家族・医療関係者以外の導尿・吸引の問題
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A氏 |
今日、先生がスライドの中で話された言葉の中で、クオリティ・オブ・ライフという一番重要なキーワードがあるということと、今日、お集まりの皆さんはもう慢性期の人たちだというお話があったんですけれど、医療関係の人からこういう排尿の困難に対する援助をやっているというお話ですけれども、クオリティ・オブ・ライフという考え方とワンスイッチという言葉の考え方からいきますと、海外旅行に行くような頸損の人もいっぱい出てきている時代において、医療がすべてを「ああしなさい、こうしなさい」、あるいは導尿するにも自分がするのはかまわない、家族からやってあげるのもかまわない、看護婦さんが訪問看護で医者の処方箋があってやるのであればかまわない、でも、ヘルパーのやるのは許さない、というようなことは、これから先は非常にその人の慢性期に到達した患者さんのクオリティ・オブ・ライフに関して、非常な妨げになってくるんじゃないかと思います。
こういう慢性期になった人たちは「やってあげましょう」というヘルパーさんが現われたら、その人と合意の上で導尿をやってもらうというようなことに関して、医療は少し手を緩めてもいいんじゃないかという気もするんですけど、そこらへん開業医の人たちは別にして、優秀な専門医の人たちは慢性期の人たちは福祉に渡してもいいんじゃないかという人も増えていると思うんですけれども、どうでしょうか?
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先生 |
私ももう時々そういうふうに思っていまして、非常に今、困っていますよね。脊損の人たちももちろんそうなんですけれども、今の質問で一番先に私の頭の中に浮かび上がったのは、ちょっと似ているんですが、先天性のニ分脊椎という病気があるんですが、この子どもたちが学校だとか幼稚園で導尿するのができなくて困っているんですね。お母さんが毎回学校に行かなくちゃいけない。
それを何とか先生もやってくれてかまわないから、私はドンドンそういうふうに言っていますけども、これ医療がはなさないからとおっしゃいましたが、確かに医師法というのがあるのがネックなんだろうと思います。文部省がそれを楯にして絶対にいけないというふうに言って、でも、少しずつ変わってきて、現場ではやっていただく先生方もいることはいるんですよね。一般的にはなっていないと思います。
それとか、後は呼吸器の吸引ですかね、あれも困るんじゃないかと思います。私は、ドンドンこれからはそういうことが取り払われて可能になっていくというふうに思っていますし、そういうふうにいろいろ話をしています。
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座位時におこる発汗
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B氏 |
僕は、10年ほど前から留置カテーテルを挿入しているんですけれども、それまでは自然に出ていたというか、お腹をたたいてもらっておしっこを出していたんですが、10年前から尿閉になりまして留置カテーテルを使用しているんですけれど、最近になってきて座位の時にすごく発汗があるんですよね。それというのは、留置カテーテルを入れているというのが原因と考えられるんでしょうか? 寝ている時は、ほとんど発汗というのはないんですけどね。座位になった時にすごい発汗があるので。 |
先生 |
先ほどお話した、自律神経が過緊張反射を起こしているのかと思います。その原因は、やはりカテーテルというのも一つだと思いますね。また慣れてくるということもありますし、もう一つは、カテーテルが座位になった時に何か流れが悪くなるんじゃないですかね。何かの原因で。そのへんを調べて見たほうがよいかもしれません。要するに寝ている時はスムーズに流れている、座位になった時に何かカテーテルが流れにくくなる。 |
B氏 |
膀胱を刺激しているとかいうこともあるんですかね。 |
先生 |
カテーテル自身を入れただけで汗をかく人いますから、それも一つの原因かも知れません。寝ている時は大丈夫なのですから、何か流れの問題かなと。 |
B氏 |
膀胱洗浄をした時なんかもちょっと発汗があったりするので。 |
先生 |
ちょっとしたことでバルーンが膀胱を刺激するとか、あり得ることだと思います。流れのこととか何か工夫したり、やってみることだと思います。 |
排便時のマッサージ
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C氏 |
最近、排便時に両脇腹を強く押すと妙な痺れとか痙性とかがきて、腎臓が圧迫されているんじゃないかみたいな感じを受けるんですけれども、かるい痛みとか。右のほうは前からそれがあって、けっこう押す回数が多かったものですから、ときどき腎臓が痛いのかな?みたいな、痛みというのは感じないはずなんですけれども、何かそういう感じがするんですよね。そういうのはどういうふうな感じなんですか? |
