はがき通信ホームページへもどる No.168 2017.12.25.
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 近況<胆管炎と乱血圧>のその後 

♂77才、C3〜5不全、頸損歴29年

 前号(167号)のその後です。6月に留置した胆管ステントと胆石の状態観察のため、11月2日に受診しました。レントゲンとエコー検査の結果、思わぬことが・・・。ステントも胆石も見当たらないので、きっと自然排出されたのだろうから、しばらく様子を見ようとのDr.の話。
 胆嚢摘出手術を覚悟して、受診した私はまさに夢の様でした。奇遇なことに、その数日後、息子が胆嚢炎で胆嚢摘出手術を受けました(笑)。
 血圧の乱高下は相変わらずですが、きつさはほとんど無くなり、あの頃の症状が嘘のようです。

●167号 http://www.normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc167a.html

佐賀県:K.N.



 古狸のつぶやき 

57歳、C−3・4・5、圧迫骨折、完全マヒ、受傷歴38年、男性

 ついつい犯してしまう失敗。それは「はがき通信」は、四肢マヒ者の情報交換誌なのに、仲間の原稿を「元気そうだなぁー、ふ〜んそうかー、俺と一緒だなぁー、大変だなぁー」と、読み手に回るだけで、発信していない怠け者の自分を反省。えーMさん〜特集の原稿が違います。Fさんの声が聞こえてきそうですが、わけはのちほど。
 今では懐かしい想い出だが、故・向坊氏の北九州市の旧宅へよく遊びに行った。玄界灘を一望できる丘の上、九州最北端の白い妙見崎灯台を眺めることができた。
 私は当初、葉書で原稿を送っていた。それを向坊さんは個人的な便りだと思っていたらしく、「はがき通信」になかなか載らなかった。私は電話でそれとなく尋ねたら「あぁ原稿だったのかぁ」と、葉書に書いた私もうかつだったが、向坊さんも御茶目な方だった。第1回の原稿は17号(1992年9月)に掲載された。
 瀬出井さんのストーマの投稿は、重要な体験談に私自身も必要性を感じていて、感謝しています。痔ろうは、老化に伴い回復力の衰え、腫れ、充血が年々激しくなり手術も考えております。排便時の出血も増してきました。37年間持ちこたえたほうかな。
 訪問看護師さんが週2回摘便による排便、前日に下剤をセンノシド2錠服用、夕食後3時間あけて(軽めの食事を腹6分)、齢なのか未消化の食べ物が胃に残っていると下剤の効果が薄れるような!? 当日は60ccの浣腸液を3本使用し、ベッド上で左肩を下にして、側臥位で60分間の格闘。
 水溶性の繊維質を多く含むメカブ、腸に十分な水分のために豆腐、オクラ、ヨーグルト、柔らかい白米を食することで、排便もスムーズに終わっています。37年の私も排便には気を使う、自分がどのタイプの便秘なのか、ただ繊維質の多い根菜類を食しても直腸付近で便が固くなり、ガスが出にくく便の下がりを止めてしまいます。私の場合ですが、ここまでが途中になってしまった1年前の原稿です。
 この数日後、踵(カカト)の靴擦れ(?)イボ(?)により、長いあいだ近所の皮膚科にかかっていましたが、皮膚癌に凶変。
 入院手術を終え、自宅療養中に初めて経験する胸の苦しさで、耳鼻科の外来診療にかかると、睡眠時無呼吸症候群とのことで、危うく心不全に。夢の中で白い服を着た美しいグラマーな女性が「貴方はあの明るい丘の上には行けません」と告げられ、暗い迷路をさまよい目が覚めました……。



