はがき通信ホームページへもどる No.167 2017.10.25.
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 腸閉塞の原因と対策 

C4、受傷33年、61歳

 昨年の9月にストマ(人工肛門)の造設手術をし、順調に排便が行われていたが、今年の7月に腸閉塞を起こし、緊急の入院をした。とは言え完全なる腸閉塞ではなく、一歩手前らしく若干の便は出ていた。
 お腹が張り、嘔吐(おうと)はないものの胃から何かが上がってくるのか? 気管にからみ苦しい。思い起こせば3週間前あたりから、便の量が少ないなぁとは感じていた。
 レントゲン写真で見ると小腸から大腸につながる部分に便塊があり、小腸にガスが溜まっているらしい。治療方法は胃腸に負担をかけないように、絶食の上、栄養補給と胃腸の働きを高める点滴だ。口から管を突っ込んで胃腸の内容物を出すという治療法は見送られたので、ほっとした(この治療は相当にキツイらしい……)。
 3日後から胃腸に動きが出て、便も少しづつ出てきたので、食事が始まった。重湯から始まって3分粥、5分粥、普通食と変わっていく。6日目に固くて黒い便がたくさん出てきたので、翌日無理を言って退院させてもらった。
 ドクターに原因をたずねるが、「頸損者はなりやすいし、複合的なものでしょう」と、一蹴された。
 私なりに原因を考えてみた。

(1)ストマに便秘は無縁だと思い胃腸関係の薬を止めた。
(2)食欲がなくても無理して食べていた。
(3)猛暑につき外出を控えたことによる運動不足。
(4)冷房の効いた部屋でお腹が冷えた。
(5)加齢による胃腸の機能の低下。
(6)北海道旅行の飛行機内でのストレス。

 などが考えられる。

 今後の対策としては、食事は良く噛(か)んで食べ、できるだけ温かいものを食べる。食欲がないときは無理して食べず、消化の良いものを食べる。ビールや炭酸飲料は控え、お腹を冷やさない。ビオフェルミンとセレキノンを常時服用する。などなど……。
 皆様もお気を付け下さい。

東広島市:Y.O.



 ベンチレータユーザ Jeanette Andersen の生涯と功績 


 カナダBC州ベンチレータユーザのリーダ、Jeanette Andersenさんの追悼集を受け取ったのは昨年の今頃だった。2016年5月肺炎のため死去、享年76、16歳でポリオ後遺症によるベンチレータ依存者となって60年、人工呼吸器や車いす開発の歴史とともに歩んできた人生であり、カナダBC州でベンチレータ依存の重度障害者が地域での自律生活を可能にするシステムの開発構築に貢献、かつその当事者の中心的リーダであり続けた。
 彼女の活動と日本のベンチレータユーザに対する貢献は、「はがき通信」でも何度か紹介した。私が調査でバンクーバへいくたびに彼女と会い、ベンチレータの管理や気管切開ケア、さらには医療への事前指示書についても彼女から学んだ。いずれも最先端の知識・技術であり、しかも当事者の必要性と主導で開発されてきた。
 Jeanetteさんは、1950年代ポリオの大流行により当時16歳で罹患、その後遺症として四肢麻痺と呼吸筋麻痺が残った。当時の人工呼吸器は「鉄の肺」、その中で彼女は青春の大半を過ごし、頭上の小さな鏡を通して世の中の動きを見つめてきた。バンクーバ市内にある呼吸筋麻痺専用の病棟があるピアソンセンターで37年間過ごした後、市内中心部に開設されたベンチレータユーザ専用の自律生活ホームへ移住、ポータブルのベンチレータと電動車いす使用で地域生活を開始した。
 彼女が移住したノーブルハウスは居住者が7人、全員ピアソンセンターからの移住者、ノーブルハウスはバンクーバで2番目に設立されたベンチレータユーザ用の自律生活型ホームである。最初に設立されたクリークビュよりもベンチレータユーザの安全性と居住者のプライバシー空間をより重視、このモデルハウスはバンクーバ市の重度障害者専用の最先端ホームであり、諸外国の医療福祉専門家の見学コース、しかし入居者たちは見せ物ではないと見学者の受け入れを拒否、その中でJeanetteさんのみ見学者を受け入れ、ホームの案内を仕事のようにされていた。
 私も先進的な地域人工呼吸管理システムの調査研究にバンクーバへ行くたび、Jeanetteさんを訪問して、人工呼吸管理に関する情報を収集し、気管カニューレの交換、痰の吸引など見学、彼女は他のベンチレータユーザに比べ吸引が頻回で、近くの公園へ散歩に行こうと誘ってくれたにもかかわらず、吸引のため自室に引き返すことがあった。長時間の外出は介助者が吸引、彼女の親しい友人には吸引方法をマスターしてもらっているとのこと、とてもおしゃれで、いつも衣服の配色など凝っていた。スカーフで気管切開部をカバー、呼吸器のチューブはむき出しにせず、おしゃれなゆったりした上着の下に入れ、電動車いすでの坐位姿勢も良く、いつも凛とした佇(たたず)まいの人だった。
 ベンチレータけい損のリーダ、Walt Lawrenceさんによれば、Jeanetteさんの活動を支えた重要人物が2人いて、1人はエンジニアである兄弟、彼女の電動車いすやベンチレータの保守点検を担当されていた。もう1人は、生涯彼女を支え続けたJimmy O'Connell、彼はJeanetteさんの看取りもし、彼女との交流が彼自身にとっていかに貴重であったかと追悼集の締めくくりに登場、短文だが、胸にせまってくるものがある。
 Jeanetteさんは亡くなる1カ月前、大学病院に入院、まもなく食欲喪失、しかし彼女は人工的栄養補給を拒否、家族もその意志を尊重、1週間後、家族や友人に見守られて、静かに息を引き取った。20数年前、彼女は私に事前指示書の作成内容について説明されていた。たとえば自身が肺炎などでICUに入院した場合、医療スタッフがベンチレータの設定値をICUの設定値に変更しないよう文書で指示、ICUの設定値では換気量が低すぎて活力がでてこない、寝たきりの常態化を回避するためとの説明であった。日本では事前指示書に関する情報はほぼ皆無の時代であった。追悼文で、彼女は事前指示書に記した自らの意思を最期の段階でも貫き、家族や親しい友人も彼女の意志を尊重したことを知った。
 1990年代、日本のベンチレータ依存者は自宅生活がやっと、中には退院後も固定式の人工呼吸器使用で寝たきり、携帯用ベンチレータで電動車いすによる移動おろか、気管切開で声も出せず、ひたすら天井を見つめて1日を過ごし、当事者同士の交流は不可能に近い状況だった。
 他方、すでに地域で自律生活を可能にしていたWaltさんやJeanetteさんから、気管切開でどうしたらスムーズに話せるようになるのか、日本の数倍もの換気量や呼吸数の設定値はどのようにして実現可能になったのか、移動時のポータブルベンチレータの電源や安全性のシステムなど、直接懇切丁寧に教えてもらった。彼らはいつも日本のベンチレータユーザの役に立つなら、情報を惜しみなく提供してくれた。
 Jeanetteさんには深く感謝しつつ、彼女の生涯の伴侶、Jimmyさんの追悼文の結び、May she rest in peace.を引用して合掌。(最後に、本追悼集を郵送してくれたバンクーバのK.Uさんに深謝。)

