褥創ラップ療法後日談
褥創は10人10色、治し方、治り方もさまざまである。同じ人間の場合でも、年齢、体調、栄養状態で違ってくる。なかなか一筋縄ではいかない。93号の投稿でラップ療法で治る寸前と報告したかと思う。5cm×3cmほどの広がりで浸潤あり、出血あり、小さな穴あり、の状態から、500円玉ほどの大きさに縮小し、上皮がしっかりできてきたところまで来ていた。ところが、連日33度以上の猛暑が続き全身汗ばむようにになると、ラップでは蒸れてせっかくできた上皮もふやけ、体位交換の拍子などにずるりと剥(む)けてしまう状態が起きがちとなった。 結局、元のもくあみである。還暦を過ぎてから皮膚がかなり弱くなった。ほとんどのドレッシングシートにかぶれやすくなった。暑さで食欲が落ち、栄養状態が悪くなったことも褥創が治りにくくなった一因であろう。 皮膚科のドクターに相談して採用された次の一手は、傷をよく洗い、フィブラストスプレーを5cm離して短く5プッシュし、30秒おいてりんと布でカバーしてビニールテープで押さえる、というものであった。りんと布は表面がきめ細かいネルのような布である。ガーゼより表面が滑らかで、擦れることによる悪影響は少ない。また、軟膏などの薬もあまり吸い取らないので、薬も傷にしっかり付いたまま。素材は木綿なので汗かきのケースにもよい。褥創治療の他にも乳幼児の湿疹治療にも利用されるとのことである。18日ほどで全てに肉芽が上がった段階で、スプレーを止めアクトシンを薄く塗るという方法に変わった。フィブラストスプレーは使いすぎると肉芽が上がりすぎ、不良肉芽となって瘢痕(はんこん)が残る場合があるとのことである。 こうして約1ヶ月弱で傷は親指の爪ほどの発赤状態まで改善した。この経験からの教訓は、ラップ療法は有効な場合もあるが時と場合に注意が必要、ドレッシングシート類もだめ、ガーゼもだめ、ラップもだめな場合は、りんと布の利用は一考の余地あり、である。 東京都:A・Y レニングラード国立舞台サーカスを見に行きました
残暑お見舞い申し上げます。「はがき通信」の皆様、暑い日が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。最近、関東地方でも震度5近くの地震があり、埼玉では大揺れ(震度4)を感じ大変びっくりしましたが、何事もなく一応安心しました。 主人はお陰様でどうにか元気でこの夏を過ごしておりますが、私は7月初めにギックリ腰のようになり、歩いている時に足の付け根が突然ガクッとなり力を入れることができず、腰も痛み、やっと歩いて帰りました。室内でも物につかまりながら歩き、主人の世話をしたりしていました。もう歩けなくなるのではと思うほどでした。病院へ行くこともできずシップ薬を貼り、コルセットを付けて約1週間様子をみて少し歩けるようになり、埼玉医大整形へ行きました。レントゲンを8枚ほど撮り診察を受けました。結果は背骨の一番下の部分の骨と骨の間にあるクッションの部分が狭くなり、神経が股関節を圧迫して痛み、歩くことも辛い状態となってしまいました。 整形の先生はシップ薬と3種類の薬(ハイペン錠200mg・ムコスタ錠100mg・ミオナール錠50mg:1日2回各1錠)を処方し、2週間様子をみることになりました。私は以前にも3回ギックリ腰を経験していることで、腰が弱いのではと思いました。重い物を持ったり、無理をしないように言われました。2週間後の診察日には大変楽に歩けるようになりましたが、まだ腰に違和感がありました。今回もシップ薬と前回と同じ薬をいただき、約1ヶ月様子をみることになりました。背骨などに悪い病気などはなかったことで安心しました。今は買い物の時も重い物を持たないよう十分注意し、コルセットを付けてやっと日常生活ができるようになりました。感謝です。 8月26日、和光市民センターへタクシーに乗り約40分、ロシアから来日したレニングラード国立舞台サーカスへ主人も連れ、みんなで行くことができました。前日の台風11号も去り、台風一過の暑い暑いお天気となりました。主人も何ヶ月も前から楽しみにしていましたサーカスです。舞台サーカスとは聞きなれない言葉です。