 呼吸ができない! えーっいつもどうやって呼吸をしていたんだ。パニックに、冷静さを取り戻して1・2・3と鼻で軽く息を吸って、45678とゆっくりと口から息を吐きます。吐く時間を長くすることで酸素が多く肺に運ばれます。以前入院時の呼吸訓練が役にたちました。今まで自分のことでかまけていたために投稿できなかった分も、仲間たちの苦痛を共に考えて乗り切って行きましょう。
 痛みは本人しか解らない厄介なもので、眠れない痛みが続くと、メンタルを鍛えていた私も心が折れました。周りの人に理解してもらえず、うつ状態になったこともあります。痛みを解ってくれとは言わないが無視をしないでくれー。若いときはそんな気持ちで一杯だった。受傷後10年は深刻な痛みに悩むこともなく、暴飲暴食を続けていました。
 前号(167号)でFさんが言っていたように主治医、理学療法士からも長生きは難しいと告げられ、それならば太く明るく好きなことをして生きて行こう……。38年が過ぎた今、私は無茶をしていたツケが回っての報いとして、さまざまな生活習慣病を引き起して痛みに悩まされています。
 受傷30年を越える仲間たちが健康を害して苦難の日々を……生活習慣、食生活の改善に努めて重篤な病を回避して行きましょう。最近よく血管年齢の若さが健康寿命を延ばすと健康番組で報じられています。
 加齢に伴い、誰でも血管老化物質が増加、血管をボロボロにしてしまいます。近年の研究で、ビタミンB群が心筋梗塞や脳梗塞を軽減することが分かったそうです。3つの栄養素(B6・B12・葉酸)をバランスよく含む食材が、豚レバー・牛レバー・鶏レバーです。レバーが苦手な人でも、毎日無理なく摂取できる食材が海苔です。私は他にはクルミや青魚を食べるようになりました。病気をして、血流を好くし健康寿命を延ばす食材の玉ねぎ・味噌汁・チーズなどを心掛けて食べています。
 皆さんの投稿でも痛みの緩和に、ストレッチやマッサージが有効だったと私も同感です。土踏まずを1分間揉むだけでも、脚のむくみと血流を促してくれます。自分のレベルの範囲内では、十分な運動は無理だと考えている人もいるでしょう。私もそうでした。諦めたから今苦しんでいます。肩甲骨をゆっくりと廻すだけでも、肩を上げ下げするだけでも深い呼吸を心掛けるだけでも良いのです。深呼吸という漢字が好くないなぁ。
 口から大きな酸素を取り入れるかのように思われがちですが、鼻呼吸を心掛けてみて下さい。喉の乾燥を防ぎ、インフルエンザウイルスも侵入しづらくなります。そして1日に何回か、腹式呼吸を試してみて下さい。
 病院で習った方法は鼻から大きく1234と吸って肺を酸素で一杯にします。そして口から123〜56〜8〜10〜13……と、細く長く息を吐き切ります。口を閉じて鼻から空気を取り入れます。吸ったり吐いたりの数は自分のリズムで、これが1セット。病院では10セットして1時間休憩。それを繰り返していました。新鮮な酸素は血液を、体中に送るエネルギーになります。しかしやり過ぎると疲れますよ。自分に合った健康法を! 適量の水分補給、深い呼吸、それとエッチな妄想が私の一番の健康法です(^^)v 。
 「はがき通信」はインターネットからでも閲覧できます。購読を中止して年間購読料を節約し、必要なときに情報を検索して便利に合理的に。そうだろうか? 狸の眼には身勝手な生き方にしか映らない。小さな新聞の切り抜きを捨てきれずにいます。インテリは苦手ですが、どこかの大学教授の座右の銘。Fair Go〜(平等の中に優しさを)、忘れられない言葉になりました。生きることは辛くて苦しい不運な事故で不便な生活を強いられていますが、不幸ではありません。自分の健康を支えてくれている皆のために、そのことに早く気づきたかったです。すべてのものには辛いことも幸せなこともありますし、楽しいことやうれしいこと、すてきな女性・男性に出逢えます。年の瀬も近づき寒さも増してきます。少しでも身体を動かし血流を好くして元気に年を越しましょう。
 「はがき通信」を支えて下さっている仲間の方たちに感謝の言葉しかありません。購読料と募金しか協力できませんが、四肢マヒ者の情報交換誌という“樹”を育てて行きましょう。ではまたの日を“See you〜”。

●17号「福岡県のKMさん」http://www.normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc17.htm 
●167号「頚損になって34年、今考えること」http://www.normanet.ne.jp/~hagaki-t/pcc167a.html 

福岡県:K.M.



