はがき通信ホームページへもどる No.134 2012.4.25.
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<特集!「移乗(トランスファー)をどうしていますか?〈旅先編〉」> 


  今号の特集は、「移乗(トランスファー)をどうしていますか?〈旅先編〉」です。旅先(や外出先)では自宅と違いリフターなどの移乗器機がないなかで、移乗をどのようにしているのか。旅先での移乗方法や工夫、介助者へ移乗方法を伝えるコツ、出先用に使用している移乗器機、移乗設備のある宿情報、気を付けていること、失敗談、危険な体験等々、移乗にまつわるご投稿を紹介させていただきます。また、今後〈自宅編〉の特集も予定しています。
 なお、今までの特集(私の入浴・車いすの工夫あれこれ・私の常備薬・尿路管理・頸損と合併症・パソコン入力の工夫・暑さ対策・四肢マヒ者のスポーツ・起立性低血圧・デジカメ撮影法・食事の工夫)および連載特集の「介護する側、される側」は、次号でも引き続きご投稿をお待ちしております。どうぞよろしくお願いいたします。




 特集 外出時のトランスファー 

60歳、C4

 「はがき通信」の皆さんこんにちは。この通信が配布される頃は春爛漫でしょう。寒さが苦手な方が多い頸損者にとっては、冬眠から目覚めたように活発に動き回る季節です。
 プロ野球も開幕して、毎日のプロ野球ニュースを楽しみにしている方も多いでしょう。私と妻も数年に1度ですが、福岡のヤフードームにソフトバンクの試合を観戦に行きます(私より妻がソフトバンクの大ファンなのですが)。野球観戦に行くときは、車の助手席に乗って高速道路で行き、ドームに隣接しているホテルに泊まります。そのようなときにトランスファーのことで工夫している点と、心配事について紹介いたします。
 ふだん病院等に行くときは、車イスのままで乗る軽自動車ワゴンRを利用していますが、遠くに出かけるときはすぐに疲れる私には難しいことでした。また、電動リクライニング車イスが乗れるミニバン車を利用すれば良いのですが、残念ながら妻は大きな車の運転が苦手なのです。
 遠出のためには、やはり普通の車の助手席に乗りたいのですが、当然妻一人で抱えてトランスファーするのは不可能です。それでもどうにか乗れないものかといろいろ探したところ、オープンカーのように天井が開く車(三菱RVR)を見つけ、さらに室内で使うリフターと同じ機能であり、分解して車に積める携帯リフターを見つけました。助手席に乗り終わるとリフターは2つに分解し、車イスと一緒に車の後部に積み込みます。助手席への乗降は10分程度かかりますが、安心してどこへでも行けるようになりました。

●携帯リフター



 次に心配なのは、ホテルでのベッドと車イスのトランスファーです。ビジネスホテルでは、トランスファーの手伝いはまずしてくれませんので、料金は高めになりますがシティホテルに宿泊するようにしています。
 そして、ホテルを予約するときに移乗の手伝いを前もってお願いしておきます。ほとんどのホテルは「いつでもどうぞ」と快く受けて下さいますが、頼む側としては気を使います。夜はあまり遅い時間に頼むと申し訳ないので22時ごろまでに頼み、朝はチェックアウト混雑時は避けて9時過ぎにお願いします。



●携帯リフターで助手席に乗り込みます

 また、車で来るときは折りたためる手動車イスを使いますので、サイドの肘掛は取り外しておき、背もたれ部も後ろに半分折りたたんでおき、介護者が高く持ち上げる必要がなく介助しやすいようにしておきます。そのような状態で、後ろから脇を男性に抱えてもらい脚元は妻が抱えます。
 「抱える際は腕だけで抱えないで、自分の胸に抱え込むようにしてほしい」と頼みますが、上手くいかずにずり落ちそうになったことが多々あります。そんなときは涙が出るほど肩が痛いのですが……文句も言えませんし……。
 このようにホテルでのトランスファーは気を使うことが多いため、携帯リフターを使用できないかと考えました。良い案とばかりに客室に持って行きましたが、ホテルのベッドは高級なせいか床とベッドの下部は隙間がほとんど開いていません。携帯リフターの車輪部が8cmあるため、リフターをベッドの下に入れ込むにはそれ以上の間隔が必要です。
 そこで、ベッドを高く持ち上げればと思い、近所の建設屋さんにベッドの脚に敷く高さ10cmの木の台4個を作ってもらいました。木の台を作ってから数カ月たったころ、ホテルに泊まる機会ができて意気揚々として持って行きました。ところが、ベッドの一脚を上に持ち上げても全体が持ち上がるのではなく、持ち上げた脚のあたりが浮き上がるだけでした。ベッドの構造はよく分かりませんが、ベッドのフレームは単純に金属か何かでできていないようで、無理に敷き込んでもベッドが壊れそうで諦めました。今でもホテルでのトランスファーは悩みの種ですが、気を使いつつお願いしています。
 ただし、ホテルのなかでも「かんぽの宿」の多くは、天井走行式リフターや電動ベッドが備わっており非常に助かっています。トランスファーには力も人手も必要ですが、介助される私たちにも介助する側にも楽な方法があればといつも思います。
 <注意> 天井が開く三菱RVR車は13年間使用し昨年廃車しました。現在は助手席が外に出てくるタイプを検討しています。また、私が使用している携帯リフターは現在輸入販売されていません。

