< 特集! 電動車椅子−その細かな進化 > 今回の特集は「電動車椅子−その細かな進化」と題して、電動車椅子のユーザーからいただいた貴重な情報を紹介させていただきます。 ご自身に適した電動車椅子の仕様を決めるにあたって、専門業者の知識や経験に頼る必要があるのはもちろんのことですが、実際に日常生活で使用されているかたがたの情報をより良い仕様策定のための予備知識にしていただければと思います。 特集 6輪中輪駆動は快適
〈1〉 現用機のメーカー・モデル名 INVACARE(インバケア) ATO−TDX SP−MCG 〈2〉 現用機の主な仕様 ≫6輪 中輪駆動 ≫ティルト角度 45度 ≫フルリクライニング ≫ロホクッション ≫メッシュ状背当クッション ≫MK6i PSF ジョイステック 〈3〉 電動車椅子使用累計年数と更改した回数 30年 6回 〈4〉 「これは便利だ!」と思ったこと ≫6輪車:前後、左右の傾斜面に対して安定性を保持することに優れている ≫中輪駆動:狭い場所(お店等)でも小回りに長けている 〈5〉 これまでに困ったと思ったこと ≫姿勢保持 ≫背面のリクライニング後に生じる身体のズレ 〈6〉 とくに自分用に工夫していること ≫座面上の前後に傾斜をつけ、尻側よりも膝を高く維持する ≫姿勢保持のために左右肘受け柱にクッションを設置 〈7〉 近い将来に導入や更改を予定しているかたへのアドバイス 購入以前に車椅子販売業者と交渉し、可能な限り試乗運転を行うこと 〈8〉 今後への期待 ≫軽量化 ≫低価格化 ≫簡単操作のコントローラー 東京都:H.K. 特集 車椅子でスマートフォンが活躍
〈1〉 現用機のメーカー・モデル名 インバーケア社(米国)TDX 〈2〉 現用機の主な仕様 ≫6輪型(中輪駆動) ≫ティルト ≫リクライニング ≫フットレストエレベーション ≫JAYクッション ≫チン(顎)コントロール 〈3〉 現用電動車椅子使用年数とこれまでの更改回数 約5年。友人から譲っていただいた電動車椅子も含めて6台目。 〈4〉 「これは便利だ!」と思ったこと 臀部の除圧効果と身体を休める意味でティルト 〈5〉 これまでに困ったと思ったこと 故障のとき。予備の電動車椅子が欲しい。 〈6〉 とくに自分用に工夫していること スマートフォンをマウススティックで操作できるように改造・工夫 〈7〉 近い将来に導入や更改を予定しているかたへのアドバイス 電動車椅子は、「カッコイイから」とか「〇〇さんが乗ってるから」といった基準で購入するものではありません。本人の意向はもちろんですが、障害、住環境、行動範囲、介護体制、金銭面など自分の生活にあった電動車椅子を製作、購入してください。 同じ障害を持つ仲間、リハエンジニア、セラピストの助言も大切です。 広報担当:麸澤 孝 特集 役立つ赤帽子
〈1〉 現用機のメーカー・モデル名 今仙(イマセン) リクライニング電動車椅子レカロシート仕様車 (リクライニングシートをレカロシートと交換したもの) 〈2〉 現用機の主な仕様 ≫4輪 後輪駆動 2モーター方式 (前輪2つはキャスター) ≫リクライニング角度90度〜150度 ティルトなし ≫座面ロホクッション ≫布張り背面サポート ≫コンピューター制御ジョイステック式 コントローラ 〈3〉 電動車椅子使用累計年数と更改した回数 29年 3回(現在使用中のものが4台目) 〈4〉 「これは便利だ!」と思ったこと もうかなり前のことだが、アナログ制御からデジタル制御に変わったために、登坂、平坦、下り坂に関係なく一定の速度で走れるようになった。 〈5〉 これまでに困ったと思ったこと バッテリーの不調で、使用中に、バッテリーの残量がどんどん減ってしまい路上で、「END」と表示がでて、ピタリと動かなくなった。アナログ時代は残量が0でも、「ガンバレ、ガンバレ」のかけ声で、少しは動いて急場がしのげた。人間味があってよかったなあ。デジタルは冷たくて非情だ。 〈6〉 とくに自分用に工夫していること 車椅子は、背が低いために特にワゴン車などの高い運転席からは見えづらいらしい。 