はがき通信ホームページへもどる No.83 2003.9.25.
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 『車いすのリアル』をよろしく 


 冷夏とはいえ、暑い夏の日々いかがお過ごしですか? 私は8年前に通勤途中の駅の階段から転落、頸髄を内出血し、四肢の不全マヒのため、車いすを使用し、在宅生活を送っております。3年前に、社会人を経て再入学した大学で夫と知り合い、結婚しました。夫は、筋ジストロフィーによる障害者で、共に車いすを利用。障害者同士ということもあってか、結婚するに当たっては、周囲からの心配・反対もありましたが、お互いの凸凹を補い合いながら、日々過ごしております。市内に住む双方の両親と、ヘルパーさん、ご近所のかたに力を借りながら、2人で助け合って生活しています。
 このたび、私、石川ミカが障害者になる前と、障害者になってからのこれまでの経験を綴ったエッセイ『車いすのリアル』(大和書房発行、1400円)を出版いたしました。
 「障害者」といわれている人、「健常者」といわれている人が、少しでも身近になれたら、触れ合い、互いに分かり合えて「お互いさまよ!」と言って助け合える——そんな社会になったらいいなぁと考えています。そのためにはまず、私ひとりの思いや経験ですが、8年前に事故で頸髄を損傷し車いす生活を送っている障害者(私のことですが)のことを知っていただければと思い、障害当事者からのメッセージを込めて書きました。少しでも多くの人に読んでいただき、少しずつみんなが勇気を出して声をかけ、互いが1歩ずつ(合わせて2歩)近寄り、溝が埋まっていけばいいなと願っています。
 本の中では、日々の暮らしはもちろん、大好きな旅行先での経験など含めて、等身大の自分をリアルに書いています。
 障害者と接したことのない人、何かしたいけどどうしたらよいのかわからない人など、さまざまな人に読んでいただき、その中から、1つでも、2つでも、「あぁ、そうなんだ」「じゃぁ、今度から声をかけてみよう」……そんな心に残ることがあればと願っています。そして、その思いが実行につながり、その結果、みんなが住みよい日本になれば嬉しいなぁと思っています。
 何分にも若輩の私ですから、「より多くの人に読んでいただきたい!」と、願っても気持ちだけが空回りしている有様です。1人でも多くのかたに、読んでいただけるようにみなさまのお力添えをいただければとの思いから、お願いの投書をさせていただいた次第です。ぜひご一読いただき、共感してもらえる部分がありましたら、周りのかたがたにご紹介くださいますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます! まだまだ不勉強の未熟者でございまして、みなさまからのご教示を請いながら精進してまいらなければ……と思っています。読んでいただいた際には、感想を聞かせていただくなどのご指導を賜りますよう重ねてお願い申し上げます。夏の暑さが残っていますので、体調を崩されませんよう、お身体ご自愛ください。

  (2003.7.20発売)


