はがき通信ホームページへもどる No.144 2013.12.25.
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 特集 広島懇親会を終えて&私の広島旅行記 

36歳、頸損レベルC6B2、受傷歴5年


 今回、私は初めて「はがき通信」へ参加しました。地元でナンパされた頸損の先輩に誘われ軽い気持ちで参加したのですが、会場に着いて驚いたことがありました。それは、電動車イスの方がたくさんいらっしゃったことです。全国から頸損が集まるとは聞いていたのですが、正直、佐賀から単独で乗り込む自分はスゴイぐらい思っていました。それが、電動車イスでしかも東京!? 新潟!? えっ? 呼吸器!? カルチャーショックと、自分の小ささを思い知らされました(汗)。
 頸損になって5年目の私は、まだどう生きていいか分からなくて、考えることが多々あります。今回、懇親会を通じていろんな方とお話しできヒントを得た気がしています。また、私には入院が一緒だった呼吸器をつけた友人がいるのですが、退院後いろいろ考えすぎて連絡を取りづらくなっていました。この会の存在を知ればきっと彼の励みになると思い連絡を取ることができました。実りの多かったこの会に参加させてもらったことに感謝いたします。
 ガラにもなく真面目な文になってしまったので、ここからは不真面目な私で(笑)。懇親会後、古い友人に会いに行きました。ホテルからタクシーで移動したのですが、さすがANAホテルです。私は自分でタクシーに乗れないのですが、頼むとホテルマン3人で快く抱えてくれました(笑)。現地で待っていた薄情な友人と合流すると、懇親会でお腹いっぱいだというのに焼肉屋に連れて行かれました。それでも、広島でしか食べないという牛の前足の脇の肉『コウネ』がポン酢で食べるとスゴく美味しくて印象に残っています。



 その後、友人がやっているスケボーパークに行き、お酒も入っていたので小さいパークの底のほうを車イスで軽く滑ってきました(写真は大きなパークですが……)。怪我して初めて滑ったのですが、昔の感覚を少し感じることができて楽しかったです。次回はドロップ(一番上から底に向かって降りること)しようと思います。言い過ぎました、止めときます(笑)。
 そんなこんなで遊び疲れたところでタクシーに放り込まれ、ホテルに着いたらホテルマンに『ちょっとお願いできますか?』……とこんな感じで私の広島の夜は更けていきました。次の日は入院が一緒だった広島にいる頸損の友人に会いに行ったのですが、長くなるので『駅から車で20分の距離を、駅の近くって言うな!』の一言に省略させてもらいます。
 今回、この会に参加してたくさんの刺激をもらいました。本当にありがとうございました。次回も是非参加しようと思います。こんな私ですが、今後ともよろしくお願いいたします。

佐賀県:A.N.