車椅子の安全は、いかに早く、車の運転手が車椅子に気がつくかに、かかっています。 この対策として、私は、目立つように広島カープの赤色の帽子をかぶることにしています。バスの車内で広島カープファンですかとよく聞かれますが、そのときは、「はい、セリーグは広島、パリーグはソフトバンク」と答えるようにしています。広島カープ赤帽子には、安全以外にも、車内で知り合いに出あったような和んだ気分になるというご利益あるようです。 〈7〉 近い将来に導入や更改を予定しているかたへのアドバイス どんな使い方をするかをよく考えて決めることが大事です。 スズキと今仙の電動車椅子しか知りませんが、それぞれ特色があります。 私感を述べると次の様になります。 スズキの方が車体はわずかに大きくタイヤも大きいです。そのために、乗り心地はスズキの方がまさっています。いわば普通車と軽自動車の乗り心地の差みたいなものです。しかし、室内では小回りが効く今仙の方が勝っています。バッテリーの取り外しや交換のときは、スズキではシートをはずす必要があるために車椅子に乗ったままの状態ではできないので一旦降りる必要があます。今仙では車椅子に乗ったままの状態で取り外し等ができます。飛行機にのるときには、鉛バッテリーはウエットバッテリーとみなされるために取り外さなければなりません。こんなときに便利です。 あと気をつけるところは重量です。福祉車両や家庭用エレベーターでの重量制限をクリヤーするのか。 また、高さの制限もあります。故障の際のメインテナンス体制も考えおく必要があります。 〈8〉 その他 現在、普通車の福祉車両を使っていますが、頭が車の天井につかえるために少しリクライニングした状態で使用しています。背が低い車椅子が欲しいです。スプリングを犠牲にして低くした車椅子がありますが、乗り心地もやはり大事です。 福岡県:Y.I. 特集 Gトラック・ラッチドライブで安心
〈1〉 現用機のメーカー インバケア 〈2〉 現用機の主な仕様 ≫トルクSPフォミラー チルト&リクラ Gトラック ≫ロホクッション ≫チンコントロール 〈3〉 電動車椅子使用累計年数と更改した回数 使用36年 更新5回 〈4〉 「これは便利だ!」と思ったこと ≫Gトラック(傾斜のある歩道などでも、片流れせず真っ直ぐ走れる機能) ≫レッグサポートをコントロールで上下に動かせる ≫ラッチドライブ(自動運転〈コントロールを一度動かせると同じスピードで真っ直ぐ走る機能〉) 〈5〉 これまでに困ったと思ったこと ≫パンク ≫リクライニングの故障 〈6〉 とくに自分用に工夫していること ≫電動車椅子後ろのバックの中にタイヤのチューブを入れている ≫電動車椅子にフロント・リアライトを取り付け ≫バックミラーとモニターに時計を取り付け 〈7〉 近い将来に導入や更改を予定しているかたへのアドバイス 何故、その電動車椅子が必要なのかを納得させる説明 〈8〉 その他 ナビ機能が欲しい 神奈川県:M.I. 特集 6輪型車椅子を製作中
約30年のあいだに3台作った。1台10年使ったことになる。今度作るものは人生最後の車椅子になるだろう。なるべくいいものを作りたい。 わたしにとっていい車椅子とは、まず背中が痛くないもの。背中、特に左の肩甲骨が年中痛む。「肩甲骨を除圧したい」といっても、業者にはなかなか伝わらず、「では最高級のクッションを入れましょう」といって、新しいクッション材を背もたれに足してくれる。エアマットのベッドに寝ても痛いのに、何を足してもダメなのだ。肩甲骨の当たる部分のクッションをくりぬいてもらった。突き刺すような痛みはとりあえずなくなった。だが福祉車両に車椅子ごと乗り込んで30分も揺られると冷や汗が出てくる。「揺られているうちに気持ちよくなって眠ってしまう」というひともいる。うらやましい。痛みについてはまた別の機会に書こう。 東京ビッグサイトで年1回開催される「国際福祉機器展」に行った。そこで旧知のさいとう工房が「レル」という新機種を発表していた。