はがき通信ホームページへもどる No.95 2005.9.25.
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 映画「海を飛ぶ夢」を観賞して 


 実在の高位頸損者の手記を元に作られた映画「海を飛ぶ夢」を観賞しました。大まかなストーリーは、主人公は25歳の夏、海への飛び込み事故により首を骨折(C4?)、全身麻痺で寝たきりの生活を送る身体になってしまう。
 家族介護の暮らしの中で時に詩作しながら26年後、主人公は自ら人生に終止符を打つことを決意します。支援者の女性弁護士、近隣に住むシングルマザーとの出会い、困惑する家族との関係やカトリック教国という宗教観の社会との対立、さまざまな人々が主人公の切望する尊厳死に翻弄されながら展開する死生観を描いたヒューマンドラマ。
 重度四肢麻痺者の生活・尊厳死・死生観など、けっこう暗く難解な映画に思えるようですが、映画としては主人公を取り巻く人間味あふれる登場人物たちがユーモア含み織り成す、人情ドラマなのだと思いました。中でも主人公の空想シーンは、時間や重力から解き放たれて飛翔する自我、問いかけている深いテーマからもしばし浮遊させられるような映像美。同じ頸損者には多分に共感できるような日常の出来事が多く描かれていて、思わず笑いがこぼれたり、痛切に思い当たったりと自然に主人公のある内面へ感情移入できるのではないでしょうか。私には改めて身に沁みるようでした。
 私は、人の尊厳ということではこの主人公の死生観やその信念に基づく行動については共感を覚えました。詩人ラモン・サンぺドロ(主人公実名)という人は、迷走の末「尊厳ある死」を選びました。私は基本的にポジティブな性質なのでしょう、時には怠けもしますが「尊厳ある生」を我武者羅(がむしゃら)に生きてみようなんて思ったのでした。
 DVDが10月発売予定らしいので、一度ご観賞されることをお薦めしまーす!
 解説: 実在の人物ラモン・サンペドロの手記『レターズ・フロム・ヘル』を元に、『アザーズ』のアレハンドロ・アメナーバル監督が映画化した作品。全身麻痺の障害を負った主人公に、『夜になるまえに』のハビエル・バルデムが特殊メイクでリアルに演じる。ゴールデン・グローブ賞最優秀外国語映画賞に輝いた壮大な心の旅路を描いた真実のドラマ。
東京都:K・H E-mail: hiron-k@pk.highway.ne.jp


 スペイン人の家族関係と介護事情 


前回通信の「ごあいさつ」で、頸髄損傷者の尊厳死をテーマにしたスペイン映画「海を飛ぶ夢」が紹介されました。その中で「受傷後26年も経てからの尊厳死とは何事か……スペインには訪問看護や訪問介護などの福祉制度がないのか、環境制御装置がないのか」という藤川氏の厳しい指摘に、なぜか私は自分が責められているような錯覚に陥ってしまいました。
 というのは、アンダルシア地方で生活している姪を通じて最近スペインがすっかり身近な国になっているからです。彼女は非常に筆まめで、単身で語学留学し、現地の青年と知り合い、国際結婚、出産、子育てと現地の生活体験を日記に書き続け、毎週1回、1週間分の生活記録を電子メールで送信してきます。その定期便はもう5年目になりました。両親宛に記述した報告をついでに叔母の私に送信してくるので、内容は日本にいる親を心配させたくない配慮からか、よい点が強調されていますが、姪の夫、その両親、3人の兄弟家族、友人や近隣との交流を通じて異文化社会での日常生活や人間関係がよく伝わってくるとともに、これまでまったく無縁であったスペインに親しみを感じています。
 映画はスペインでも封切られた時、話題になったそうですが、話題の中心は藤川さんが指摘されたような在宅福祉の貧困ではないようです。姪によると、効率や経済が優先する日本と比べ、スペインの介護は人間的だそうです。できるだけ在宅で過ごし、家族の介護が当然であり、家族はみな近くに住んでいて、何かあれば家族のチームワークで対応するのだそうです。あちらでも家族の基本的な単位は夫婦と子供ですが、両親や兄弟家族との交流が行事や困ったときだけではなく、日常的にも、また誕生日やクリスマスは一緒に祝うため家族全員で集まり、交流を深めています。彼女の子育てでも医師や薬局は頻繁に登場しますが、日本のような保健師や助産師の家庭訪問はなく、また訪問看護もないそうですが、いざというときには大家族のチームワークで乗り切っているようです。
 頸髄損傷者のように日常生活の大半を介護に依存しなければならない場合、藤川氏が指摘するようにECSなど福祉機器はとりわけ重要であり、その点に関してはまったく同感です。他方で、遠い異国から来た素性も知れぬ日本人を排除も拒絶もせず、最も親密な人間関係である家族の一員として温かく迎え入れる人々を身近に知るにつれて、私たちは、無意識のうちに効率を優先させて人との日常的な交流をあまりに切り捨てすぎているのではと感じています。
 映画は見ていないので、尊厳死の理由はわかりませんが、26年間も地域で頸髄損傷者を家族介護で支えてきた点にも注目してみたいと思いますし、ぜひ見てみたい映画です。
編集顧問:松井 和子