先生 |
難しいですが、お腹を押して腎臓に影響がくるというのはあまりないと思います。後からだと腎臓には近いんですけども、腹筋を押して腎臓に影響があるというのはないので、腎臓じゃないんじゃ……。 |
C氏 |
足の付け根のちょっと上ぐらいなんですが。 |
先生 |
難しいですね。何でしょうか? |
C氏 |
けっこうあまり強く押すと痙性がガーッときて、それがあまりよい感じではないなみたいな感じを体に受けるんで、やめてもらうことが多いんですけれど。 |
先生 |
ちょっとわかりませんけど。まぁ、お腹の中のトラブルというのは、よく肩を痛がる人がいたりしますよね。一つの見極めなんですけれども。 |
導尿・吸引の問題解決にむけて
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C氏 |
はい、わかりました。もう一つ先ほど医師法の関係というか、導尿とか吸引の問題で先生としてはどのへんを押せば改善されてくるというのか、どこの行政とかどういうところに働きかけるとよい形になるんじゃないかという、そういうアドバイスみたいな、これからの運動的なものとして、お願いします。 |
先生 |
難しいですけど、今現在私が一番患者さんたちに言われて困っているというのは、やっぱり文部省だと思います。それだけでなくいろいろなことでも、今度の狂牛病の件でみても、日本のやりかたの縦割りの、こっちは農水産省で、病気になったら厚生省だという中で全然つながりがないんですよ。
だから、文部省はそうだとしても厚生省と話は徹底しないですから、そういうところでちょっとやってくれるとほぼ理解をしてくれると思うんですけれどね。それが大きなネックだろうというふうに感じます。 |
C氏 |
学校でそういうことをやる時の問題としてですか? 後は地域の中でヘルパーさんたちがそういう形で携わって、一般的な人が携わる的なところというのはどういうところへの? |
先生 |
厚生労働省だと……思いますけどね。 |
膀胱検査時の腎臓への負担
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D氏 |
私、膀胱瘻なんですけれども、脊損センターで手術してもらって半年後に検査、1年半後に○△病院で検査した時に腎盂造影と逆行性の検査がセットだったんですね。地元に帰って2回ほどしたんですけど、逆行性の検査は腎臓に負担がかかるだけだからしなくてよいんじゃないかとしてもらったことないんです。膀胱容量がどれくらい落ちているかもわからないし、やはり逆行性の検査というのはしたほうがいいんですか? |
先生 |
検査などはその先生の考え方によって、いろいろメニューを作ってやってらっしゃる先生がいると思います。ただ、僕は何か困っていることがなければ、膀胱の逆行性の検査というのは必要ないように私は思います。 |
D氏 |
2年前に逆流があると言われたんですけど。 |
先生 |
熱が出て? |
D氏 |
それはないです。 |
先生 |
その逆流を放っておくと逆に腎機能悪くなってきますから、それがひどく進んでやっているのかどうかをみるというのも確かに必要かと思います。 |
D氏 |
腎盂機能は血液検査で? |
先生 |
血液検査だけではちょっとおおざっぱ過ぎます。 |
D氏 |
腎機能は腎盂造影ですか? |
先生 |
一番手軽なのは、腎臓の造影検査じゃないかと思うんですけど。 |
D氏 |
では、逆行性の検査はそんなに気にしなくてもいいんですか? |
先生 |
やらないから心配なんですか? |
D氏 |
そうなんです。向こうではしていたから。 |
先生 |
別に腎機能が維持されていて、症状がないんでしたらよいんじゃないかと思います。 |
膀胱癌にかかる危険性
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E氏 |
私も膀胱瘻にして12年目なんですが、膀胱癌のリスクが高くなるというお話がありましたが、確率的なデータというかそういうものはどのくらいの高リスクなのか、ほとんどの癌いろいろあると思うんですけれども、神奈リハの症例などではどうなのでしょうか? |
先生 |
神奈リハでは、膀胱瘻から膀胱癌になったという例はありません。ただ、先ほどもお話したようにその期間は30年、40年という単位ですから、神奈リハが始まってまだ30年くらいですから、あそこで看ている人たちそろそろ30年になりますが。後は、文献的なことでは数が少ないのでなかなか何%に出てくるぞというのは、今のところはっきりしたデータではつかめていません。 |
E氏 |
膀胱瘻の場合、バルーンカテーテルを入れるんですけれども、親水性のカテーテルが体によいというふうにちょっと聞いたんですが、やはり体のためにはカテーテルの素材をも選んだほうがよろしいんでしょうか? |
先生 |
そうですね、もちろん生体に反応の少ないのがよいと思います。 |
E氏 |
先生がお勧めの……けっこう神奈リハ、シリコンが多いですよね? |
先生 |
シリコンでよいと思いますよ。 |