狸の想い出ポロポロ
今日は2017年12月24日、36年前、私は病院での2度目のクリスマスを迎えていた。 「M君おはよう」化粧気のない私服の女性が部屋に入って来て、私の首に手を回すと「クルシマセルー」と言って軽く両手で包み込んだ…… はは(笑) 夜勤明けの看護師さんだった。 いつも明るく挨拶をしてくれる3つ年上の彼女は「婚約者にも見せたことのない私のすっぴんをM君にだけ見せたんだからねー」。「素顔も綺麗じゃないか!」と言うと「ありがとう」と返して、手を振りながら帰って行った。 数日後、寿退社で彼女は病院を去った。数多い失恋回数にまた1つ加わった。 退院後の生活をケースワーカーに相談した。職業訓練所や作業所をあたってくれたが、重度の高位頸髄損傷者を受け入れてくれる施設はなかったし、障害者療養所は満床で10年以上新規入所は無理だった。 結局、自動車の自賠責保険の保険金で家を改築して自宅での生活へ入って35年が経ちました。 病院の生活は窮屈だったが、安心できた。 いざ家での生活を考えるとなると、不安で、親もどうやって介護していけばよいのか?と迷ったのでしょう。病院で使用していた洗髪台、洋式トイレ、ベッド上の天井には周りカーテン、風呂のバスタブは特大、床頭台、起立台まで寝室に……。建築技師が病院まで出向いたらしく、両親は病院と同じ環境を整えなければと思ったのでしょう。 私の生活スタイルは、30年前の週1回の通所の入浴サービスから始まり、現在は週3回のデイサービスと徐々に快適な空間が整ってきました。 9時にリフトバスが迎えにきて、健康チェック、お風呂、昼食、リハビリ、カラオケ、15時のおやつ、またカラオケ ((+_+)) 唄うのは苦手ですが肺の訓練を兼ねて。帰宅は17時前後になります。 訪問看護師とホームヘルパーさんの手助けで生活できています。ヘルパーさんが朝・昼・夕に1時間30分、食事の用意、着替え、掃除、排尿など、すべての家事や介助をおこなってくださっています。19時30分から1時間は就寝介助で歯磨き、清拭、水分補給。 20時30分から翌朝5時まで、寝つきの悪い日は長い夜に……。 早朝5時からヘルパーさんが毎朝、排尿、水分補給、湯沸し、ゴミ出しと30分間ですが大変助かっています。 話が飛びますが、デイサービスの職員さんから「Mさんは他の利用者さんみたいに胸やお尻を触らない紳士だねぇって!」言われますが……。はは(笑) 手の知覚神経があれば触っていましたね! 完全に。 痰(たん)が絡んでその後の処置に悩んでいるかたからの投稿がありましたが、私も喉の手術をしたときに痰が絡んで……。今は嚥下(えんげ)機能の低下で、よく食べ物が気管に入って咳き込みます。 誤嚥による肺炎が急増しているそうです。肺活量の少ない私たちは肺炎になると危険ですので注意しましょう。口中を清潔に保つことで誤嚥性肺炎の予防になります。 嚥下機能を鍛える方法を紹介します。食前に空唾を3回呑み込みます。また、食事以外のときに、口を大きく開いて、舌を前に突き出し上下左右に動かして喉の奥の筋肉を鍛えることで呑み込む力がつきます。 痰を切る方法として腹式呼吸を習いました。息を鼻から吸って口から細く長く吐き出しているとゴロゴロと痰が上に上がってきます。何回か繰り返すと大きな咳と共に痰が切れます。ティッシュに取り出す際、口の中にティッシュを3〜4枚くわえ込むと中で水分を吸収し、そのティシュを取り出してもらうとスムーズに処置ができます。 “想い出は決して消えることはない”……。しかし、苦しく切ない想い出が残り、楽しかったときの記憶が薄れて行きます。「はがき通信」に同じ内容の原稿を書いてはイケないと、過去の原稿を読み直してみると、まるでタイムカプセルです。「はがき通信」のネット版は楽しい日記のようなものですね。 目に留まった投稿のひとつとして、11号に交通事故対策センターの介護料の記述がありました。 皆さんはもうご存じでしょうが、介護料や助成金などは申請しないと支給されません。介護料は1日2000円で、私の場合は1ヶ月に6万円が事故対策センターから振り込まれています。 