 地震で帰宅難民初体験 


 都営三田線三田駅上の障害者福祉会館2階で、7月23日午後4時30分過ぎに起きた震度5の地震に遭遇しました。すごく揺れたので、とても怖かった。ちょうど、聴覚障害者の人による交通や建築物のユニバーサルデザインにおいて、聴覚障害者にとって、緊急時・災害時における音声情報しかないのがいかに不安か、視覚情報の必要性について学んだ後でした。
 重度な難聴障害者で、酸素吸入器も必要とする人と同上地下鉄ホームに居合わせましたが、地下鉄三田線が地震による点検のため運転休止をしていることを頻繁に構内アナウンスしているのがまったく聞こえないのは、とても不安そうでした。私も余震が来てエレベーターが止まりはしないかと不安で、地下鉄を諦め、JR山手線にしようと思い田町駅に行ったら、すべて止まっていてすごい人があふれていました。地震時における帰宅難民になりました。
 バスを乗り継いで帰ろうとしました。港区コミュニティバス「ちぃばす」と都営ノンステップバスを乗り継いで、なんとか渋谷駅に着きましたが、道路混雑もすごくて、渋滞で2時間もかかりました。午後7時の時点でまだJR山手線は運転再開していませんでしたので、渋谷駅から池袋駅まで都営ノンステップバスに乗車しようと思いバス停に行ったら長蛇の列なので、即諦めました。車いすの人もいました。
 新宿駅まで歩道伝いに電動車いすで行き、夕食を取り終わった午後9時に新宿駅新宿線改札口に行ったら、新宿線は運転しているということで、帰宅の途につけました。その時点でまだ、JR総武線、東京メトロ南北線・有楽町線・東西線は、運転再開していませんでした。新宿線の車内で繰り返し音声だけの他線の運転再開・停止情報を流していましたが、これが聴覚障害者の人には聞こえないので、たまらなく不安であろうなあと思いました。
 帰宅したら、午後10時30分でした。午後5時30分には帰宅できたであろうはずが、震度5の地震で5時間の帰宅難民初体験でした。  
東京都:I・Y E-mail: access@access-all-japan.jp


 主人が脳梗塞で倒れて 


 はじめまして。私は65歳、主人64歳です。平成16年3月の初旬の朝に脳梗塞で倒れ、救急車にて入院・転院して動脈瘤の手術、リハビリと進んできて現在施設に入居しています。完全に車イスの生活で、えん下障害(きざみ食)・言語障害(ほとんど言葉を話すことができない)・左半身完全マヒとなり、命と同じくらい車イスが大切です。
 お医者さんの説明では、もうこれ以上治る見込みはないとのこと、現実の厳しさをヒシヒシと感じています。1年以上経ち、家族の気持ちも少し落ち着いてきました。集中力がなくなり、二桁の+−算がスムーズにできなくなり時間がかかります。週に5日は施設に行き、近所を散歩(車イスを押して)するととても喜びます。
 では、「はがき通信」をよろしくお願いいたします。暑さ厳しい折、身体に気を付けてお過ごし下さい。

東京都:匿名



 肩の荷がおりるまでとことば遊び集第20弾! 


