はがき通信ホームページへもどる No.74 2002.3.25.
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電子浴治療器を試してみました

受傷13年目、C8レベル位

 「はがき通信」№71にも紹介されていた電子浴治療器をせきずい基金からお借りし、3週間ちょっと試させていただきました。メーカーによると、2週間くらいで効果が現れるということですが、これも個人差が大きいでしょう。元々は、脊髄損傷者の痛みの治療のために開発された機器ではありません。
 試してみた結果ですが、治療しているときは楽でした。その後は、若干緩和されたかなという感じです。痙性も若干弱くなったように思います。夜も、少しだけ長く眠れるようになりました。便通と肩コリにはいいようです。(私の場合)
 確かに身体に良いとは思うのですが、何分高価な機器ですから個人購入となると……難しいところですね。私は運良く近所の方から同じようなものを譲っていただけることになり、それで今後も続けていこうかなと思っています。ただ、「人体をアルカリ化」すると説明書きにあるのですが、結石のできやすい頸損はアルカリ性の食品等は避けなくてはいけない身体です。人体自体がアルカリ化したらどうなのだろう? というのが疑問の残るところです。泌尿器の主治医に聞いてみたいですね。
 瀬出井 弘美(編集委員)



 関西リハビリ研修会のお知らせ(HPのみに掲載)

「せきそんリハビリ連絡会」では昨秋に引き続き、4月下旬からワシントン大学から2人のPTを招き、研修会を開催します。

 対象者:前期 頸損 ①②③のセミナー(2日間)
     後期 脊損 ①②③のセミナー( 〃 )    
 参加費:受講者+介助者で30,000円
 ※宿泊予約も受付中。詳細は資料を請求して下さい。
 セミナー① ワシントン大学のリハビリシステムとその考え方、基本ストレッチ・関節可動域・座位バランスの訓練・実習
 セミナー② パウダーボード・立位の実技・実習
 セミナー③ 皮膚管理・褥瘡予防、上肢筋力トレーニング、呼吸法指導、痙性対処法、車イス・クッションチェック

 【大阪会場】

 主催:(社)大阪脊髄損傷者協会
 定員:各12名
 会場:国際障害者交流センター「ビッグアイ」
    (堺市茶山台1-8-1 TEL:072-290-0962 泉北高速鉄道「泉ヶ丘」駅下車)
 <頸損コース> 
 5月3日(金)13時〜17時:セミナー①
 5月4日(土) 9時〜17時:セミナー②、③
 <脊損コース>
 5月5日(日) 9時〜17時:セミナー①、②
 5月6日(月) 9時〜12時:セミナー③ 
   6日(月)13時〜17時:勉強会(定員50名、参加費1000円)
                脊損リハビリについてのレクチャー及び質疑応答。
                対象は、リハビリ・介護関係者、当事者・家族等。見学者を対象。
 
【参加申し込み】

 瀬戸正代まで E-mail: masayo-n@f4.dion.ne.jp    
 ※締切りは、定員となり次第締め切りとさせていただきます。



読書メモ

C5、15年、53歳男性

 重度障害者諸君! ヘイ、ジュード! 元気にやっとるかね。どうも最近「はがき通信」の原稿が集まらなくて編集者が困っているようなので、うめくさを提供することにした。
 去年から「読書メモ」をつけている。受傷直後には、もう一生本は読めないのだとひがんだものだが、その後工夫をかさね簡単に読めるようになった。ところが読むはじから忘れていく。何を読んだかすら覚えていない。もったいないからただ読み飛ばすのではなく、おもしろかった点を書き付けておくことにした。
 もともと公表するつもりなどなくて書いたものだから、いわばひとりごと。いいかげんなものだ。ページ調節のうめくさには打ってつけだろうと思う。

 藤川景(校正担当)


◇2001年

 阿佐ヶ谷図書館で『鶴彬全集』(たいまつ社)と江戸川乱歩の『芋虫』(角川文庫)を借りる。荒俣宏の『プロレタリア文学はものすごい』(平凡社)のなかに『芋虫』は最初プロレタリア文学として雑誌「改造」に載せるつもりが断られて探偵雑誌「新青年」に載せられたという一節を発見し、それならば鶴彬の「手と足をもいだ丸太にしてかへし」という川柳は乱歩の作品にヒントを得て作られたものであるかもしれないと思い、それぞれの発表年月を調べてみようと思ったのだ。 
 昭和5年に、手と足を大陸においてきたという内容の川柳を見つけた。「もいだ」のほうがずっと衝撃的。口絵の自筆短冊の筆頭におかれているところを見ると、鶴の代表作のようだ。ついでながら口絵の顔写真を見ると、鶴はしっかりした顔立ちの美男子。
 いまインターネットで『芋虫』を調べたら、「新青年」昭和4年1月号に掲載とのこと。乱歩の勝ちか。戦争で手足を失い、おまけに耳と口の機能を失った元軍人と彼を介護する妻が主人公。妻が介護するうちに残虐になっていくというものらしい。身につまされる。

 「芋虫」は短篇だった。掲載のいきさつに関して乱歩自身が『探偵小説四十年』にしるしているが、またそれをたどっていくときりがない。インターネットにはちくま文庫の解説が転載されていた。今日、阿佐ヶ谷の書楽に見に行ったら分厚かったのでやめた。
 かわりにそばにあった岩波現代文庫の『笑いと治癒力』(ノーマン・カズンズ)を買う。900円もする。文庫にしては高い。
 「芋虫」で、元軍人が妻を呼ぶのに後頭部で床を打つ記述にリアリティを感じる。解説(石川喬司)によれば『ジョニーは戦場へ行った』の主人公も同じような障害者で、ともにセックスのことしか頭にないような人間として描かれているらしい。二人とも体幹に麻痺はなく性機能は残存している。戦争被害者であることも共通しているが、乱歩に反戦の意図はなく、極限状況における人間性を描きたかったという。そういう状態におかれたらセックスのことしか考えないんだろうなと誰しもが思っているわけだ。当たっていないこともないが、現実問題として介護問題に追われてそこまで手が回らないだろう。
 乙武君はラブホテルのエレベーターが狭くて不便だと言い、ホーキング青山は学園祭で出会った女の子とその日のうちにベッドインしたのが筆卸だと書いている。体幹に麻痺さえなければセックスは可能だし、健常者が心配するほど年がら年中そればっかり考え異常な嗜好に走るということもなかろう。だけど体幹が麻痺して勃起も射精もしなくなってしまってはどうにもならない。頸損は悲しい。バイアグラで勃起したところでおつな気分になることもないし、第一背中が痛くて。性器に強い刺激が加われば過反射で不快な思いをするだけだろう。
 乱歩が「芋虫」を書いた背景にはヒントになるような実話があったのだろうか。昭和初期の資料に当たりたい。だが、あったとしても新聞には載らなかっただろう。

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