これがすばらしい。「レル・ライト」と「レル・リフト」がある(レル・リフトは座面が高くなるもの。わたしがほしいのはライトのほう)。 ◇長所 〈1〉 ティルト&リクライニングでフルフラットになる。これはいま使用中のものもほぼなるので、さほどおどろかない。 〈2〉 座角変換で座面の前後が上がったり下がったりする。座面の前を下げれば、低いテーブルにも入れる(通常より10センチほど座面を下げることができるが、少し慣れが必要とのこと)。それよりわたしがほしいのは左右の座角が変えられる機能だ。道路は常に左右どちらかに傾いているから、四肢マヒは車椅子が傾いたら体も傾いてしまう。レルの動画のなかに左右座角変換装置を見て「これだ!」とおもったが、まだ試作段階で、公費で認められる可能性は低いとのこと。 〈3〉 座席の幅・奥行き・高さをモジュール式で変えられるから、改造費がかからない(納入後に変えるのは困難)。 〈4〉 さあ驚くべきはここから。段差解消補助輪付きだからかなりの段差を乗り越えられる。現在、一般的な車椅子では3センチになると越えられないだろう。だから横断歩道のカットダウンと車道の落差は2センチまでと道交法で定められている。斜めからの段差突入も可能で、踏切の線路にも落ちない。 〈5〉 従来の電動車椅子では170〜190センチほどの旋回直径が必要だった。レルならおもいきり背もたれを起こせば95センチあれば回れる。6輪車椅子だからえらく小回りがきくのだ。狭い家のなかでも使える。いままで入れなかったところにも行ける。アメリカのような広い家屋で認められている6輪機能が日本で認められていないのは、JIS規格でそうなっているため。狭い日本でこそ認められなければならない規格なのに。だがここにきて東京オリンピック・パラリンピックが功を奏した。経産省が動き、斎藤氏もJIS化委員に推挙されたので、日本でも本格的に6輪の電動車椅子が家の中で使用されるようになる日は近い。ちなみに日本で車椅子が普及したのも、1964年、東京でパラリンピックが開催されたさい、海外の選手が車椅子に乗っているのを見て、世界にはこんなものがあるのかと驚嘆したのがきっかけだった。日本も昔は後進国だったのだ。 〈6〉 こういう機能は以前にも見たことがあるが、膝から下が単独で上げられる。起立性低血圧に苦しむわたしにはうれしい機能だ。 ◇短所 〈1〉 基準外(特例補装具)になる、ということは高く付くという意味だろう。YouTubeで見られる「レルⅡ」はコンセプトカー(試作品)。なんといってもまだ実際に使っていないので、きめの細かい報告ができない。これが本レポート最大の短所。 規格品に試乗してみたが、小さいスイッチがたくさんあって、しかもそのスイッチ台が細長くて、とても先端まで手が届かない。現状、四肢麻痺の利用者は少なく、対麻痺のひとが多いようだ。それほど多機能にしなければ、この点は四肢マヒでも自分に合うように改造してもらえる。 〈2〉 北海道や沖縄のひとはどうしたらいいのかとさいとう工房に問い合わせたら、まず電動車椅子を修理改造する能力のある業者がいるかどうか。規格品でも納入には半年ほどかかる。遠方のユーザーが購入するばあいは、地元の業者が障害者福祉センターに書類申請やデモンストレーションをおこなわなければならないとのこと。これは皆さん慣れているのではなかろうか。(以上) さいとう工房 〒130-0004 東京都墨田区本所4-27-3 電話 03-3621-0508 FAX 03-3621-0537 メールアドレス info@saitokobo.com http://www.saitokobo.com/index.html 東京都:F川 特集 マイ車椅子の紹介