障害基礎年金以外では、特別障害者手当が年に4回、80430円。申請を忘れてしまうとさかのぼっては支給されないので、該当するかたは手続きをお早めに! 独立行政法人 自動車事故対策機構 ・被害者援護部 介護料グループ 〒130−0013 東京都墨田区綿糸3−2−1 アルカイースト19階 http://www.nasva.go.jp/ 行動を起こすと何かそこに生まれます。知らないでいたほうが楽だったり、知ってしまったためにあっちこっち壁にぶつかって苦労も増えますが、一歩踏み出して、2018年は戌年! 駆け回りましょう! ではお身体ご自愛下さい。 See you! 福岡県:K.M. 『臥龍窟日乗』-51- 歳(よわい)70、人生引き算
2017年に70歳になった。ものの考え方、捉え方がずいぶんと変わってきた。69歳も70歳も変わらないじゃねぇかと思っていたが、やはり70歳という言葉はずしりと重い。 60代までは、まだまだいけるという〈足し算人生〉だったが、70歳を自覚すると「人生80年として、残り10年か」と、及び腰になってしまう。あれもやっておかねば、これもやっておかねば、と急に身辺がせわしなくなった。 ローンも片付いたし、墓も建てた。孫の顔を見るだけが楽しみの日々だが、なにやら落ち着かない。根がビンボー症だから、がむしゃらに働いてきたが、そのために観たい映画やドラマもスルーしてきた。 『北の国から』という長寿ドラマがあった。北海道の富良野を一躍、有数の観光地にしてしまった。なにが人々の心を捉えたのかと気になっていた。レンタル落ちのDVDを買い集め、このひと月で集中的に観た。 どこの家庭にでもある揉(も)め事、災い、凶事を積み上げていく手法だ。だれもが身につまされる思い出に、感情移入される構成だが、雄大な風景と音楽が救いになる。 最終回のテロップに懐かしい名前をみつけた。唐十郎。紅テントを担いで全国を渡り歩く、状況劇場の座主。演劇の既成概念をぶち破るパワーとふてぶてしい面構え。『佐川君への手紙』で芥川賞もとった。われらが青春時代のヒーローだ。 そんな唐十郎さんが、どんな風体で出てくるのか。わくわくする。最初は誰だか分からなかった。眼差しの優しい好々爺(こうこうや)が登場する。トド撃ちの名人でトドと呼ばれる。倅(せがれ)をふくむ4、5人の半グレをあっという間にぶちのめす。 客人をもてなすため、流氷の海にトド撃ちに出た。だが戻ってこない。羅臼(らうす)の住民たちは漁火(いさりび)を焚(た)き、巡視船も出るが帰ってこない。流氷に潰されたと人々が諦めたころ、トドは朝日を背に浴び、流氷を踏みしめ、水平線にゴリラのような姿を現す。 生還を祝って、夜は酒場でドンチャン騒ぎ。トドは唄え踊れの独り舞台だ。主役の名脇役、田中邦衛さんでさえたじたじ。完全に食われてしまっている。眼差しの優しい好々爺が、紅テントの怪人に豹変(ひょうへん)してしまった。われらが唐十郎、見事というほかない。 ドラマは1981年から2002年にまたがる。最後に「21年間のご支援を感謝します」と文字が出る。21年といえば、ひとつの世代にあたる。 10歳の子役も30歳をこえる。さまざまな人生が実人生と重なり交錯する。最終回で中畑木材の地井武男さんが号泣する場面があるが、撮影の前年、彼は夫人をガンで失っている。あの涙は演技ではなかったのではないか。 永いながいドラマだったが、飽きることはなかった。自分の人生と重ねながら観ていたからだろう。おぞましい大人の世界を垣間見ながら育った小学生時代。順風満帆だった中学生時代。 一転、人間のエゴ、悪意、中傷、妨害に曝(さら)された高校時代。大学を中退してから跳び込んだジャーナリズムの世界。魑魅魍魎(ちみもうりょう)のうごめく闇だ。出版業を興してからの躍進。歳を重ねるごとに業績は伸びた。海外を飛び回る日々が続く。そのさなか、急転直下の頸損事故。 山あり谷あり。まさに波乱万丈の人生だ。受傷のとき担当医に、宗教に帰依するよう勧められた。ご厚意だったが、あの世も霊魂も信じたことがない。