 脊(頸)髄損傷者は毎年全国で5000人ほど発生すると言われていますが、私の住んでいるような田舎ではめったにお目にかかれるものではありません。それが昨年、すぐ川向こうの集落で発生しました。まだ36歳の職人さんで、労災らしいです。既婚ということでお気の毒な話です。
 一度お見舞いに伺わなくてはと思いながらも、まだ一年くらいでは混乱の渦中におられることだろうと何となく遠慮してきました。私もそれくらいの頃は、他人の好意を素直に受け入れるのが難しかったからです。もっとも、向こうは私のこと(事例)をよく知っておられるらしいのですが。
 そうこうしているうちにちどんどん日がたってしまい、何だかきっかけを失ってしまったようで、行きそびれていました。さぞや薄情な隣人だと思われていたかもしれません。会ったことのない人ですし、労災で既婚という(ある意味うらやましい)点が、無年金で独身の頸髄損傷である私とはあまりに境遇がちがっていて、共通の話題が見つかるだろうか、という大儀さもありました。
 それが先日、雑貨屋の郵便ポスト前でお母さんとばったり出くわし、ここぞとばかりいろいろ様子をうかがったところ、思いのほかの回復ぶりです。全脊連の近くの会員に誘われて、車いすテニスなどもやっておられるといいます。私なんかよりよっぽど活発そうじゃありませんか(苦笑)。
 そこで数日後、散歩の途中でふらりと訪ねてみました。玄関にはちゃんとスロープもつけてありました。あいにく膀胱からの急な熱発で入院しておられましたが、お父さんの話など聞き、障害者関係の資料ほかを置いてきました。パソコンやインターネットも(同封の手紙で)奨めておきました。訪ねて来られれば、知っている範囲でお教えするのにやぶさかではありません。そのうちメールのやり取りぐらいできるようになれば、何かとお役に立てることもあるでしょう。
 これでやっと肩の荷がおりた一件でした。
 【ことば遊び集】
 浅田真央のフィギア。破廉恥漢漢踊り。鍵のかかる密室で根競べ。孫は正義の味方。万博は行列が長久手会場。CMにGackt動員。私はヒマ人のマヒ人。花見で妊婦は待つけん産婆。憲法の窮状を訴える。デマ交信にご用心。罰バチ監視国。用心震災よ。あんまり突っ張ってるとコキンと酒席で折れるよ。ソレイユけ太陽。凛とした石垣。繰り返すなんまんだぶる。土瓶を落として万事休す。福岡西方沖にも押し寄せてほしいボラの大群。セレブのセフレとスフレ。高性能の靴をはいてく。似非エッセー。夕張メロンは威張りメロン。どたキャンとは犬の散歩中に倒れることか。運転しない林家ペー・パー子。スポーツ煩悩の選手。切手も切れない間柄。民営化でゆうちょなこと言ってる場合じゃない。死人に梔子(くちなし)の花。気がめいる便。クールビズでネクタイ関係を解消する。昼下がりの事情。警察の事故照会で四人を誤認逮捕。東北楽天銀行。おじゃま無視。カルビを夜勤に食う。猫ろぶ。浅草ロック座に石榴(ざくろ)咲くさあ。痴呆の爺婆産業。他意したものはない。手痛い前線。小泉首相の優勢見えんかい。年に一度の棚ボタ祭り。梅雨のあっ晴れ間。あすはベストになろうと思ったのに。おっかNASA。金持ちのマネ。カナダの景勝にトロンとなる。都知事の言いたい放談。夏のバテ連。白票を踏む思い。お盆に子煩悩な漫才師。ぶらり無頼旅。安く滲んじゃ惨敗。

佐賀県:中島 虎彦 E-mail: henomohe@po.ktknet.ne.jp
 「障害者の文学」 http://www.ktknet.ne.jp/henomohe/ 

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