特集 褥瘡の怖さを知らず……
受傷後間もない頃は褥瘡なんて縁のないものだと思いこんでいたので、夜更かし寝不足のまま座席に何も敷かずにドライブに出掛けたり、入浴後にギャッチアップしたベッド上で長座位のまま読書をしたり、一日中座骨部に負担を掛けるような生活を送っていました。
そんな悪い要素一杯の結果、徐々に筋肉の落ちた臀部(でんぶ)は座布団の役目は果たせず、傷ができるようになり、褥瘡の怖さを知り始めました。そして2000年(受傷18年目)に両座骨も削る手術(Kリハ)を受けることになってしまいました。退院前にはきちんとリハ工で座圧測定を済ませ、すでに立ち上げていた地域活動支援センター(以下、地活)にも復帰しました。
そして今後は除圧することを真剣に考えようと、これまでの生活パターン(朝から就寝まで10時間以上車いすに座る)を変え、居宅介護を導入してヘルパー介助にて日中にベッド上で休む時間帯を設けました。地活にもソファーベッドを用意してもらい、昼食後に休ませてもらっていました。
私は普段は手動車いすを使用し、外出時は電動車いすと使い分けています。週1回、電動車いすで20〜30分かけてリハビリに通っていましたが、ロホマットとジャージでは体が滑ってしまい自分では体を立て直すこともできませんでした。この滑り(ずれ)が特に良くないことへの認識が甘く、なぜか電動車いすに乗ると座骨状態が悪くなると思っていました。地活では職員2名に10秒間体を持ち上げてもらい、自身では車いすに肘を掛けて前傾姿勢をとるなど除圧を行っていたのですが、仕事の切りの良いところまでやっちゃおうとか、週末は研修等が入って日中ベッドに上がることもできず、ついつい忙しさ優先になり除圧も怠り気味になっていました。
一度削った座骨に皮膚を寄せて縫った部分は弱く、前回の手術から10年経過した頃から、また繰り返すようになり、表面上とは裏腹にとうとうポケット状になってしまいました。この間、近所の病院や後半は訪問診療の皮膚科で診てもらっていましたが、やはり遠くてもKリハに通うべきだったと後悔しています。
そして前回の手術から17年後に2回目の手術を受ける羽目になってしまいました。現在は「もう3回目はないぞ!」と自分に言い聞かせ、とにかく除圧が重要と頭と体にたたき込み、仕事中も頻繁に体を左右に倒すなどを心掛けています(JAYのJ2ディープクッション使用)。
今後、電動車いすもリクライニング・ティルト式に替え、一日外出しても安心できる環境にしていこうと思います。
川崎市:S.K.
特集 衣服の工夫とおすすめ下着
〈1〉日々の褥瘡予防の方策は?
よくジーンズをはくのですが、基本的に後ろポケットは取っています。
パンツ(下着)は、ワコールのBROS(ブロス)ボクサーパンツ(前閉じ)〜3,024円(税込)。これはお尻部分に縫い目がなくて、生地もしっかりしていて最高によいです。
愛媛県:S.I.