死ねばカルシュームになり大地に戻るだけだと思っている。来世があると思うから、人は死を畏(おそ)れる。 ならばなぜ墓なんぞ建てたんだと突っ込まれそうだが、宗教は死んだ人のためにあるのではない。生きている衆生のためにこそある。生意気なことを書くようだが、宗教をあなどるつもりはない。宗教を否定する度胸もない。 文頭に人生引き算と書いた。余生10年。これから毎年、あと9年、あと8年とカウントダウンが続く。死ぬのが怖いのではない。何年書けるかが心配なのだ。 波乱万丈の人生の終わりに、だれもが経験できない重症を負った。そのとき母が言った。「天が与えてくれた試練だと思いなさい」と。病床にある母はまもなく95になる。後に続く人々のために、書き続けなければならない。 千葉県:出口 臥龍 ★★★ ひとくちインフォメーション ★★★
◆ がん検診に大革命!血液一滴で13種のがんを早期発見 13種類のがんをごく早期に、しかもごく簡単な方法で発見する—— そんな夢のようながん検査法を確立しようという国家プロジェクトが、いま佳境を迎えています。その検査の方法とは、血液中を流れている「がん細胞からのメッセージ」をとらえて、体に潜んでいるがんの種類を特定しようというもの。一体どんな仕組みなのか、そしていつ私たちが受けられるのか。研究の最前線からその可能性をお伝えします。 ◎「夢のがん早期診断」が実現間近に この研究は2014年、国立がん研究センターを中心に、9つの大学と6つの企業が参加してスタートしました。まだ試験段階ではありますが、血液検査をするだけで、胃がんや乳がんといった患者数の多いがんはもちろん、希少ながんも含めた13種類ものがん(大腸がん、胃がん、肺がん、乳がん、前立腺がん、食道がん、肝臓がん、胆道がん、すい臓がん、卵巣がん、ぼうこうがん、肉腫、神経膠腫)を、ごく初期の段階で診断できるという、夢のような検査手法が実現しようとしています。最新報告によれば、がんを正しく判定できる精度は95%以上という結果が出ています。3年後の実用化を目指し、現在急ピッチで研究が進められています。 現在のがん検診は、それぞれのがんによって異なる種類の検査を受ける必要があります。患者にとって負担が大きいうえ、中には痛みや精神的な苦痛を伴う検査もあるのが現状です。いまや日本人の2人に1人ががんと診断される状況ですが、検診の受診率は全体の3割にとどまっており、先進国の中でも低い割合です。検査の負担を軽くすることは、がんの早期発見・早期治療を実現する上で、とても大事な課題なのです。 この研究を率いる国立がん研究センター研究所の落谷孝広主任分野長は、「国民の多くの方がこの新しい検査を受けられる時代がくれば、がんを早く見つけ出し、早く治療することができるようになります。それによって、がんによる死亡者数を国民全体で減らすことが究極の目標です」と熱く語ります。 この画期的ながん検査で調べるのは、血液の中を流れる「マイクロRNA」と呼ばれる物質(核酸)です。マイクロRNAは、遺伝子の働きを調節し、細胞の働きを変えてしまう作用があることがわかっています。私たちの血液の中には、およそ500種類ものマイクロRNAが流れていると言われていますが、検査で注目するのは、「がん細胞が放出するマイクロRNA」です。最新研究によって、がんのタイプにより、放出するマイクロRNAの量や種類が異なることがわかっています。国立がん研究センター研究所では、企業と共同でごく微量のマイクロRNAを正確に測定できる装置を開発。それによって、体の中にどんな種類のがん細胞が潜んでいるかを早期に突き止めることが可能になりつつあるのです。 ◎ 世界が注目する、がん細胞が出す「エクソソーム」 がん細胞が出す「マイクロRNA」。実は、ある特別な「カプセル」に封じ込められた形でがん細胞から放出され、血液に乗って全身をめぐっていると考えられています。その「カプセル」とは、「エクソソーム」と呼ばれるものです。 