信」懇親会ではあらかじめ移乗時間を決めて、メンバーの介護者が数人で各部屋を回り移乗することが毎回の恒例でした。「はがき通信懇親会では移乗が安心なので参加する」と、外泊経験の浅い参加者の方も多いと聞いています。
 毎日必ずリフトを使用し、電動車いすへの移乗をしているといつものお尻の位置にピタリと座れるのですが、外出先でどうしても人力ですと上手く座れない場合も多く、特に外出時は電動車いすに乗っている時間も長いので、宿泊を伴う外出時こそ、リフトでしっかり良いポジションで座りたいと以前から思っていました。
 ここ数年、頸髄損傷者の友人を介して業者さんを紹介していただいたり、友人からリフトをお借りする場面も多くなりました。部屋の広さの制限もありますのでどこでもとは言えませんが、据え置き型、床走行型をお借りして使っています。

①据え置き型リフト

●こんなに大がかりな物もある。このときは友人に借りた。エアマットは宅配便で送り、いつも持参している。

 吊り具は持参し、レンタル代はかかるものの安心して使えることは、宿泊を伴う外出に大切な支援機器のひとつになっています。
 8月に札幌に行ったときは、大手のレンタル業者を手配し宿泊するホテルに配送してもらい、チェックアウト時に回収してもらう形でお借りしました。時間を気にせず移乗できることも、「あと数時間、夜を楽しめる」のもリフトがあるからこそです。
 「〇〇に行きたい……宿泊=移乗をどうする?」がまず一番のネックであり、宿泊を遠ざける要因でもあり、ホテルの従業員に手伝ってもらう場合や、介護者を数名同行することもありました。
 一部のホテルや公共施設にリフト付部屋の設備もありますが、今の時代バリアフリールームにはリフトが欲しい。そう願う、高位の頸髄損傷者は多いと思います。
 それに合わせ、全国の大都市や観光地ではリフトを宿泊者向けにレンタルするシステムも、大手レンタル業者や福祉機器業者に構築してもらえると、今まで以上に宿泊も気軽にできるはずです。

②床走行型リフト

●友人から教えてもらった現地の福祉機器業者から借りた床走行式トランスファーシステム。ただ、福祉ベッドでないとベッド下~床があいていないから注意。

 ぜひ、移動のバリアフリーも大切ですが移乗のバリアフリーも必要で、電動車いすを使い公共交通で移動しリフトで移乗、エアーマットで快適に睡眠、観光や交流を大いに楽しむ旅が普通になることを切望します。

東京都:T.F.



【編集後記】

 今年は、梅雨寒からの猛暑が本当に身体に堪えた夏でした。気候・気温の変動も激しい。ここ何年か自分自身の加齢もあり、夏が来るたびに「無事に乗り切れるだろうか?」と……恐怖すら覚える暑さ。
 9月には台風15号が千葉県を中心に、甚大な被害をもたらしました。今まで、比較的災害の少なかった横須賀(三浦半島)にも、自主避難勧告が発令されました。わが家も夜中にいきなり停電。幸い10時間程度で復旧しましたが、まだ残暑厳しいこの時期に停電が長引くということは、頸損者にとっては、命に関わる問題にもなります。
 今までに経験したこともないような強風も、真夜中の懐中電灯だけの暗闇の中、とても恐ろしかったです。本当に自然災害は、いつ、どこで起きるかわからないことを改めて肝に銘じました。

 そして台風も去り、秋のお彼岸も近づき、風に少し秋の気配を感じるようになった9月18日……広島のKさんから、悲しい悲しいお知らせのお電話が……。「はがき通信」の古くからの購読者であり、私にとりましても20年来のお付き合い、友人のY.Oさんが亡くなられというにわかに信じがたい訃報。
 「はがき通信」にもご投稿いただきました(最後のご投稿になってしまいました……)が、2度目の心臓弁膜症の手術後の後遺症がやはり、大きく影響したのでしょうか? Kさんが「Oさんの体力が落ちて心配……」と、おっしゃっていたのを思い出しました。今年の横浜懇親会にIさんがOさんもお誘いしたのですが、「痰が絡む」等の理由で、今回は不参加というお返事だったそうです。昨年、広島懇親会で、お会いしたのが最後となってしまいました。
 いつも快く原稿依頼を引き受けてくださり、懇親会も私の次(瀬出井は全回制覇)に多くご参加くださり、長年「はがき通信」を支えていただきました。心からの感謝と御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。
 いまだに実感が湧かず、信じられませんが、Oさんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。

 次号の編集担当は、藤田忠さんです。

編集担当:瀬出井 弘美


………………《編集担当》………………
◇ 瀬出井 弘美 (神奈川県)
◇ 藤田 忠   (福岡県) 
◇ 戸羽 吉則  (北海道) 
………………《広報担当》………………
◇ 土田 浩敬  (兵庫県) 

post_card_comm_14520@yahoo.co.jp

発行:九州障害者定期刊行物協会
〒812-0054 福岡市東区馬出2-2-18
TEL:092-753-9722 FAX:092-753-9723
E-mail:qsk@plum.ocn.ne.jp

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