【特集!「四肢マヒ者のデジカメ撮影法」】
今号の特集は、「四肢マヒ者のデジカメ撮影法」です。私たち四肢マヒ者のカメラ撮影は、至難の業です。介助者に頼むと思っていた写真と違うことも多々あり、なんとか自力で撮影できたらいいのにということがあるかと思います。また、工夫しながら撮影されている方もおられると思います。
自力で工夫しながら写真を撮影する方法や苦労話や事例、介助者への要領よい頼み方、流用できたり掘り出し物の役立つ器機、うまく撮影したお気に入りの写真の掲載も含めまして、情報交換のためにご投稿をご紹介させていただきます。
なお、今までの特集(私の入浴・車いすの工夫あれこれ・私の常備薬・尿路管理・頸損と合併症・パソコン入力の工夫・暑さ対策・四肢マヒ者のスポーツ・起立性低血圧)および連載特集の「介護する側、される側」は、次号でも引き続きご投稿をお待ちしております。どうぞよろしくお願いいたします。
[特集]◆デジカメ撮影法あれこれ・そこ いや〜ん
皆さんお元気ですか。天気の変動が激しく体調を崩されている方もおられることでしょう。ご自愛ください。向坊さん、Nさん、年賀状を出せなくなった友がまた一人増えましたよ。Sのトドさん悔しいです。受傷して33年でしたかお疲れ様でした。F君! 原稿依頼の電話を受けたとき元気な声を聞けて嬉しかったです。うちのお袋も同じ気持ちだったのか先日さっそくお宅にお邪魔したそうでね。スミマセンでした。活発で優しい弟さんとハツラツとしたお母さん、F君のエネルギーになっているのですね。ご家族に会えて本当に喜んでいました。
趣味のカメラは20年近くになります。フィルム一眼レフカメラを悪戦苦闘、写しては失敗の毎日でした……。まだまだですが撮影法参考になれば幸いです。
各メーカーのカタログをいろいろと取り寄せてキヤノンのカメラと出会いました。EOSイオス55、1台を壊れるまで使い込み2台購入しました。手の代わりに棒をくわえてボタンを操作します。1動作1ボタンの使い勝手の好い55が相棒になりました。
●蝉の向こう側に脱け殻が。産まれたばかりでしょうか。近づいても逃げもせずに木に。蝉の短い生涯を知っているから、ソッと誰にも捕まってほしくありませんね。
デジタルカメラが日常的に普及するまでフィルムカメラを使い続け、頑固にデジカメを拒否していました。今ではデジカメの実力を認めざるをえなくなりました。デジタルになって多くの人が写真を身近に楽しめるようになったと思えます。手軽さと写しやすさ、手が不自由な私たちでも楽しめる道具になってきました。
以前はファインダーの被写体を確認して露出、絞り、背景のボケ、ピントを合わせてシャッターを切っていました。今ではファインダーを覗けないときでも、とにかくシャッターを切ってみる。撮れていなければ画像を削除して撮れるまでシャッターを切る。いろんな角度から被写体を何枚も何枚も写して、気に入ったモノだけ残す。景色も同じようにファインダーで切り取って何枚も写しておいてから、これだと思う画像をプリントします。フィルムカメラでこんなことをしていたらプリント代だけでも何万円もかかりますね。画像をパソコンに取り込んで自分で修整してプリントすれば写真用紙代だけで済みます。パソコンとプリンター、カメラ等がすでにある場合ですが。
●川岸で遊んでいた子どもたちに 気を付けて遊ぶように注意したら、「えい!やーっ」と悪人にされてしまいました。可愛いですね。一枚撮らせてもらいました。(撮影=筆者)
今使っているカメラはキヤノン7Dデジタル一眼レフカメラです。リモートスイッチを口にくわえてシャッターを押すために、リモートスイッチが装備したカメラとなると一眼レフになります。
どうしたら好い写真が撮れますか?と質問されることがあります。そんなときは撮りたいモノをできるだけ大きく写しますと答えています。写したいと思う被写体は人によって違いますから自分が心をひかれた感動したモノを多く写しこむようにしています。
撮影テクニックをここに書き出すと止まらなくなり原稿が束になりそうですので止めますが、携帯カメラやデジカメが手軽になってもやはり写すのが困難ですね。シャッターを指で押すことができないときの裏技を一つ、セルフタイマーを使います。10秒間のあいだに被写体にカメラを向けます。タイマーが切るころにカメラを静止します。2〜3秒経ってからカメラを降ろします。
シャッターが切れて、すぐに動かすとブレた写真になりますから気を付けてください。
●ヘルパーさんに私の写真を撮ってもらいました。仕上がりを自分でイメージして撮ってもらう場所や光の方向を考えて自分でその場所に移動します。集団写真を撮る場合は、デジカメの感度をISO・800以上にセットして、絞り(レンズから入ってくる光量の調整やピントの合う深さ)を深く、シャッタースピードも速くして写すと思い通りの写真になりますよ!