エクソソームは、直径わずか1万分の1ミリほどの、まさに小さなカプセル(小胞)で、がん細胞だけでなく、ほとんどすべての細胞が分泌していることが分かっています。かつては、細胞が不要になった物質をこのエクソソームに封入し、外に排出していると考えられてきました。しかし10年前、エクソソームの中に「マイクロRNA」が含まれていることをスウェーデンの研究者が発見。さらにその後、落谷さんの研究チームが、なんと細胞同士がこのエクソソームの中のマイクロRNAを使ってお互いに“情報交換”をしているという驚くべき事実を突き止め、世界に衝撃を与えました。これまでさまざまな細胞が、「ホルモン」や「サイトカイン」などと呼ばれるミクロの物質を出して、情報交換を行っていることは知られていました。その「細胞間コミュニケーション」の新たな道具として、「エクソソーム」の存在が明らかにされたのです。 がん細胞は、何のためにエクソソームを出しているのか。落谷さんたちの研究によって、実はがん細胞が、このエクソソームを"武器"として使って、転移や再発を引き起こしていることが突き止められました。たとえば、乳がん。乳がんは早期に治療すれば比較的完治しやすいがんとされていますが、長い期間を経て脳に転移する場合があることが知られています。しかし本来、脳の血管には「血液脳関門」と呼ばれるバリアのような構造があり、がん細胞はそのバリアを突破して脳内に侵入することは困難です。脳の血管は、そのほかの全身の血管と異なり、血管の壁を覆う細胞同士がかたく結びつき、脳へ入ることのできる物質を厳しく制限・調節しているためです。このバリアを、がん細胞はどうやって突破しているのか。これまで謎とされてきた、その詳しいメカニズムを、落谷さんたちは解き明かしました。 まず、乳がんの細胞から放出されたエクソソームは、血液に乗って脳の血管までたどり着きます。すると、「血液脳関門」を構成する内皮細胞という細胞は、なぜかこのエクソソームをがん細胞から来たものとは知らずに受け取り、カプセルを開封してしまいます。すると、エクソソームの中に潜んでいた「マイクロRNA」が内皮細胞の中へ侵入。遺伝子の働きを変えることで、血液脳関門のバリアを緩めさせてしまうのです。その後、血液の流れによって運ばれてきた乳がんの細胞は、このバリアが緩んだ部分から脳の内部に入り込みます。こうして、脳への転移を起こすのです。 落谷さんは語ります。「がん細胞というのは非常に悪賢いです。がん細胞が出すエクソソームとは、相手がうっかり開けてしまうと、とんでもないものが感染して異常な事態を引き起こす、まさにインターネット上の“ウイルスメール”のようなものなのです。」 国立がん研究センター研究所では、こうしたがんのメカニズムを研究することで、今回の13種類のがん診断技術のほかにも、新たな治療法を生み出そうとしています。また、海外でもエクソソームを利用したがん治療の臨床試験が始まるなど、盛んに研究が進められています。がんの克服を目指した最先端の研究から、目が離せません。 (情報提供:2017年9月30日 NHK健康チャンネル) 【編集後記】
新年あけましておめでとうございます。2ヶ月遅れのご挨拶になりますが、皆様それぞれにいろいろなかたちでご希望どおりの年になりますよう、お祈り申し上げます。 前号の巻頭で書かせていただきましたが、昨年秋に受診した検査で見つかりました私の食道がんは、12月中旬に受けた内視鏡による剥離手術(ESD)によって、すべて摘出することができました。とりあえず、ひと安心しております。 頸損受傷前は5年ごとに胃と大腸の内視鏡検査を受けていましたが、受傷後は11年間検査をしていなかったので、今回検査を受けることにしました。早期がんの段階で見つけることができて幸運でした。 がんの発症率が2人に1人といわれる近年ですので、長期間検査をされていないかたは、受診を計画されることをお勧めします。 次号の編集担当は、 さんです。 編集担当:戸羽 吉則
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