舞台でやるサーカス? そして、本物の熊さんも演技する? 一体どんなサーカスなのでしょうか? 普通、サーカスは外で大テントの中で行われます。興味しんしんで開演時間を待ちました。きっと本場ロシアのサーカスは素晴らしいのでは。20年以上前に健二がまだ小学生の頃に見に行った、ボリショイサーカスの素晴らしい鉄棒の演技を思い出していました。 午後1時いよいよ楽しいサーカスが始まりました。出演者の紹介から始まり、まず初めに舞台での空中ブランコ(男女のペアーで)、空中回転と息を飲む素晴らしい演技です。また、おどけたピエロが客席まで降りてきて多くの子どもたちにボールを指先に乗せくるくる回して見せたり、それはそれは楽しいピエロでした。特に美しく素晴らしかった演技は、美しく静かな音楽に合わせて銀色の器具の上で真っ白な衣装を付けて流れるように舞う演技でした。夢を見ているような舞でした。また、空中バレエは太い綱を回転させながら真っ赤な衣装を付けゆるやかに舞ったり、時には綱が回転し激しく舞う姿は、想像以上の演技に驚きました。 次に可愛い本物の熊さんの登場です。玉乗り、綱渡り、銀色のスケーターに乗って舞台を1回りし、演技が終わると可愛い姿でご挨拶です。とてもとても可愛い熊さんでした。(熊さんにハプニングがありました。舞台でオシッコをしてしまい、衣装をぬらしてしまいました。でも、落ち着いて演技ができました。) 今日は楽しい楽しい1日でした。スリルと驚異のテクニックと笑い、そして洗練された美しい演技。ロシアサーカスのスターが勢揃いしたレニングラード国立舞台サーカスは、この夏の一番の楽しい思い出となりました。主人も私も長男の直樹も大満足です。これからもまた良い思い出作りができるよう願っています。 「通信」の皆様、立秋の頃となりましたが、お暑い日が続いております。お身体に気を付けてお過ごしくださいますように。 埼玉県:S 上高地への旅行
2005年7月19日〜21日。夫の定年旅行です。娘たちの名前は、学生時代ワンゲル部だった夫が付けました。北アルプスからの夕日がきれいだったと長女は茜、梓川のようにきれいな心を持った人になるようにと次女は梓といいます。出発前日に梅雨明け宣言、旅行3日間の晴天、案内役の親切なタクシーの運転手さんにも恵まれ、良い思い出となりました。 やっと高山駅に着いた、とホッとするのもつかの間、予定外の恐怖の初体験が待っていました。階段を一段一段上り下りする、キャタピラー付き階段昇降機“ジアメイト”。到着ホームから改札口へ行くまでに、20段くらいの急な階段を上り下りしなければならないのです。テレビで見たときは、「便利で良いなぁ」と思いましたが、実際に乗ると、高い岸壁から突き落とされるような恐怖感と、宙に浮いているような気持ち悪さで、寿命が縮まる思いでした。高所恐怖症だからでしょうか……。 上高地へは自然保護のため、バス、タクシー、許可を得た車しか入れないという交通規制があり、高山駅へ福祉タクシーを予約しておきました。しかし、車椅子からは楽しみにしていた景色が全然見えないのです。悔しがるがる私に、タクシー運転手さんならではの、大正池絶景ポイントへ案内してくださいました。降りてみました。すごーい! 手を伸ばせばすぐそこに大正池、向こうには焼岳、穂高連峰です。思わず大きく息を吸い込んでいました。隠れ穴場とあって他には誰もいなく、夫と運転手さんとの3人占め。すごい贅沢です。上高地のような自然を目的とした旅行は可能であれば、車の座席へ座らせてもらうのが良いと思いました。翌日はタクシーを利用し後ろの座席へ座らせてもらい、景色を満喫することができました。 自宅発7:30→上高地着16:20。到着時気温18℃、21:30気温14℃。 1泊目の宿は、あこがれの赤い屋根の上高地帝国ホテル。昭和8年、日本初の山岳リゾートホテル。赤いじゅうたんに部屋は屋根裏部屋風。出迎えてくださるホテルマンの格調高くて温かな対応、役割毎に違う制服などなど、不思議の国のアリスになったようでした。部屋からもレストランからも西穂高が見えます。玄関正面には、写真でよく見る巨大なマントルピースがありました。満室でしたが私たちに配慮してくださり、食事の席は優先。