私がカメラを構えた写真を同封しました。車イスのテーブルにカメラを固定しています。市販のカメラ台を改造してますから参考になりませんが、便利なグッズを探すのも楽しみの一つです。アングルを変えるときにカメラに頭突きしたり、頬にカメラをあてて動かします。カメラは傷だらけです。カメラを磨きながらいつも謝ってます。私の身体の一部になっています。撮影に夢中になって夏は熱中症、冬は身体が凍え震えながら家に戻ることもありました。
写真を撮りだしてから人との交流も広がり、人物写真は時々ですが撮影依頼もあります。モデルが喜んでもらえる。そんな写真を撮り続けていけたらと思います。
注意※撮りたいモノを大きく写すと何行か前に書きましたが女性の場合は若いガールフレンド・彼女・ご婦人限定ですから(^_^)v。新しい楽しみをみつけられますように。不運な人生ですよね。でも小さな楽しみを重ねて今日を生きぬきましょう! 私もまた写真を見てもらいます。投稿しますね!
福岡県:K.M.
[特集]◆ビデオで動画も静止画も
フィルムカメラの販売台数をデジタルカメラが追い越しました。現像の手間がいらないことと、撮影ミスをしても何度でも撮り直せることが大きな理由でしょうか。
でも、初めて購入したデジカメは30万画素。大きくて持つことはできませんでした。2号機こそは自力で撮影できるものをと探しました。
損傷レベルはC4で、右腕が何とか顔まで上がります。そこで見つけたのがFUJI FinePix2700。今はもうほとんど見かけない縦型機です。
たくさんあるデジカメのうちで唯一、このカメラだけ僕の指にフィットして持つことができました。当時はまだ軽量化されておらず、もちろん握力がないので滑り落ちる危険もありますが、長めのストラップを付けて滑り落ちてもいいように首からぶら下げています。
シャッターはタイマーを使い、顎で押してから約10秒間あるのでその間に被写体に合わせます。液晶画面が付いているので、被写体に合わせるのも楽です。カメラを持った状態で手を顔まで持ってくるのは重いのですが、液晶があれば高く持ち上げる必要もありません。
怪我をする前の写真が数枚しかないので、怪我をしてからは写真をたくさん撮るようになりました。いつもは撮ってもらうばかりでしたが、このデジカメの登場で写す側にも慣れたので楽しめました。でも、いかんせん、画質が230万画素と今ではもう「悪い」という部類のもの。そこで後継機のFinePix F610。2700よりも軽く、長時間の撮影もできるようになりました。ただ、一度セルフタイマー(10秒)を使って撮影すると再度セルフタイマーを入れ直さなければなりません。口にスティックをくわえ、小さなボタンを押すのは大変です。シャッターチャンスを逃すこともしばしばありました。まだ現役で使用していますが、子どもが生まれたのを機に、新機種を探しました。
●三洋電機 Xacti DMX-CG11を手に持って撮影
動画も高画質で撮れるのを探していましたが、そうなるとビデオカメラになってしまいます。さすがにビデオカメラは持てず、店頭で見つけた三洋電機のXacti DMX-CG11。ハイビジョン対応で画質もまずまず。静止画は1000万画素。手に持ってみると実にしっくりきました。現在は後継機が出て、さらに軽くなりましたが、それでも十分な軽さと持ちやすさです。価格は当時で約1万8,000円。まあ、何とか出せるだろうという価格。
小型なので、ボタンは小さいのですが、マウススティックで操作。難点は、バッテリー容量が少ないことと静止画の画質が1000万画素にしては他の1000万画素クラスに比べると劣ること。バッテリーは予備を用意(800円程度)。静止画はこんなくらいかなと諦めています。
ただ、手軽に高画質の動画を撮影できるのは魅力です。娘は三歳。その娘の決定的なシャッターチャンスを逃さないように手元に置いています。
さらに8GBのSDカード(TOSHIBA:2,000円)を購入し、2個のバッテリーで約2時間の撮影が可能です。
人を撮る撮影以外に使う手段としては、自分ではなかなか行けない場所を撮影してきてもらうことがあります。行きたい映画館の前の段差がどのくらいあるかを、友達が行ったときに撮影して来てもらって確認したり、プールの更衣室が使えるかどうかなど、使い勝手はいろいろありそうです。とても役に立つことも多いです。わざわざ写真に撮るほどでもなかったなということもありますが……。
最後になりますが、撮影した動画や静止画は編集(動画と静止画を組み合わせたスライドショーなど)しています。撮影よりも編集の方がおもしろいときもあります。スライドショーはなかなか好評で、知人から頼まれて作ることもあります。
愛知県:Y.S.
