Vancouver(バンクーバー)生活
時間が経つのは本当に早いもので、1月13日に Vancouver(カナダ・バンクーバー)に来て早くも7ヶ月が経過しようとしています。こちらも暑い夏……とは言っても日陰では肌寒いこともあり、日本のそれと比べるとはるかに生活しやすいように思います。真夏日のやってきた日本でみなさんお元気になさっていますか? 私は最愛の夫を亡くし、思い出がいっぱいの日本にいることがあまりに辛く、生きていく自信もなく、二人の思い出の地・夢の地 Vancouver に来て生活しています。 30歳を過ぎている私はワーキングホリデービザを取ることもできず、合法的に滞在するには学生ビザを取るしかなく、語学学校に通っています。それでもこちらで生活する障害当事者の人と交流を持ち何か学べたら……と、英語は分からないけどイベントがあるたびに可能な限り参加しています。実際に暮らしてみると、設備面でのバリアフリー化は悪くはありませんが、最近がんばっている日本とそんなに変わらないようにも思いますが、唯一違うのは「人」です。 日本(東急など一部を除く)は電車に乗るために職員がやってきてスロープをかけたり、バスに乗るのにスロープを出したりしますよね。私は何度も経験したのですが、職員がスロープの出し方など、使い方を知らずにせっかくあるものが使えなかった……ことを思い出します。そんなときにはイライラしながらも、他のお客さんに対しては申し訳なかったり……と気を遣ったものです。こちらではそれがありません。Skytrain(スカイトレイン)においては段差や隙間がなく職員が手伝うということがありません。バスのスロープもドライバーは運転席に座ったままスイッチを押せば自動で出てきます。時間も気も遣わないから公共交通を使うのも苦ではありません。 私は日本では地方に住んでいたので、公共交通に車いすで乗ることは容易ではなくマイカーを使っていました。車いすでの移動は最小限だったため手動を使っていましたが、ここでは車いすで移動することも多いため電動車いすを使っています。毎日何時間も乗っていたせいか、いやいや本当は私が太ったためでしょう(こっちの人は本当に大きく、よく食べます。そして甘い!砂糖も脂肪もたっぷり……って感じでここにいれば太るよな、なんて私のせいじゃない言い訳を考えてしまいました。な訳で今ダイエットをしています)、……タイヤを前後・左右それぞれ3回も交換しました。 ついには、車いすのスポークが動くたびにパキパキと音を立てて計10本近く折れてしまいました。一度は修理をしてもらったのですが、1ヶ月も経たないうちにまた10本以上折れて、今にも車いすが崩れ落ちそうでドキドキしながら修理に行くと「これはもうお手上げ! 修理不可能だ」と言われてしまいました。私の車いすはそこに置いて帰らざるを得ず、異国から来ていて、BC(ブリティッシュ・コロンビア)州政府から何の助成も受けられない私の事情を察して、代わりの電動車いすを貸してくださったおかげで無事に生活できています。 「GF Strong Rehab Centre《http://www.vch.ca/gfstrong/》」。日本でいうリハビリ病院の中に車いすセクションがあり、そこでは車いすのドクターなる人が勤務していて、たいていのことはその場ですぐに調整、修理してくれます。ここではさまざまなことを行っており、たとえば Work out(リハビリなんだけどエクササイズって感じかな?)や車いすホッケー、水泳、痛みのコントロール相談、Sexual Health Rehabilitation、カフェの日(お茶をしながらおしゃべりをしたり)などなど……。他にも Spinal Cord Injury で組織を立ち上げているリック・ハンセン「Rick Hansen Foundation《http://www.rickhansen.com/》」やVancouver市長のサム・サリバンが創設した「The Disability Foundation《http://www.reachdisability.org/》」、BC州の障害当事者たちが健常者(という言葉は好きではありませんが、他に適切な言葉が思いつかないので……)と一緒に運営しているNPOの「The BC Psychological Association《http://www.psychologists.BC.ca/》」などさまざまなイベントや相談窓口があります。 このBCPAは、今では主にSPI(Spinal Cord Injury)障害者を中心にBC州に住む障害者の生活には欠かせない大切な役割を果たしています。上記に紹介した全ては(病院であるGF Strongを除く)NPOで活動資金は企業からのドネーション、イベントでのファンドレージング、会員からのドネーション、政府からの委託金などで賄(まかな)われています。何かのイベントがあるときには必ず大手の銀行、電力会社、通信会社が参加していることを知りました。日本でももっと企業からの大きな寄付があるとNPOの運営も発展していくのになぁ……と「はがき通信」の存続に関してもそうですが、資金確保の大切さと困難さを痛感しています。 