向坊さんが亡くなられる直前、「はがき通信」98号に、「頸損腹はきついよ」という一文を寄せられている。腸の働きが弱くなり、排便、排ガスがスムーズにいかなくなり、腹部膨満と吐き気など不快な体調に悩まされる状態を「頸損腹」と呼んで、頸髄損傷者にとって大切なテーマであると指摘されている。向坊さんご自身が当時「大変な毎日」と書かれている。吐き気とげっぷに悩まされる状態はおそらく、癌の進行に伴う腹水とも重なり合ってそうとうにお苦しかったに違いない。その中で彼は、加齢とともに悩みの種となる「頸損腹」を工夫によって乗りきろうと呼びかけている。彼は、「はがき通信」に投稿される多くの頸損者が「ガス溜まり」を共通の特色とする腹部膨満と排泄不調を抱えていることをよくご存じだった。
私も長い間「頸損腹」に悩まされてきた。しばしば私のお腹は妊娠7〜8ヶ月ぐらいの膨満状態となる。2006年にはその最終局面かとも思われる経験を3度した。今年はこうした事態を回避する自己管理の方法を見出したい。私の「頸損腹」報告である。
[ガス溜まりとガス抜き]
私は体重35〜39kgで痩せているほうだが、腹部のみは豊満かも知れない。正体はガスである。自力でおならは出ない。お腹がガスでせり出すように膨らんでくると脚部も突っ張りだし苦しくなる。このガス対策として私は手っ取り早く物理的に抜く工夫をしてきた。「ガスコン」などガス抜きの薬や温湿布はほとんど役に立たない。まず左側臥位(横向きの姿勢) をとり、胃部を押して胃に溜まった空気を押し出すようにしながら努力してわざとげっぷをする。3回ぐらい繰り返す。少しでも空気が抜ければ楽になる。さらに、ナースかヘルパーに頼み、摘便の要領で肛門を少し押し開けるように空気の通り道を作ってもらいながらS字結腸から直腸に溜まっている空気の固まりを押し出すように腹部を強く押してもらう。コツがいるが慣れればかなりガスが抜ける。便汁を伴うこともある。うまくいけばお腹がすっきり平になる。グリセリン浣腸による排便のときもまずガスを抜いてから取りかかると比較的スムーズに排便を達成できる。ガスが詮をしている場合が多いからである。
[麻痺性イレウス]
ところが、昨年の1月、この状態がにっちもさっちもいかなくなる経験をした。1度目のイレウスである。胃部も授乳後の赤ちゃんのようにぽっこりと膨らみ、お腹も臨月状態、げっぷをしようとすると吐き気がくる、という状態になった。いつものガス抜きもうまくいかない。そこでナースは排ガスと排便を目的にグリセリン浣腸を試した。使用したグリセリン液は110cc。ところが、直腸出口に溜まっていた便汁がほんの少し出ただけでグリセリン液も出てこない。ウンともスンともいわず腹部膨満はすすむばかり。ついに嘔吐が来た。冷たい水を飲めばすっきりするかと思い、水を口に含んだ途端さらに嘔吐。聴診器をお腹に当てたナースは「腸が動いていない」という。これは完全に胃と腸がストライキを起こしている! ちょっとあわてた。そこでホームドクターにSOSを入れた。往診まで2時間かかったがその間この状況に変化はなかった。医師は、聴診器で確認して、「多分これは麻痺性イレウスですね」といった。麻痺性イレウスとは、腸管の運動機能麻痺によって腸管内容物の通過障害がおこる病状のことである。
そこで、対応は、経管栄養補給に使う胃管チューブを肛門からガス塊があるあたりまで挿入し、お腹を押してまずガスを排出することから開始。やがてグリセリン浣腸液と混ざり合った便汁もチューブを通って排出され、次いで泥状便も出てきた。押すだけでは出なくなったとき、管に装着した注射器で吸引して泥状便を出せるだけ出すという対応となった。吸引によって腸壁に負荷をかけないように1時間くらいかけてゆっくりと出す。お腹がかなりへこんで、聴診器で腸の動く音も少し聞こえるようになったとき、吸引を停止。次の処方として、胃腸の働きが弱いため、吐き気止めでもあり、胃腸蠢動(しゅんどう)剤でもある「プリンペラン」という薬剤10mgを静注し、まる1日絶飲食で補液点滴することになった。ラクテックという電解質主体の補液剤の点滴をセットして医師は帰った。その後12時間かけて1,500ml点滴。プリンペランのせいか1晩に5回ほど便失禁があった。
1日絶飲食、便失禁5回、排尿700ccと差し引き脱水にならない程度にバランスといえようか。医師は、「お腹を空にして胃腸を徹底的に休ませてリラックスしてください。よく眠るようにしてください。睡眠薬服用はOKです」といった。餌をやらなければ胃腸は働かない。自律神経が崩れ、ストレスで弱りきった胃腸を徹底的に休ませる・・・か。ウム納得・・・。1日半絶食した後最初に飲んだポカリスエットはおいしかった。お粥から徐々に食事を再開。絶食から3日あけてグリセリン浣腸で排便を試みた。スムーズに便が出た。しかも、5回も便失禁し、絶食し、お粥程度しか食べていないのに、どこに隠れていたのか予想外に大量の便が出たことにナースは驚いていた。恐らく、腸が自然な機能を取り戻したことで、残っていた便や宿便が直腸まで運ばれたに違いない。これで万事OKとは行かなかった。