夕食はフランス料理。私のは希望通り一口サイズにカットされ、料理が運ばれるたびに「食べにくいようでしたらお申し出くださいね」と声をかけていただきました。朝食時には景色のよく見える席を準備くださっていました。でき立てのパンとコーヒーのいい香り。夫はりんごジュースがすっかりお気に入り。帝国ホテルでの時間は、私たちにとってほんとうに夢のようなひとときでした。娘たちの写真を持っていき、部屋に飾って景色を見せてやりました。 2日目午前中、河童橋周辺を散策。河童橋までは、帝国ホテルから歩いて15分。左手には梓川、河童橋の向こうには穂高連峰。まるで絵画の世界です。梓川は透き通った薄いエメラルドグリーン。流れは勢いがあって、とても力強く感じました。1日中眺めていたいようでした。午後からは、福地温泉、平湯温泉経由で新穂高へ向い、ロープウェイに乗りました。茜の名前の由来の山、北アルプスを見るため、高所恐怖症決死のチャレンジです。残念ながらガスがかかって、切れ間からかろうじて山が見える程度。午後からは山の天気が変わりやすいのだそうです。少し贅沢かなと思いつつ、午後から半日タクシーを借りたのはよかったと思いました。ロープウェイの他に、温泉街、テレビでよく紹介される宿、白身がとろとろで黄みが固い“はんたい卵”、地元では名の知れたおいしい涌き水“長寿の水”、高山の街中をガイドマップのようにグルグル走ってくださり、おいしい居酒屋さん、中華そば屋さんなど、いろいろ案内していただいて得をした気分でした。有意義に時間が使えたように思います。余談ですが、お借りしたタクシーのナンバー、私の誕生日でした。途中で気付きました。些細なことですが、とっても嬉しかったです。 2日目は高山へ泊。ひだホテルプラザ。バリアフリーに力を入れたホテルでした。夕食は、運転手さんに教えていただいた郷土料理の居酒屋“京や”へ行きました。ホテルから歩いて10分ぐらいだったと思います。一歩入ると、民家風造りのどこか懐かしい店内。あったかなおばちゃんたちがお出迎えくださいました。夫はよく冷えた生ビール、私は地酒の“山車”を注文。赤カブ、野沢菜、こなすのお漬物がよく合う。何を食べてもおいしい。こも豆腐、ころいも、山菜、鮎のうるか、お刺身、手打ちそば。そして、忘れてはならない飛騨牛と山の幸、富山湾からの鮮度抜群の海の幸を堪能させていただきました。 3日目はホテル内の美容院でシャンプーをしてもらい、高山の朝市、街中を散策。朝夕は肌寒いくらいでしたが、日中は気温も34℃まで上がり大変暑かったです。朝市で、マユミでできたかわいいブローチと木彫り“ほおずき”のネックレスを買いました。そのお店のおばちゃんは笑顔の素敵なとても明るい方で、置いてある品々まで温もりを増す。なんだか幸福感が漂ってくるようでした。クラフト店では、旅行記念にドアベルを購入。町並みはレトロで、どこのお店もたいてい車椅子で出入りでき、やさしい町並みだなぁと思いました。 夫は麺類が大好物で、味にはちょっとうるさい。高山で、お蕎麦とラーメンを食べることを楽しみにしていました。お蕎麦は昨日おいしくいただいたので、後はラーメン。雑誌を念入りに見たり、タクシーの運転手さんからもお薦めのお店を聞いていました。私もそのためにお腹は開けています。しかし、ラーメン屋さんへいっこうに足が向きません。実は夫、とても暑がりなのです。“暑い、空腹、睡魔、タバコ”にはどうやっても勝てません。高山散策は夫のリクエストでした。しかし、ホテルを出た瞬間、照りつける暑さにうんざり。いつもの不機嫌モード突撃。 町並みには、20〜30メートル間隔でベンチが置いてありました。ベンチを見つけると座っては、タバコを一服、冷たい飲み物、とまるでベンチはマラソンでいう“夫の給水ポイント”です。まぁこんな暑い中、リュックを背負って車椅子を押して歩くわけですから、さらに暑いはず。髪の毛の1本1本まで汗でびっちょりです。ごめんね。ハンカチで汗を拭く横顔を見ながら、私が歩けたらなぁ、荷物が持てたらなぁ、とため息……。 というわけで、あれほど楽しみにしていたラーメン、食べる決断がおりなかったようです。目的としているラーメン店は、駅へ行く途中にあります。