先に紹介した「Rick Hansen Foundation」(リック・ハンセンは車いすで世界の多くの地域を縦断した人で日本にも来ています)では毎年6月に Vancouver を参加者みんなで(車いすを使う人も歩いている人もスクーターに乗った人もベビーカーを押している人も)パレード(っていうのかな? 私は残念ながら不眠症のため、前夜に一睡もできずに朝から眠ってしまって参加できませんでしたが)を行っています。そのキャンペーン期間中にはテレビでバンバンCMを流すのですが、その最後のフレーズが私のお気に入りなので紹介させていただきます。 「Anything is possible」日本語と英語の表現は違い、全てをそのまま訳せないこともありますので、この場合(直訳の「何でも可能」よりも)「不可能はない」としたほうが適切かな……? それを応援し、証明しているのが市長のサム・サリバンの「The Disability Foundation」で障害があってもやりたいことは何でもできるようにさまざまな Societies を立ち上げています。たとえばセーリング、ガーデニング、ミュージック、そして生活の応援(生活に必要な工夫やその適応品を作成してくれる)などニーズに応じて対応する部署が違い、細かなサービスができるように各 Societies が役割分担をしています。 「The Disability Foundation」中のそれぞれの組織は次の通りです。1.BC Mobility Opportunities Society, 2. ConnecTra Society, 3. Disabled Independent Gardeners Association, 4.Disabled Sailing Association, 5.Tetra Society of North America and Vancouver, 6.Adapted Music Society……それぞれにちょっとずつ違った役割を持った組織はきちんと横のつながりも持っているんです。だから足の引っ張り合いだったり、競争だったり……ということは、私の知る限りではありません。 残念ながら私は英語がよく分かりませんので、ホームページを理解するまでにいたりませんがぜひお時間のあるときにホームページに立ち寄ってみてください。まだまだ分からないこともいっぱいですが、Vancouver のことで知りたいことがあればお尋ねください。可能な限り努力して調べます! M.I. ※藤川さんの『立った!ついに歩いた!』を読んでの書評の後編は、誌面の都合で今回は掲載できませんでした。どうぞご了承ください。 ひとくちインフォメーション
★ 本の紹介 『車輪の一歩』 小出 記代美 著 櫂歌(とうか)書房 出版 1,260円(税込) [本の内容紹介:毎日新聞・福岡都市圏版より 06.6.14] 手記:列車事故で車椅子生活、心の傷克服 福岡の小出さん『車輪の一歩』出版/福岡 列車事故で車椅子生活を強いられた福岡市東区の小出記代美さん(66)が、手記「車輪の一歩」を出版した。事故で右腕を失った小出さんが心に負った傷を克服し、“第一歩”を踏み出すまでの足跡が描かれている。 事故が起きたのは、北九州市内の女子高に入学して間もないころ。朝、忘れ物をして鞍手町の自宅を出るのがいつもより遅れた。蒸気機関車に飛び乗ろうとして落下。脊髄(せきずい)損傷、右上腕部切断などの重傷を負った。九死に一生を得たが、歩くことは出来ず、復学も断念した。 小出さんは「人の目が怖くて、10年くらい家からほとんど出られなかった」と言う。19歳のころ、文通で知り合った男性には、ついに障害を打ち明けられなかった。 22歳の時、父が働いていた炭鉱が閉山になり、家族で福岡市に移住し、大学生相手の下宿を始めた。寂しさを紛らせてくれたのが短歌だった。 <寮生の 眼を恐れいて 語り得ず 障子隔てて 話し声きく> だが、下宿業に忙しい母を手伝うことで、少しずつ変化した。茶の間でテレビを見たり、父と将棋を指す学生たち。妹の宿題を見てくれる学生もいた。固く閉ざされていた心の扉が、次第に開いていった。 やがて車椅子で旅行に出るようになった。電動車椅子を手に入れてからは、近所でごみ拾いを始めた。卓球を楽しみ、デパートにも行った。地下鉄を利用して作業所にも通うようになった。 「車輪の一歩」は四六判、182ページ。小出さんは「障害者が立ち直るまでには時間がかかる。障害者だけではなく、支える周囲の人たちにも読んでほしい」と話す。 ★ 在宅リハビリ研修会/2006 『リハビリ環境の改善〜自分の身体を知ろう/日常生活の再点検〜』 自宅で黙々とリハビリに励んでいる方、リハビリをしてもしかたがないと諦めている方、私に合うリハビリを知りたい方、本当のセラピストに会ってみたい方。身体を改善するには現状を見つめ直すことが大前提。この機会に自分のリハビリ環境を考えてみよう。 