[特集]◆たのしい場面を撮る
最近のデジタルカメラはほとんどオートフォーカスなど私みたいなアナログ人間には分からないので、介助者に任せきりになってしまうのです。楽しい場面に遭遇したら撮るようにしています。
東京都:T.S.
[特集]◆めげないヒヨドリ
全身麻痺の身で写真を撮る方法に関しては、すでに「はがき通信」113号で述べた。かんたんにいえば車イスに三脚をのせてカメラを眼前に置き、シャッターはレリーズ(デジカメではリモートコードという)で押すという方法。その後改善したことといえば、ひじかけの外側にマジックテープで付けていたレリ−ズをヘッドレストに移したことだけ。感覚のない手で押すのはシンドイので感覚のある後頭部をつかうことにした。
(撮影=筆者)
さてここに掲げた写真について述べよう。在宅になってから窓辺に木を植え、夏は障子に映る葉陰をたのしみ、冬は枝にミカンを刺してメジロを寄せた。ヒマワリの種は一年中筒状の給餌器に入れてあるからこれにはシジュウカラやカワラヒワが来る。水浴び台も窓辺に置いてある。めったに来ないウグイスがここで水浴びをしたときは息を呑んだ。寝ながらのバードウォッチングだ。
ところがヒヨドリには困った。ヒヨドリもミカンが好きなのだが、こいつは小鳥とはいえない。メジロなら細いくちばしでチクチクとつついているのか吸っているのかミカンの切り口に小さな食(は)み跡を付けるだけなのに、ヒヨは体が大きいからあっというまに平らげてしまうし、ガブリと食らいついて引っ張るものだから、ミカンが枝から抜けて落ちてしまう。
なんとかヒヨに食わせまいといろいろ工夫を重ねたあげく、ヒヨが止まれるような足場がなければいいという結論に達した。長いS字フックの先にミカンを刺し、それを枝先のなるべく不安定なところに引っかけた。メジロはミカンそのものにつかまって食べることができるから迷惑しない。
しかしヒヨがとまどったのは最初だけで、またたくまに食う方法をあみだした。ミカンの下方から飛び上がり、ホバリングしながらミカンの断面をつつく。何度か失敗するのだが、めげずにジャンプをくりかえすうち房に食いつくことに成功、そうすると驚くなかれ、羽ばたきをやめ自分の体重で房を食いちぎるのだ。なんとしても食うぞというその執念と工夫には敬服の念さえわいてくる。
だからこの写真は落下から羽ばたきへ移る寸前の一瞬をとらえたもの(背景は隣家の壁と塀)。ニコンD80の「スポーツ・モード」と「連写モード」を併用して撮影した。動くものを写すときのモードだが、もし本格的に羽ばたいていたら、とてもこんなに羽の一枚一枚までくっきり撮ることはできないだろう。
わたしの撮影方法では移動するもの(たとえば走るひと)をカメラで追いながらシャッターを押すことはできない。それをするためには電動車イスの操作とカメラの操作を同時にこなさなければならないからだ。あらかじめ構図を決めておき、その枠の中で動くものをとらえるしかないと思う。この写真は室内からガラス戸を開けて撮ったということがわかるような構図にした。じつは左側に障子があり、それを入れればもっと意図がわかりやすかっただろうと反省している。
ちなみに「常臥(とこぶ)しの我が身忘るる鵯(ひよ)の舞」という句を添えて、朝日新聞の「第11回アスパラ写真俳句塾」(森村誠一選)に応募したところ最優秀作品に選ばれた。写真にかぎらずコンテストはいろいろある。応募すればこういうまぐれ当たりもないではない。
東京都:F川
[特集]◆外に出て写真を撮ろう
昔むかし、ある写真家に弟子入りしたことがある。毎日朝早くから夜遅くまで、やることといったら倉庫のようなスタジオに入ってセットを組んだりバラしたり、一日中暗室に入って大量の白黒写真を焼いたり、そんなことばかりやらされた。弟子といっても3人も4人も先輩がいたので要は雑用係である。もちろんカメラにさわったり、シャッターを切ったことなど1度もない。
1年ほど頑張ってみたが結局自分にはむかないと思ってやめた。まるまる1年、棒に振ったようなもんだが、ひとつだけ貴重なタカラをもらったと思っている。大学の同好会で写真は撮っていたが、プロの白黒写真の素晴らしさには舌を巻いた。白から黒に至るグラデーションが見事に現れていて、素人写真との格段の差を見せつけられた。「写真ってこんなにきれいなものか」と開眼させてもらったことが、その後の人生に活かされたかどうか?