特集 体位交換と軟膏
頸損は入院した病院次第でその後の人生が決まってしまう。Dさんのように病院に頸損は自分一人で、何ら知識を得る機会がなかったというひとはまことに気の毒。わたしはさいわい埼玉のKリハに入院できてまわりは頸損だらけだったので患者ならではの経験談を得ることができてさいわいだった。
ところでどんな頸損もICUに入っている3週間のあいだに褥瘡を作らされてしまう。わたしも仙骨部に立派なものをこさえてもらった(いま現在褥瘡になってはいないが、肛門と仙骨のあいだに線が1本通っているようで、時々これが悪化する)。アメリカなら入院中の褥瘡は訴訟の対象になると聞いた。日本の病院はなぜエアマットを備えないのか。褥瘡がその後の人生をいかに制限するかわかってない。最近では備えている病院もあるようだ。そんな病院はほかのことにも神経を使っているだろうから、できればそういうところに入院したい。
在宅になってから入院することも数度あったが、必ず初期のころ使った簡易なエアマットを持ち込んだ。救急隊員は嫌がったが、家内は譲らなかった。エアマットなしには痛くて一睡もできない。看護師がエアマットに触れながら、「へえ、これがエアマット……」とつぶやくのを聞いたことがある。存在自体を知らないのだ。
せっかくKリハに入院できたのに、褥瘡が治るまでリハはできないといわれ3ヶ月寝たきりだった。そのかんにすっかり起立性低血圧が体に染みついてしまって30年たった今でも苦しい。しょっちゅう真っ暗になる。
◇体位交換
自立支援法の時代(64歳以下)のころはエアマットを何台も買い換えた。たいへんな出費だ。ケープのエアマットがよかった。モルテンも参入してきたが、ケープには及びもつかない。しょうもない製品で所詮ボール屋さんだとおもった。現在は介護保険でモルテンの「オスカー」という自動体位変換マットをレンタルで使用(月額800円)。モルテンもやっとエアマット屋になれたと感じる。
わたしは一晩に数回タイコーをする。褥瘡予防のためでなく、痛み対策だ。背中と腕に24時間ひどい痛みがあるので、痛みで目が覚めてしまう。そのたびに妻を起こさなければならない。妻も毎日残業続きで休日出勤もしなければならないブラック職場で働いているから簡単には起きてくれない。この件は別稿にゆずろう。
オスカーはいろいろ便利な機能がついているが、わたしはその柔らかさだけで選んだ。自動タイコーなんてできやしない。要するに上半身や下半身をねじるのだが、そんなことをしたら痛くてたまらない。最近テレビで自動タイコー機能のついたベッドを宣伝しているが、これもわたしの役にはたたないだろう。体を傾けられたひには痛みが増すだけだ。タイコーはひとの手とクッションに限る。
前号でTOMさんがリクライニングしながら車椅子ごと乗れるフォードを購入したという記事を読んで悔しくなった。「オレだって背中さえ痛くなければ買うのに」と(いや、このあたりでは駐車場が月3万5000円だから……すみません、見栄を張りました)。福祉車両(リフトカー)に乗ったのでは道路しか見えない。
昼間室内で車椅子に乗っているときはカットアウトテーブルの上に枕を積んで突っ伏し、定期的に背中の除圧をしている。これも体位交換の一種だから、尻の褥瘡予防の役に立っているだろう。
◇軟膏
さいわいなことに皮膚科の先生が月に1回往診してくれる。その指導を以下に記す。
褥瘡予防として仙骨には常にアズノールを塗る。
肛門の上部に傷ができたらメサデルムを塗る。
褥瘡ではないが、陰部というものは常に湿潤している。陰茎と陰嚢の間には毎日大きめのガーゼをはさみ、陰茎を包んでしまう。とにかく皮膚と皮膚が接触しないようにする。もし発赤したらリンデロンVGを塗る。
内股には常にルリコンを塗る。真菌予防だ。発赤したらメサデルム。
もし瘻孔が発赤したらリンデロンVG。
ただしこれはわたしの場合であって、ステロイドの含まれているものもあるので、ステロイド不適応のひとはご注意ください。
もう一つ、冬場などにすねがかさついてきたらヒルドイド。世の女性は美肌のために何の疾患もないのにへりくつをこいて皮膚科からせしめているという話だ。
褥瘡は意外なことで起きるから油断がならない。先代のオスカーはマットの回りが硬く、そこに乗せたかかとが褥瘡になった例もある。
冬になると足の親指の先が赤くなる。しもやけではないかという意見もあったが、専門医に診てもらったら、仰臥位の時に布団が圧迫して発赤しているのだろうからリンデロンVGを塗るようにいわれた。
またわたしは夜右側臥位で寝る時間が長いので、でっぱった右足の小指の付け根が赤くなる。これはアズノール。円座を使ったこともあったが、ご存じのように中心部はよくても円座の当たっているところに障害が出る。
東京都:F川
特集 ロホとお尻の皮膚を清潔に
〈1〉日々の褥瘡予防の方策は?
ロホクッションを使う。
お尻まわりの皮膚を清潔に保つ。
〈3〉皮膚の赤みをくい止める方策は?
私はくい止めることができませんでした。私も知りたいです。
〈4〉過去の教訓から得た対策は?
褥そうは治療にとても時間がかかります。もう絶対に作らない。が得た対策です。
〈5〉何かみなさんに聞きたいことは?
おすすめのクッションがありましたら教えてほしいです。
K.Y.
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