 『臥龍窟日乗』−アグレッシブリハ、危険も−〈2〉 


 筋肉量が数字で出るわけだから、これは面白い。わがリハビリスタッフも、目の色が変わった。これまで以上に力が入る。
 ところがある時、リハビリ中に眩暈(めまい)がした。起立性低血圧はしょっちゅう起きているので馴れっこになっているが、そんなものじゃない。右足だけが丸太棒のように腫れ上がっていた。
 ちょうど訪問看護の時間になった。いつもどおり血圧を測ると、上が70前後、下が40くらいしかない。血圧自体、私の場合乱高下がひどくて、上が230ということもあるが、70ということはかつてなかった。看護師の指示で至急、掛かり付けの病院に運ばれた。
 MRI、CTスキャン、レントゲンまで撮った。結果は『骨化性線維異形成症』と診断された。筋肉を酷使したため筋肉組織が破壊され、内出血していたそうだ。全血液の四分の一くらいが筋肉内に流れ出ていた。ただの内出血ではない。
 レントゲンで見ると、太腿(ふともも)の付け根辺りに、白い靄(もや)のようなものが掛かっている。怪訝(けげん)な表情で医師が訊いた。
「なにをやっていたんだね?」
「アグレッシブリハビリですが」
「どんなことをやっているか知らんが、それは止めた方がいいよ」
 医師はレントゲンを指差し説明した。白い靄は、骨を形成する成分で、これが進行すると全身の筋肉が骨化するこわ〜い病気だそうだ。
「私の場合は進行性ですか」
 不安になって訊いてみた。
「それは分からない。難病中の難病で治療法がないんですよ。ひと月経ったらもう一度レントゲンを撮りましょう」
『進行性骨化性線維異形成症』
 初めて耳にする病名だ。家に帰って調べてみた。染色体が絡んだ難病で幼児期に発症することが多い。筋肉に過度の刺激を与えると骨化が進行し、全身の筋肉が骨となって20代〜30代で死亡するというものだ。
 医師の言葉を思い出した。
「一度このケースに立ち合ったことがある。あらゆる手を施したがダメでした」
 脊髄損傷の患者だったそうだ。
 ひと月後、ふたたびレントゲンを撮りに行った。どきどきものだ。前回のフィルムと比べてみる。大腿部に浮かんだ白い靄が明らかに薄くなっていた。
「脊髄損傷患者に多い病気です。十分注意してください」
 念を押された。
 さてアグレッシブリハについて、私なりに結論じみたものを導いてみたい。脊損、頸損の損傷度について、損傷部位を提示することがあるが、これは正確とは言えない。理由は前号の、Aさんのエピソードでご納得いただけると思う。では何を以て重症度を量るのか
「どこを、どのような角度で、どのくらいの深さ損傷したか」。つまり狭窄率(きょうさくりつ)が大きく関わってくる。ところが狭窄率も、撮影の角度によって微妙に変わってくるからややこしい。
 結局のところ、戻ってくるのが「完全麻痺」「不全麻痺」という極めて非科学的な分類なのだと思う。医学が怠慢だとは言わない。前号でも記したように、神経そのものが『神の領域』なのだから。
『廃用症候群』防止や筋力強化が目的ならば、アグレッシブリハはやってみる価値はあると思う。健常者と同じ運動するのだから、健康に悪いはずはない。ただし『進行性骨化性線維異形成症』のような事例がないとは言えない。
 問題は『立ったり歩いたりできる』というキャッチフレーズだ。「不全麻痺」の方がリハによって、病院から松葉杖で退院していくのは何回か目撃した。しかし「完全麻痺」の人が、単独で立ったり歩いたりしている例を、一人として知らない。それでもやってみたいという方は。荊(いばら)の道を覚悟されたほうがいいかもしれない。今私は、iPS細胞の実用化を心待ちにしながら、ノーマルリハビリに励んでいる。(この稿終り)

千葉県:出口 臥龍







【編集後記】



 今号の懇親会特集では、ありがたいことに初めての方や何十年ぶりの方、特に参加された人工呼吸器使用者の方全員にご投稿していただきました。今まで「はがき通信」懇親会が18回開催された中で、人工呼吸器使用者の5名もの参加は過去最多であり、障害者団体の全国的な集いでも5名の参加はあまりないことのようです。
 次に発行日について、表紙の下部に表記していますように、本誌は年6回・偶数月(2.4.6.8.10.12月)の25日頃に発行しております。ご本人が購読に関して何も連絡していないのに、突然本誌が届かなくなりましたらご連絡ください。至急送付の対応させていただきます。
 次号の編集担当は、瀬出井弘美さんです。


編集担当:藤田 忠





………………《編集担当》………………
◇ 藤田 忠  福岡県 E-mail:stonesandeggs99@yahoo.co.jp
◇ 瀬出井弘美  神奈川県 E-mail:h-sedei@js7.so-net.ne.jp

………………《広報担当》………………
◇ 麸澤 孝 東京都 E-mail:fzw@nifty.com

………………《編集顧問》………………
◇ 向坊弘道  (永久名誉顧問)

(2012年4月時点での連絡先です)

発行:九州障害者定期刊行物協会
〒812-0054 福岡市東区馬出2丁目2-18
TEL:092-292-4311 fax:092-292-4312
E-mail: qsk@plum.ocn.ne.jp

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