2度目のイレウスが春の季節の変わり目にやってきた。再び臨月状態のお腹を抱えてホームドクターのお出ましを願った。手順は前回と同様だが、再検討事項は3点。(1)胃管チューブでガスや便汁、泥状便を可能な限り排出し、プリンペランは使わない。絶食と点滴だけで行く。強制的に胃腸を働かすことはそれ自体ストレスをかけることになる。ダラダラと便失禁が続くと度重なるその後始末で体動痛が増悪する。仙骨部の褥瘡にも悪影響がでる。これらを避けたい。(2)腸内に滞留する泥状便はガスを発生させやすいので、それまで服用していた酸化マグネシウム(カマ)を止めてみる。それまで便秘対策として便軟化剤のカマを真面目に服用してきた。たびたび「巨峰」のような硬便が栓をする便秘に悩まされていたためである。しかし、かといって必ずしも排便が楽になったわけではない。確かに酸化マグネシウムの副作用には麻痺性イレウスがあげられている。(3)その代わり整腸剤(例:ラックビー、ビオフェルミンなど)、胃腸薬(例:FK散など)を適宜利用する。(2)、(3)はその後の改善要因となったが、油断するとガス溜まりに難儀することになる。
3度目は、残暑厳しい8月末から9月の始めであった。排泄のリズムも狂っており、冷たい飲み物を一気呑みすることが多かったせいかもしれない。車イスに座位を取るどころではなくベッド上での座位も辛いほどガス溜まりが大きくなり始め、妊娠7〜8ヶ月状態であった。このときは医師を呼ばずに自分で対応しようと試みた。
まだ腸が動く音は聞こえ、吐き気はなく、水分を飲める状態の段階で絶食に入った。こまめにヘルパーにガス抜きをしてもらった。ポカリスエットのお湯割りと温いお茶、水を交互にいい加減に飲むだけにした。整腸剤のラックビー(1g)を1日3回服用した。胃管を常備していたが、その世話にはなりたくはなかった。1日絶食し、睡眠薬を増やしていつもより長時間眠ることで、お腹は平になった。翌日はハーゲンダッツのアイスクリーム半カップでのカロリー補給から始めた。お粥やうどんなどお腹に優しそうなところから少しずつ食事再開である。翌日の排便は、スムーズに運んだ。
脊損は自律神経がこわれており、特に頸損では交感神経と副交感神経のバランスの崩れは強く現れる。その上加齢やストレスによって副交感神経の働きは弱くなり、消化器官の働きも弱くなる。頸損腹はその結果でもあろうか。麻痺性イレウスはその極致かもしれない。窮地を脱するための手の1つは、薬など使うよりも単純な物理的な方法でガスや便汁を排出させ速やかに上昇した腸管内圧を除圧してストレスをとること。とりあえずは胃管チューブを用意しよう。ガス抜き用ネラトンカテーテルというのもある。その2は、絶食して胃腸を徹底的に休ませる。ということになるかもしれない。そしてなによりもリラックスだろうか。
東京都:Y.A.
こんにちは! 今年は暖冬でほんとうに暖かいですね。雪深い地に住む私は大変喜んでいましたが、おっとどっこい! 花粉が例年以上に早く飛び始め、花粉症の私は2月に入ってからうんざりです。
花粉症の要因となる植物は、スギ以外にヒノキ、ヨモギ、ブタクサ、イネ・・・といろいろ種類があります。受傷前から花粉症はあり、私はブタクサ、イネの反応が強いようで、春よりも秋に花粉症状が出ていました。それが受傷後、食べ物アレルギーと共にいろんな花粉やハウスダスト、動物と反応が出るようになり、365日アレルギーの薬「エバステル」を服用しています。大好物の「うに」が食べられなくなったのは大きなショックで、死ぬ2時間前におもいっきり食べよう、と思っています(笑)。
医師からは、「花粉症にしては珍しくスギ反応がありませんね」と言われていたのに、今では体内のスギ花粉対応許容量満タン状態です。今の住居環境がスギやヒノキに囲まれているから仕方ないと言われました。鼻水、鼻詰まり、くしゃみ、咳、涙から始まった春のスギ花粉症状(鼻詰まり点鼻薬は何種類か試してみましたが、私には「トーク」が合うようです)。
それが4年前、口の中のすごい痒みで夜中に目覚め、それ以来、皮膚、目、耳、鼻、喉、口の中の舌、歯茎まで痒みが伴うようになりました。目には朝晩、点眼薬「リボスチン」を点しておけば、何とかしのげますが、他については痒み止め「ポララミン」を服用すると異常な睡魔に襲われ困ったので、すぐ止めました。「冷す」か「我慢」しかありません。
この痒みは、例年4月の約1ヶ月間だったのにもう症状が出ています。人の出入りや、窓を締め切っていても強い風が吹いた時、外出した夜は症状がひどくなります。痒みでおもいっきり掻けないのと、たらーっと勝手に流れて来る鼻水を思うように拭けないのは辛いです。
広島県:M.K.