熊本市:K.I.



 特集 旅先での車イスからベッドへの移動について 

C4

 わが家では年に1回、家族旅行に行きます。あまり遠くには行けませんが、娘は楽しんでくれているようです。帰宅時、見慣れた家の周りの景色が見えると、「きょうもちがうお部屋で寝たい」と言うほどです。
 旅行するにあたって、いろいろ確認しておかなければならないことがあります。旅行先の施設やホテル内に入れるかどうかです。
 たとえばレストラン。ここで食事したいと有名なお店をチェックしていても、行ってみたら玄関の間口が狭くて入れないとか数段の階段があるなんてことはよくあります。
 ホテルに関しては、最近はどこもバリアフリー室があって、ネットで格安の部屋を予約していても、空いているとバリアフリー対応の部屋に換えてくれることもあり、得した気分になります。
 ですが、一番の難関は車イスからベッド、ベッドから車イスへの移動(トランスファー)です。シティーホテルなら事前に電話するとたいていは「敷地内でしたらお手伝いいたしますのでお申し付けください」と答えてくれ、乗り降りのたびに内線でフロントに電話をすると、手伝いに来てくれます。
 でも、最近は妻もコツを覚えたようで、ひとりで私を車イスからベッドへ、ベッドから車イスへ移動させてくれるようになりました。
 「いつまでできるかわからないよ」
 と言っているから、かなりの体力を使うんだと思います。
 ベッドから電動車イス移動は、まず、車イスをできるだけベッドに寄せます。車イスとベッドの隙間に枕を詰め、隙間をなくします。枕はホテルにある枕を使わせてもらいます。移動の際、隙間に落ちてしまわないようにするためです。
 次に電動車イスのハイバックの部分を外し、少しでも乗りやすいようにします。それから妻がベッドに寝ている私を起こして座らせます。私ひとりでは座位を保持できない(C4)ので、妻は私を支えながら倒れないように慎重に後ろにまわります。真後ろにまわった妻は脇から手を入れ、私の両手首を握ります。そしてそのまま足を踏ん張って車イスへ移動です。このとき、さきほど枕で埋めた隙間が役に立ちます。約42kgの体重の私なら枕の上に乗っても問題ありません(何kgまで支えられるかは不明です)。このとき、妻は腰をひねって痛めないように注意しなければなりません。だから、「いつまでできるかわからないよ」と言ったんだと思います。
 車イスからベッドへの移動も同じ要領ですが、高低差がある場合、低い方から高い方への移動は難易度が高くなります。楽しい旅ですが、いろいろ気を配らなければならないし、妻は体力も使わなければなりません。
 今後、室内には簡易リフト、屋外にもスロープや簡易スロープなどの設置や携帯などバリアフリー化が進むことを願うばかりです。
 

愛知県:Y.S.



 特集 航空機座席への移乗 


 飛行機では機内席に移乗させられます。電動車イスを航空会社に託すことになります。私の電動車イスですが、梱包(こんぽう)例として参考になればと飛行機を利用するときいつも先にこの写真(↓)を送っています。

 


 搭乗口までアイルチェアという機内通路ぎりの車イス(機内用の車イス)に乗り換えます。座位の取れない私にとっては、きわめて不安定なアイルチェア。そのアイルチェアから機内席へ移乗で、やっと、飛行機に乗れます。もっとなんとかならないかなぁ〜。

●アイルチェア(機内用車イス)


東京都:T.S.