今回は電動車椅子特集ということで、マイ車椅子を紹介させていただきます。 私が電動車椅子を利用し始めたのは、受傷後3年目の1996年で、それから2000年までの間、病院からお借りしたものが1台目でした。2台目は行政からの補助で入手し、2000年〜2013年まで13年間使いましたが、バッテリーやタイヤの交換が必要との指摘を受けたりしたので、今の3台目を2台目同様に行政からの補助で入手させてもらいました。2013年2月に申請してから納入が9月と、とても時間がかかりました。 (1)基本仕様 イマセン製EMC−930電動車椅子電動リクライニング式普通型(440,000円) 基本仕様の速度は、2.5、4.5、6.0km/時の3速なのですが、6.0km/時は余計でした。私の場合、不定期の痰(たん)の吸引のためにヘルパーさんに付き添ってもらう必要があるのですが、速いとついて来ることができません。 (2)必須追加仕様 〈1〉 電動スイングチンコントロール一式(213,000円) アゴで操作します。 〈2〉 張り調整式バックサポート(15,080円) 〈3〉 跳ね上げ式アームサポート(4,680円×2) 〈4〉 開閉・脱着式レッグサポート(6,790円×2) (3)オプション 〈1〉 アームレスト。腕が効かないので、それまでは手を腿(もも)の上に置いていたのですが、痙性(けいせい)が起きると車椅子の外側に飛び出してしまうことがあり、その対策として、2台目の車椅子を入手した数年後の2006年ごろに作成してもらいました。両腕分で5万円ぐらいだったと思います。3台目でもそのまま使っています。アームレストには腕を抑えておくためにマジックテープのついたバンドが付属しています。 〈2〉 ロホクッション(2015年・48,600円)。褥瘡(じょくそう)予防の必須アイテム。2台目の車椅子で使用していたものを、3台目でもそのまま使っていたのですが、さすがに15年目でカバーが破けてしまったので、新しく2個目をお願いしました。1個目のものはクッション本体は健在なので、今はベッド上で座位をとるときに使っています。 〈3〉 バッテリー(密閉型)2個と内蔵充電器 (28,800円×2+47,600円) 基本仕様では鉛蓄電池なのですが、飛行機を利用した時に密閉式を要求されたので、飛行機利用もあり得ると考えて密閉式にしてもらいました。注意したいのは、バッテリーは本当に消耗品だということです。納入の1年半後にはもうバッテリーの交換を行わなければなりませんでした。 〈4〉 ティルト(542,000円) 褥瘡予防に効果があるという助言があり、当初要望仕様に加えさせてもらったのですが、基本仕様より高価だったのにはびっくりしました。果たして本当に効果があったのか? 正直不明です。 〈5〉 痰の吸引器の搭載台と転倒防止装置(キャスター付き折りたたみ式・25,000円+7,740円×2) 人工呼吸器と痰の吸引器は外出時も必須なのですが、2台目の車椅子まではヘルパーさんにキャリーカートで運んでもらっていました。今は、呼吸器を車椅子の後ろにくくりつけ、吸引器を車椅子の後ろの搭載台に載せて移動しています。 〈6〉 スロープ固定(販売店のサービス) 階段のあるお店でも入れるように、スロープを車椅子の横に固定できるようにしてもらいました。ただ、スロープの厚さの分だけ車椅子の横幅が広くなりますから、お店に入る時は入り口が狭くて苦労することがあります。なお、スロープ自体はデクパックというのを別途インターネットから5万円弱で購入しました。 〈7〉 テーブル(10,900円) 車椅子上で食事したりするのに便利かなと思って付けてもらったのですが、これは失敗でした。ティルトするとテーブルが傾いてしまうのです。 (4)最後に 〈1〉 上記の金額の総計は1,538,200円(税抜)で、このうちの自己負担はスロープの5万円のみでした。 〈2〉 (3)〈4〉の搭載台も〈5〉のスロープ固定も実は東京のFさんが実用していたものを参考にさせてもらったもの、というか完全なパクリです。 「はがき通信」の懇親会に行けば、いろいろ参考になる工夫がありますから、皆さんぜひ参加しましょう。 (2016年7月27日記) T.H. |
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