千葉県:松井 和子


<特集! 身体的苦痛について(その2)>


 四肢マヒのかたがたが、日常生活を送る中で抱えている身体的苦痛について、その症例を前号に引き続き紹介させていただきます。





 特集 ◆ 左右上腕の痛み 

左C4右C5、完全マヒ、頸損歴31年、年齢60歳

(1)苦痛となっている部位
 左右上腕

(2)痛みが増強する原因と想定されること
 姿勢、寒さ、自律神経過反射など。

(3)痛みの緩和に効用を感じていること
 服薬(リリカ)

(4)体調の維持と変化
 僕は、痙性(けいせい)に事故後から悩まされました。体が固くなり、ベッド上での痙性による苦痛がきつかったです。
 薬は、最終的にリリカにおちつきました。季節の変わり目は痙性が強く、リリカを1日25mg×12錠にして、ふだんは1日25mg×6錠を服用しています。
 電動車椅子に乗ることも苦痛を伴いますが、体調を保つために少しでも長く乗るように心がけています。ベッド上にいる時間が長いと痙性が強くなるからです。

 60歳前に体験した体調の変化は、耳鳴りや鼻と口の乾きといったことです。これらは、高齢による症状ということで納得しました。
 大変なことは自律神経失調症です。2年前から冷気が苦手になりました。高温多湿な日に、エアコンをフルに使えないのです。周囲の人のこともあるのでとても困ります。体が冷えたと思い、体温を測ると正常なんです。うわぁ〜脳が勘違いしている!
 だから、陽射しに当たり暖まっています。周囲の人はビックリ!しています。3年前まで暑いときは、ガンガン冷気に当たっていたのです。
 検査も受けましたが、異常なしです。今後、この体と上手に付き合っていくしかないですね。
 

宮崎県:k.h.



 特集 ◆ 肩と腕の痛み 

C5、不全マヒ、頸損歴11年、53歳

(1)苦痛となっている部位
 肩まわりと腕

(2)痛みが増強する原因と想定されること
 尿路感染による発熱(熱が上がりきるまで)
 寒さ……ショッピングセンターの生鮮食品売り場は怖い。
 姿勢……車椅子でスマホを腿にのせて操作する姿勢は良くない様子。

(3)痛みの緩和に効用を感じていること
 PTによるストレッチ、入浴。

(4)痛みを緩和する目的で試して失敗したこと
 筋弛緩薬ギボンズ錠の服用で痙縮の痛みは少しやわらいだが、肩や腕の随意運動がほとんどできなくなったため、服薬をやめた。

北海道:mosra

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