頸損者による骨折経験者が意外にも多いことが、周りの仲間や医療関係者によって知ったのが今から3年前のこと。実は私もその骨折経験者でした。今年で頸損歴17年になる私も、頸損者の多くが経験する合併症として、褥瘡(床ずれ)、膀胱炎、膀胱結石、うつ熱等の経験者でもあり、今後もこれら予防に努めなければならない身である。そんな数ある合併症の中でも、外傷性によって合併症を引き起こしてしまうのが骨折ではないでしょうか。
私の骨折理由はこうである。年の瀬に近づく12月の夜に商店街を電動車イスで走行中に、前から倒れた自転車が突っ込んできたのである。私の前を走っていた自転車に、正面から来た自転車が避けきれず、そのまま前の自転車と衝突。その勢いで前の自転車が私の足元にぶつかってきたのである。その衝撃は意外にもなく、足元のステップにぶつかっただけでした。その場で怪我の確認をし、なんとも異常がなかったので私は謝る男に文句(注意)を言い、その場を立ち去りました。
その後、外食先のお店でなんとも変な頭痛を起こし、首と肩から冷や汗が出てきたのである。最初は泌尿器のトラブルかな? と思っていたのですが、その後自宅に戻ってから靴を脱いだときでした。介助者に「足首がグラグラしていて、腫れあがっています」と言われ、私はあわてて近所の救急病院へ行き、レントゲンを撮ってもらいました。すると足首の骨部分である脛骨(けいこつ)と腓骨(ひこつ)が骨折しており、全治3ヶ月から4ヶ月という診断を受けました。まさに「やられ損」でした。
そしてこの日から私の長い骨折闘病記(?)が始まるわけです。後日、ギプス固定をすることになったのですが、まず骨折後に問題が出たのは入浴と排泄でした。自宅の浴室はとても狭く、足を伸ばしたままで入れるわけがないので、とりあえず患部はビニール袋をかぶしてシャワー浴という形になりました。排泄もシャワー浴もシャワーチェアーにて行うので、とても厳しい体勢でした。そして日常でも座位をとることが厳しいがために、ベッド上で過ごす時間が多くなってきたわけです。膝から下まで覆うギプスは思った以上に厄介で、清拭をするにも着替えをするにも、とにかく大変でした。患部が腫れるのを防ぐため、足首を若干高くしなければいけないなど、いろいろとやらねばならないことが多く、介助者の皆さんもさぞかし気遣いされていたことでしょう。
2週間に1度の外来で病院には行っておりましたが、とうとう恐れていたことが起きました。それは褥瘡です。なんとギプス固定部のかかとに水泡ができていたのである。これは「ヤバイ!」と思い、即日に外来にてギプスのかかと部分を大きくくり抜いてもらいました。これで一安心と思いきや、くり抜かれた部分の傷は治ったのですが、くり抜いた穴の周りに(円を描くように)、褥瘡ができたのです。そして、また外来にてギプスのかかと穴部を広げていくのですが、広げた部分がまたまた褥瘡に・・・、もう「いたちごっこ」のようでした。血行もあまり良くないせいか、足の指とくるぶしまで褥瘡に。そして、排泄のトラブルも併発したのです。大便の便秘、小便の詰まり(膀胱瘻により)、偏頭痛、外出がままならないためのストレス蓄積、もう踏んだり蹴ったりといった感じでした。
結局、全治3ヶから4ヶ月と言われた骨折完治期間も、6ヶ月かかってしまいました。ただ、幸いなことに骨折による骨の変形等はなく、無事に靴も履けて、足首の可動にも影響は出ませんでした。
私は最初、どうせ足を骨折したって最初から車イスに乗っているし、足を地に着かせるわけでもないので生活自体にそんな影響はないだろうと思っておりました。とんでもない誤りでした。どんな怪我や病気でもそうですが、そもそも動けない体にさらなる病魔が重なることは本当に恐ろしいものです。皆さんも骨折はもちろんですが、風邪等でも十分、合併症(廃用症候群)を引き起こすので、十分お気をつけ下さい。それと外出時はくれぐれも交通安全を!