 『臥龍窟日乗』-50-わたしを離さないで 


 私が頸髄損傷になったのは2004年のことだった。順風満帆の人生が一転、こけしのような身体になったのだから錯乱状態の日々が続いた。
 台湾での受傷だったし、日本に帰って入院した大学病院でも頸損患者はいなかった。なにがなにやら分からない。私の闘病生活は情報収集から始まった。
 せきずい基金の講演会に参加したのが最初だったか。ES細胞という言葉を耳にした。堕胎した胎児の胚性幹細胞(ES細胞)を、損傷を受けた部分に移植して元の身体に戻すというものだった。
 その当時中国では、人口抑制のため一人っ子政策を進めており、ES細胞はいくらでも供給できる状態だった。
 せきずい基金の講演では、金300万円也を払って北京で手術を受けたが成功した人は一人もいないと、糾弾(きゅうだん)の声が出ていた。
 帰りの車のなかで、同行した娘が「私の卵子を提供してあげるからね」と言ってくれたのをおぼろげながら覚えている。
 話は変わるが、今年のノーベル文学賞は日系イギリス人のカズオ・イシグロさんが受賞した。どんな人だろうと調べてみた。長崎市出身の63歳の男性だが、幼いころ両親とともに渡英していて小説は英語で書くそうだ。
 代表作は『日の名残り』『わたしを離さないで』とある。
 さっそくAMAZONでチェックしてみる。『わたしを離さないで』2011年劇場公開作品、英語版(字幕入り)というのが980円で出ている。われわれ頸損者が映画館に行くとなると、運転手、ヘルパー、車、ガソリンなど、軽く3000円はかかる。デッドストックだったのだろうか、DVD980円はありがたい。
 ところが、たかだか一時間半の映画だが一気に観るのはつらい。怖い映画である。ホラーというのではない。くそまじめに撮った映画だが心底背筋が寒くなる。
 ひとさまから豪胆と指摘される私でさえ、やるせなく、せつなく、途中でいったん停止し、翌日、気合を入れ直して最後まで観たほどである。
 観たあとも3日くらい暗澹(あんたん)とした気分から抜け切れず、人類の怖さ、おぞましさに震え上がったほどである。
 主人公は3人。キャシー、トミー、ルースというクローン人間だ。かれらは、内臓機能が正常でない患者に、内臓を提供するドナーとして誕生し、人里離れた山中の学校で、一般社会とは隔離されて育てられる。
 かれらの存在理由はただひとつ、内臓の提供だ。率直にいえば人間としての「自己」に目覚めてもらっては困るのだ。閉鎖された世界で「生き物」として成長し、成人になるとドナーとして臓器を提供し、3つの臓器を取り終ると短い生を全うする。
 それを映画では「コンプリート(目標や目的を完全に達成する)」と表現していた。なんという恐ろしい言葉だろう。
 クローン人間とは傀儡(かいらい)、すなわち人形であらねばならない。ところがクローンは精神や感情を備えた人間そのものだ。物事を考え、怒り、悲しみ、喜び、妬み、哀れむ。恋もすればケンカもする。
 臓器を提供するためだけに造られたと知ったとき、自らの運命をどのように納得させればいいのだろうか。
 クローン人間については、各国ともに厳しい法律で禁じているので、イシグロ氏の小説はSFの一種といえるが、それにつけても思いだすのは、冒頭の娘の言葉だ。
 2006年にiPS細胞が世に知れわたってから、ES細胞についてはとんと耳にしなくなった。胚盤胞からとりだすES細胞の研究が続けられていたら、どんな事態になっていたことか。クローン人間と同様の悲劇が起きていたかもしれない。
 テレビを観ない私は、まったく知らなかったのだが、『わたしを離さないで』は昨年、TBSがリメイクして連続ドラマで放映した。有名な役者さんが演じたが、あまりに内容がシリアスなためか視聴率も6%台にとどまった。原作者がノーベル賞受賞の日系人というので、再放送も検討されているらしい。