20年ほどたって、弟子仲間の1人が赤坂にスタジオを構えていると耳にした。ビルの1階のスタジオにはフランス製のジナーという4インチ×5インチのカメラが据え付けられていた。ところがカメラの後ろから電気コードが伸びており、ノートパソコンに接続されている。「なんだこりゃ」とすっとんきょうな声を上げると、同僚は「お前知らねえのか」とこれまたびっくりしたような声である。
写真はフィルムに撮って現像するものだとばかり思っていた。デジカメなんて素人がお遊びで使うものと決めてかかっていたが、プロの世界まで侵入していようとは…。撮影した映像はそのままコンピューターに取り込み、色や形を修正してCDでクライアントに納品する。ということはコンピューターでの色調やフォルムの調整が主な仕事となり、いずれデザイナーが写真家の仕事をやるようになるなと直感した。そのことを告げると同僚も思い当たるフシがあるようで、暗い顔になった。
コンピューターはグーテンベルグの印刷機以来の大発明だと思うが、デジカメの普及はなかでも際立った文明改革ではないだろうか。携帯電話の中に入ってだれでもいつでも写真が撮れる。事件現場を撮影するなんて、今ではだれにもチャンスがある。「オメーラ、何かっつーとリンホフとかハッセル(いずれも外国製高級カメラの名前)とか抜かすが、写真なんてカメラがなくとも撮れるんだ」とは昔の親方の口癖だが、どんなアングルで撮ればよいか常々感覚を磨いておけ、というような意味だったと今になって思う。
時々無性に写真が撮りたくなる。こんなに便利な時代になったというのに、撮りたいときに指が動かない。だが諦めることはない。「写真なんてカメラがなくとも撮れるんだ」という言葉が思い出される。簡単になったからこそシャッターはだれにでも押してもらえる。要はどんなアングルで撮るかを指示してあげればよいのだ。被写体はどこにでも転がっている。
技術的なことは、先日、朝日新聞の大きな賞を受賞されたF川さんにおまかせするとして、さあ外に出て、写真を撮ろうではないか。
千葉県:T.D.
[特集]◆とにかくたくさん撮る
デジカメは便利なものなので、その日の日記代わりに何枚も撮ります。あるいは依頼します。付添人が閉口するくらい。でも、時刻とかは気になりませんね。写真を見ればあの時はどんなことをしていたかわかります。
じつは写真についての工夫はほとんどゼロです。自分で押すことができないので、付添人任せ。本来ならば機器の操作くらいはわかっていないとダメなのですが取り扱いも、その場限り。困ったものです。ただ、手振れ防止機能がついているので付添人にはその設定だけはしてもらいます。1回ごとに設定なので、これまた「その場限りでも」ボタンを押して設定します。
Iさんから聞いたのでは、1ストラップを首にかけてもらう。2両手を伸ばし、ヒモが引っ張られてカメラが固定する。3半押しして、ピントを合わせ、押す。これなら固定されてOKです。
●今年のを2枚ほど。京都駅から徒歩20分の機関車公園から。
他に気を遣うのは付添人の様子。「はがき通信」の懇親会でもおわかりのように、付添人が全体写真を撮る時に「撮ります」といって、手を挙げてくれれば目線もそちらへ行きます。だが懇親会に何回か来ている「なじみ」のある人なら安心。以前、頸損会のバーベキューに参加してくれた学生さんにお願いしたら、正面から撮らずに後ろ姿だけ。「気後れしてしまって」良い絵が撮れませんでした。愛嬌のある女性(男性)、あるいは友達同士で来ている人に「写真係り」でといって依頼します。動きやすくなりました。
それと手振れを見越して、同じ絵を2、3枚撮ります。データ容量はでかいので1日にならば十分に持ちます。設定は標準が1M(1280×960ピクセル)くらいでしたか。ややそれより落とします。5段階設定で3が標準なら2程度の画質です。
デジカメ自体も水没しても、落下しても良いカメラを選びました。他の人に任せるので、なにかあっても大丈夫なようにです。画質2でも何枚か撮ればデータ容量が多くなります。画像も大きいのでフリーの縮小ソフト(縮小専用。)を利用しています。単純なので使いやすいです。
ひとりひとりに送るのも良いですが、写真やファイルを共有・転送・保管できるサイトにアップするのもひとつのやり方でしょうか。いまひとつやり方がわからないので勉強中です。
宿泊の時は充電器は忘れません。ケータイも今年買ったのでカメラ機能も充実しています。でも、こちらも使い方がいま一歩。
とにかくデジカメで何枚も撮るのが楽しいです。
神奈川県:F.H.
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