日程:平成18年10月27日(金)〜29日(日) 会場:神奈川県リハビリテーション病院 〒243-0121 神奈川県厚木市七沢516 http://www.kanagawa-rehab.or.jp 講師:神奈川リハビリテーション病院 玉垣 努(作業療法士)他 神奈川リハビリテーション病院 藤縄 光留(理学療法士)他 【プログラム】 27日(金) 14:00〜17:00 会場:神奈川リハビリテーション病院 2階・研修室 「脊損専門内科医からの助言 予防とは」 水口 正人 28日(土)〜29日(日) 9:30〜17:00 会場:神奈川リハビリテーション病院 1階・PT訓練室 「脊髄損傷者へのリハビリ支援」 玉垣 努 「リハビリ環境の改善」 藤縄 光留 自分で選ぶリハビリ訓練(個別訓練) 神奈川リハビリテーション病院PT・OTほか多数のセラピストによる指導 対象者:脊髄損傷当事者とその家族および医療・福祉従事者 参加費:当事者と介助者1組3日間 20,000円 見学費:介助者・学生 5,000円、その他専門職 10,000円 [お問い合わせ] 在宅リハビリサポートの会「レッツ」事務局 FAX:045−934−4720 E-mail:yukiko_kk@hotmail.com ★ 携帯電話用のイヤホンマイクを差し込める家庭用コードレス電話機(固定電話) 携帯電話用のイヤホンマイクを差し込める家庭用コードレス電話機(固定電話)を、実験的に25台(在庫10台)輸入しました。希望の方に有料でお分けします。 イヤホンマイクを使うと、全身性障害者が受話器を持たずに電話ができます。スピーカーホンでは周りに聞こえてしまうので、周りに人がいるとプライバシーに関わる電話ができません。かといって携帯で電話をかけるとお金がかかります。 日本のコードレス電話機には、イヤホンマイクを使える機種がもう生産されていません。アメリカではそういう電話機が普通に売られていましたので、一番安く手に入る電話機を、アメリカのユニデン社から買ってみました。(ちなみにユニデンは日本の会社です) 電話機の説明書抜粋です《http://www.kaigoseido.net/o/denwaki.pdf》。 充電器の中に親機の機能が入っているコンパクトタイプなので、充電器に電話線をさすタイプです。製品カラーは白のみです。おそらく販売店からユニデン社に帰ってきたアウトレット品なので、箱はシールの跡などがついていて少々汚いですが、中身は新品です。充電池は日本のものと共通ですので、古くなっても大きなお店で買えます。 今、うちの事務所と自宅で使っていますが、普通の電話としても使えるので便利で、取り合いになっています。日本国内では固定電話のコードレス電話は、量販店で最も安いもので6,500円以上ですが、この電話機は送料込み4,500円でお分けします。非常に安いです。 [商品内容] 電話機子機・充電器兼親機・ACアダプター・電話線(アメリカの電話機:ユニデン EXI976) 希望者には以下もお付けします。 +100円:イヤホンマイク・+100円:電話線2分配器(品切れ)・+100円:電源延長コード3口 送料の計算や受付の手間をなるべく省くため、全国一律・送料込みで1台4,500円で販売します。(本体:3,500円、送料:1,000円)発送はある程度まとまってからまとめて送るので、少々時間をいただきます。1〜2週間程度は見てください。 イヤホンマイクはいろんなものが売られています。100円ショップでも売っています。イヤホンマイクは3極丸型です。(一番古い携帯むけのもの)普通の固定電話の電話機と同じものですので、IP電話などにも使えます。 情報提供:N.O.さん ※購入をご希望される方は、編集委員の瀬出井までご連絡ください。 【編集後記】
101号の編集を無事仕上げることができてホッとしています。この号から向坊さんの生の原稿が掲載されることは二度とないのだなと思うと、とても寂しい。私の手元には、12号からの「はがき通信」がファイルに綴じてある。100号から新たに4冊目。このファイルがまたいっぱいになる日は来るのだろうか……。 昨年4月から個人情報保護法が施行され、「はがき通信」も情報管理に気配りが必要になってきました。そこで今後、投稿者名と都道府県の掲載のみで住所やメールアドレスは、ホームページ版とも掲載しないことといたしました。 また、実名公開にするかどうかはご本人のご希望次第で、イニシャル・仮名・匿名・ペンネーム等でもかまいません。その旨、原稿の最後に記載していただければと思います。ホームページ版は実名の場合、編集スタッフ以外はイニシャルに変えさせていただきます。ただし、障害程度・年齢・障害歴・使用車イスの種類等につきましては原稿に記載されている場合、今まで通り掲載させていただきます。 投稿者の方に連絡が取りたい場合は、投稿していただくのが何よりも一番です。「はがき通信」の趣旨と存在意義をご理解いただき、情報交換誌として誌面を通じた交流と輪が広がることを願っております。どうしても個人的に連絡をお取りになりたいときは、お手数でも編集スタッフ経由でよろしくお願いいたします。 向坊さんを「永久名誉顧問」として掲載させていただきました。これは、100号の追悼文の中にも書いてありますように瀬出井個人の思いです。編集委員として職権濫用かもしれませんが、どうぞお許しいただければ幸いです。 次回の編集担当は、藤田忠さんです。 編集委員: 瀬出井 弘美
………………《編集委員》……………… (2005.7.25.時点での連絡先です) 発行:九州障害者定期刊行物協会 |
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