千葉県:出口 臥龍



 「生きる意味」 


 先日、教育テレビのハートネットTVという番組で、面白いドキュメントの「障害者のリアルに迫る東大ゼミ」をやっていました。あ、今はEテレと呼んでいるようですね。(笑)
 なお、これから話す内容については多少の記憶、解釈の間違いや主観が入っているかも知れませんので、あらかじめご了承ください。
 ご覧になった方もおられるかも知れませんが、内容は日本の最高学府と呼ばれている東京大学で、障害者に関するゼミを開催しており、そこの学生が選んださまざまな障害者ゲストを招いて議論する。それをドキュメントタッチにした番組でした。
 いろんな議論(問い)があったのですが、私が興味を持ったのは「生きる意味」という問いでした。当然、障害者に関するゼミなので、障害者の「生きる意味」を問うているのでしょうが、学生を含む一般の方にも向けられた問いでもあったと私は感じました。
 ある東大生は回答の精度を突き詰めることは得意だが、明確な正解のない回答は得意でないと言っていました。確かに、今回の問いの答えは数学の数式のように決まった答えがあるわけではありません。その意味では東大生だけではなく、障害者以外の一般の方も苦手とする問い及び答えなのかも知れません。案の定、東大生のほとんどが困惑していたようでした。
 その問いの答えを導くために学生が選んだゲストはALS(筋萎縮性側索硬化症)で、国会にも参考人として呼ばれた岡部宏生さんでした。岡部さんが「生きる意味」のキーワードとしてあげたのは、やはり相模原の事件でした。植松容疑者が言った「障害者は生きている意味がない」といった言葉にスポットを当て「障害者も生きている意味がある」(植松容疑者の発した言葉に反し、障害者側に立った意見や考え)と言った時点で、植松容疑者側に陥る(可能性)と説いていました。岡部さんの考えを聞いた当初、学生のほとんどが理解できていないようでした。
 私なりに岡部さんが言った意味を考えてみました。ここからは私の解釈ですが「生きる意味」に答えを求めようとする時点で、「生きる意味」という物差で価値判断をしているわけで、そこに価値観を置けば、何かのきっかけで「生きる意味」がないと判断してしまったとき、植松容疑者と同じ側に立ってしまうということではないでしょうか。
 実際、植松容疑者も障害者施設職員になった当初、「障害者は生きている意味がない」といった暴言もなく、熱心に利用者と関わり、評判もよかったようです。しかし、のちのち家族の疲れた果てた様子等やヒトラーの本(生きるに値しない命に対する安楽死計画、いわゆるT4計画)を読み価値観が変わり、恐ろしい暴言を吐くようになったようです。その後、あの悲惨な事件を起こすことになるわけです。
 人の気持ち、意見、考えなんて曖昧で、いつ豹変するかわからない。それくらい危ういもので、「生きる意味」だけにスポットを当て答えを求めるのではなく、障害者、健常者、生産性や能力の有無や優劣に関係なく、どんな状況であれ「生きている」、そのことに意味や価値観を自分なり見いだすことが大切だということではないでしょうか。

●ハートネットTV(NHK)・「障害者のリアルに迫る東大ゼミ」2017年11月8日放送
http://www.nhk.or.jp/heart-net/tv/calendar/program/index.html?id=201711082000

バビル3世

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