雑誌では紹介されていなかった、タクシー運転手さんお薦めの昔ながらの中華そば屋さん“鼓屋”。後悔のないように食べてもらいたいし、私も食べてみたい。「ほんとうに行くん?」と力のない夫の声。「行こうよ!」となんとか食べさせたい私。重い足取りの中、ようやくたどり着いたら休憩時間(14:00〜17:00)でした。到着時刻14:20、がっかりです。“鼓屋”周辺はいいにおいがしていて、気のせいか夫も一瞬暑さも吹っ飛んだような、食べたそうな顔に見えました。 高山駅で「またあの階段昇降機に乗らないといけない」と、時折思い出しては気が重かったけど、帰りは改札口を入ったところのホームで、乗らずにすみました。一安心! と、ビールとちくわを買って電車へ乗りました。ようやく暑さから解放された夫。水切れした草花のように、おいしそうにビールを飲んでいました。定年といっても60歳まで仕事は後5年、まだまだ続きます。なにはともあれ、ひとまずはお疲れ様! そして、旅行に誘っていただいてほんとうにありがとう!! 追伸:あ、そうそう。私も熱がこもってどうなることかと思いました。しかし、夫の定年旅行ですからね、良い思い出となるようにと旅行前から気を張っていたし、頼りにしている夫の暑さバテ姿を見ると弱音なんて言ってはおられません。頑張ってみました。が、帰途ではいっきに気が抜け、2週間過ぎても疲れが取れません……。 <あこがれの帝国ホテルの前で> <梓川から河童橋と穂高岳> 広島県:ハローまり E-mail: hello-mari@enjoy.ne.jp ひとくちインフォメーション
★ ソフトウェアの提供 「Web Adaptation Technology(ウェブ・アダプテーション・テクノロジー)」 (以下「WAT」)は、Web活用にあたり発生するデジタルデバイド(情報障壁)を改善するため、IBMが社会貢献活動の一環で開発し、NPO法人 自立の魂が日本IBMとのパートナーシップに基づき無償提供しているソフトウェアです。 視覚障害、上肢障害、認知障害のある人が利用すると、文字サイズやページの拡大、音声によるテキストの読み上げなどの機能などで、障害によるWebのアクセシビリティを改善します。上肢障害をもち、かつ視力が低下されている方(ともに自己申告)に限定し、使用条件を満たしている方々にWATを使用許諾し、ソフトウェアをお送りいたします。 ※全盲の方向けに作られたソフトではありません。 詳しくは、こちらをご覧ください。 [ソフト紹介] http://www.jiritama.jp/wat/index.html [お申し込みはこちらから] http://www.jiritama.jp/wat/wat_form.html 特定非営利活動法人 自立の魂 〜略して じりたま!〜 WAT担当:天野 【編集後記】
この通信が発行される頃には、小倉懇親会が開催されている。この夏は、9月の「はがき通信」の編集と小倉懇親会に備えてなるべくマイペースに過ごそうと思っている。今の体調で小倉まで皆さんに会いに行けるだろうか……。考えてみると、「はがき通信」の懇親会も今回で10回目になろうとしている。初めて参加される方が一人でも多くいらっしゃってほしい。そこに、新しい出会いもまた待っている。とても楽しみだ。 前回、初めて投稿してくださったS市のUさんに今回も原稿を書いていただけた。「自分の投稿した文章が印刷物になるというのは、感動的なものなのですね。妻ともども喜んでおります。」とおっしゃっていただけ、編集委員としてとてもうれしく、そんな方がお一人でも増えていただけたらと……それを励みに編集スタッフは、「はがき通信」継続のために力を合わせて踏ん張っている。ほんのひと言でも1行でもけっこうです。あなたの“お声”をお寄せください。 次回の編集も瀬出井弘美が引き続き担当いたします。 編集委員:瀬出井 弘美
………………《編集委員》……………… (2005.7.25.時点での連絡先です) 発行:九州障害者定期刊行物協会 |
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