 15年めにして頸損第2の人生 


 この8月11日で受傷丸15年になります。その15年めにものすごいプレゼントがやってきました。
 5月18日を境に(日付まではっきり覚えている)突然、急激に身体の痛み・痺れの増悪、異常知覚が出現し、日々、悪化。もともと下肢痛・痺れはあったのですが、かつてはアルコールブロックなどもしましたが痛みには効果はなく、長年の間にコントロールできていました。とにかく、身体のアチコチが痛くなり、下肢痛がメチャクチャひどくなりました。この原稿を打ちながらも「足が痛〜い! 背中が痛〜い!」と内心悲鳴をあげながら、歯をくいしばってパソコンに向かっています。
 空洞症等が心配になり、近くの病院で首のレントゲン・MRIを撮りましたが、所見上は異常なし。神奈リハの主治医も見方は同じようでした。一番納得できる理由として、2月に受けた婦人科の手術の影響があるかもしれません(こちらも検査上はさほどの問題はありません。検査所見では出ない変化もあるでしょう)が、体内バランスが快復するか、適応するまで時間はかかると思われます。C5知覚不全の痛みや痺れ、異常知覚そのままという感じがします。受傷時からあってよかった痛み等かもしれません。むしろ、この15年間がラッキーだった? 第2の頸損人生の始まりという気がします。でも、本当に私の身体の中でいったい何が変わったのでしょうか……。一番やっかいなものが出てしまいました。
 この痛み・痺れ等は、本当に味わった者にしかわからない辛さがあります。この状態を受け入れるのには、年単位の時間がおそらく必要でしょう。あせっても解決できる問題ではありません。「元気が取り柄」のような私も、痛みだけは自分ではどうすることもできません。若干の疼痛・痺れ・異常知覚等はおありのかたも多いかもしれませんが、日常生活、外出にも支障がない、あるいはコントロールできているから活発に行動ができているわけです。まったく、痛みや痺れもないというかたもいらっしゃると思います。外に出て来る人の間では、痛みのことなど話題にも上りません。私も痛みはありましたが、口には出しませんでした。仲間内ですら、そのような状態です。
 日本中に外に出て来られない痛い人は、きっとたくさんいらっしゃることでしょう。お会いしないからわからないだけ……。それは身体のマヒ以上に、QOLを落とします。痛くない人は本当にそれを幸いと思い、痛くない人の「役割」をどうか果たしてください。私もこの先どうなるかわかりませんが、痛みのために行動に制約がかかるのは免れないでしょう。じつは、「はがき通信」の購読者でもあるあるかたに協力をして現在、「脊髄損傷後の痛み」の調査をしております。(その最中に自分がこんな事態に陥るとは夢にも思わず)いわゆるニューロパシー痛(神経因性疼痛)は、現在の医学をもってしても難治性で有効な症例があるというだけで、EBM(科学的根拠に基づく医療・薬剤)として確立している治療法はありません。リスク管理が容易な疼痛緩和治療法を切に願います。
 以前の「はがき通信」には、痛み・痺れで悩んでいらっしゃるかたの投稿がありました。そのかたがたは、現在、どうしていらっしゃるのかと思います。痛い人たち同士の、情報ネットワークが作れたらと考えております。今後、実施する予定のアンケート調査にご協力いただけるかたがもしいらっしゃいましたら、どうか瀬出井までご連絡いただければ幸いです。
 現在、「はがき通信」の編集も上記のような理由でお休みをさせていただいております。よろしくお願い申し上げます。
編集委員:瀬出井弘美 E-mail: h-sedei@ma4.justnet.ne.jp


 カニは死んだのかに? 


 暑中お見舞い申し上げます。みなさん、お変わりありませんか? 毎日嫌になるほど暑い日が続きますね。私は通信大学のスクーリングやらテストやらで、お盆が明けるまで大忙しです。
 昨日、一昨日もスクーリングがあったので博多に行っていましたが、教室の寒いこと寒いこと……みんな長袖を着て、授業を受けていました。そこまでクーラーで冷やしてどうするの!?省エネ考えろー!!って感じです。あんなにテストができなかったワケは、あまりにも寒すぎたせいだわ、きっと…… ┐(‾。‾;)┌
 ところで、6月末の海辺での身障者バーベキューパーティーの際に、家に入り込んできた“カニ”を、私たちは持ち帰って水槽で飼っていました。昨夜チェックしたときは元気に動いていたのですが、今朝母が餌をやろうとしたところ「ありゃぁ〜、死んでる」……と。「けっこう長生きしたから、寿命なのかねぇ」と話していたのですが、午後になってから水槽を片付けようとした母が「ギャァ〜 (゜ロ゜;)」なんとそこには、元気ハツラツとしたカニが現存しているではありませんか!!! でもその傍らには、まったく動かず白けたカニも……カニって脱皮するんですかぁ〜〜?(@_@)

( H・K )