 特集 gorillaのトランスファー 


 受傷当時(1979年)私の体重110kg、身長184cm。毎日、腹一杯飯を食っていました。そんな私がC4になって、トランスファーが大変な重労働になった訳です。
 入院当初、病棟の看護師5人で抱えてもらっていました。「若い女性に抱えてもらっていいネ」と妻のマリちゃんは言っていました。そのうちに廊下を通りかかった男性医師や男性職員にも声をかけ、トランスファーを手伝ってもらうことが多くなってきました。力持ちの女性もいましたが、足元がふらつく人も多く怖かったこともありました。
 そんなとき、ひとりの看護師さんがバスタオルを使って移動させると言うのです。体の下にバスタオルを敷き、その端を持ちながら移動させる方法を考えたのです。これが、安定していて怖さを全く感じることはありませんでした。それからバスタオルを使っての移動が続きました。これは33年前のことです。
 リハビリテーションセンターに転院してから、抱えてもらうことが少なくなっていきました。それは、床走行式リフトを利用するようになったからです。床走行式リフトは、アメリカ製のステンレスで作られた物で頑丈でした。体の下にスリングシートを敷いて、その四隅の金具に鎖でひっかけて、油圧ポンプのレバーを上下に動かすと体が持ち上がります。当時は電動ではなく、手動で動かすものでした。最初は怖さを感じたが、事故は一度もありませんでした。ただ、スリングシートが問題で塩化ビニール製のスリングシートが敷きぱっなしになってしまいます。お尻や背中が蒸れて皮膚がふやけて褥瘡になりやすいのです。スリングシートを柔らかいメッシュに作ってもらうことで解消することができました。今でもそのメッシュのスリングシートが、移動するのに大活躍しています。飛行機の座席やホテルのベッドなどの移動もスリングシートを持って行います。
 最近では、ビジネスホテルでも移動を手伝ってくれる所が多くなって来ました。特に、体の大きい人が車イスを利用するようになると、トランスファーの問題が大きな障壁となります。どこへでも携帯できる移動機器の開発が望まれます。
 情報です。昨年12月に横浜市のグループホームの天走行式ホイストから火災発生事故がありました。充電プラグ内でショートし発煙・発火したそうです。製造メーカは、「大邦機電有限会社」です。ご利用の方は点検をしてみたらいかがでしょうか。

横浜市:M.I.



 特集 宿泊時のベッド移乗用、こんなリフトがあったら 

受傷歴25年

 障害を持って25年がたちますが、個人的な旅行、障害者団体の会議・交流会やリハ工学カンファレンスなどで宿泊を伴う外出が多くなり、最近では年に4〜5回ほどホテル等の宿泊施設に泊まることがあります。そこで困るのが車イスからベッド、ベッドから車イスへの移乗です。介助者ともう1名の介助が必要で、ホテルの方が手を貸してくれることもあるが、「お客様にもしものことがあったら」「お客様には触れられない」など断られることが多く、気兼ねなく好きな時間に移乗できればもっと旅行が楽しくなるのに……と思っています。
 現在、日本で発売されているリフトの中には組み立てその場で使えるものもあり、一度だけレンタルして旅行先で使ってみました。しかし実際には家庭の居室で組み立てて使うものであり、持ち運びには重く不便で、組み立てにも多くの時間も必要で1回使っただけであきらめました。また、何度か床走行式のリフトをレンタルして使用したが、ベッドによってはベッドの下に床走行式リフトのキャスターが入らず使えなかったことや、ジュータンの上では非常にリフトの動きが悪く上手くいきませんでした。



 このような宿泊先での移乗の問題に関しては多くの障害を持つ友人たちから、同様な意見がありました。特に重度な障害を持つ方の中には、この問題で宿泊を伴う外出を避けている方もいました。ホテル側の障害を持つ方への配慮やユニバーサルデザイン(リフト完備)の問題も重要ですが進んでいない現状も確かです。
 [こんなリフトがあったら!]
 a.分解できる、軽い、組み立てが容易
 宅配便等であらかじめ宿泊先に送り、女性がひとりで簡単に組み立て、使用、分解、キャリングケース等に収納ができる程度のもの。
 b.強度の問題
 体重100kgまでのユーザーでも安全が保たれるもの。
 c.充電式(巻き上げ部分)
 一度の充電で2〜3泊の宿泊に十分対応できるもの。または、宿泊先で充電可能なもの。
 新しい福祉機器を開発・販売するには非常に費用、時間、技術が必要です。ユーザーのニーズに合った機器がすぐに完成するとは思えませんが、ぜひニーズがあるということをユーザーから発信していく必要は大きいと思います。
 【追加情報】
 日本のあるリフト販売業者が「持ち運び可能な組立式介護リフト」を開発中であることを耳にし、実際に見に行ってきました。想像していたものと違うものの、必要としている人がいることを理解し開発に動いてくれたことは本当に嬉しく思います。まだまだ改良改善が必要ですが、今年の国際福祉機器展に出展されるそうです。展示を楽しみにしています。

 

広報担当:麸澤 孝

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