 ささやかな運動 

46歳、C4、頸損歴11年め、施設7年め、人工呼吸器・電動車イス使用

 8月の泌尿器科受診は病院が替わって2回めでした。しかし、出かける前に一騒動。車イスをいつも使用している電動ではなく「手押しのリクライニングにせよ」との看護師さんの仰せです。
 実は7月もそう言われ、理由を聞けば「入口が狭いから」とのこと。初めてのM病院泌尿器科であり状況もわからないので言われる通りにしたのですが、行ってみればなるほど狭いことは狭いのですが、私の運転技術(?)をもってすればさほど難しそうには見えず、むしろ手押ししてくれる看護師さんの不慣れから処置ベッドに私の足をぶつけてしまう始末。さらに、一緒に行った年長のAさんは同じく初診というのに電動車イスを使用しています。これってどういうこと?と言うのが、7月の受診風景でした。
 「今回は納得させてもらわねば」とて「何故電動はダメですか?」と看護師さんに理由を問います。今度は「狭いので人にぶつかったら困る」と言います。しからば「何故AさんはOKで、私はNGですか?」と問えば、「あの人は私たちの言うことを聞かない。仕方ないでしょ。でも手押しにしたほうがいいと言うのは私たち(看護師)の意見です。そしたら自分で決めて下さい」とのこと。最終的には自分で決めていいと言いながら、一方Aさんには批判的なのですから、私たち(看護師)の言うことを聞きなさいとの婉曲表現です。 
 意外だったのは、私が看護師さんの言うことを聞く「イエスマン」と思われていたこと。振り返ってみれば、受診で手押しから電動車イスに変えるのに昨年4月から6月にかけて、近くのJ病院からより遠くのM病院、K病院と徐々に実績を積んで認めてもらってきた経緯があります。納得してもらえるように、あせらずに。こんなやりかたが一面イエスマンと受け取られる理由だったのかもしれません。折れないのですから決してイエスマンではないのですが、少なくとも看護師さんの納得までもって行くという意味で、看護師さんとは良好な関係にあったと言えるようです。
 しかし、今回の問題はいわば既得権の侵害です。また今回私が手押しを是認したら、どのような理由によって電動に変えていいことになるのでしょう?「泌尿器科の入口が広くなったら?」「私が電動車イスの免許(?)を取ったら?」いずれも目途立たずです。しかもそれまでは年長のAさんが電動車イスなのに、年下の私が手押しなんて、格好悪〜。看護師さんはそんなことまで考慮してくれたのでしょうか? 望むべくもなし。このあたりは残念ながら近視眼的です。
 短時間の中で、「管理は打破せねば」「しかし、看護師さんのプライドも考慮せねば」「支援費制度になって、自己決定が強調される時代になった」等々が頭に浮かびます。でも、最も強く思ったのは、看護師さんの意に沿わないことを仮に悪者とするなら、「先駆者=フロンティアAさんだけを悪者にするな!」ということ。
 「そしたら、私は電動で行きます」これが、私の答えでした。当然ながら、看護師さんの機嫌は悪い。こんな時に限って帰途の車中で痰がひっかかってスクイージングが必要になります。「そらみろ、手助けが必要なくせに、言うこと聞かないんだから」「それとこれとは別でしょう」とは私が胸を押してもらいながら考えた想像会話。いや〜気まずい。
 根本的にはどちらが正しいのでしょう。「電動車イスはわれわれの足」とする私たちでしょうか? あるいは「一般の人には未だ恐怖心を与える」とする看護師さんでしょうか? 答えは「当然」私たちというなかれ。地域性もあり、時代の風もあり、言うなれば世論(皆さんの理解度)の問題でしょう。だからこそ私たちはどんどん電動車イスで町中等へ出て、見慣れてもらう必要があるのですが。「障害者運動」と言うもささやかな私の運動でした。

(2003年8月31日記)  
 
 『3A+Aのページ』
 http://www.h4.dion.ne.jp/~the-36th/
新潟県:T・H E-mail: th36th@hotmail.com
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