はがき通信ホームページへもどる No.155 2015.10.25.
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 鼠径ヘルニア 

頸損歴26年、C3〜5不全、♂、75歳

 鼠径(そけい)ヘルニアといえば少しは人に話せる病名だが、昔風に言えば滅茶苦茶ダサい〝脱腸〟体験について書いてみます。
 ある日の入浴中のこと。いつものように2人のヘルパーさんに前後から介助されながらリフトで吊り上げられていたとき、前を担当していたヘルパーさんが怪訝(けげん)そうに1点を見つめ首をかしげている。そして「何だか変、右の下腹部が少し腫れてるみたい」と言うので見てみたら、なるほど、その部分がお椀を伏せたようにポッコリ膨らんでいた。仰向けのときはほとんど目立たず、特に痛みも自覚症状もないのでそんなに気に掛けていなかったが、徐々に違和感と痛みが出るようになった。あわてて受診したら鼠径ヘルニアだと言われ、オペ以外に完治はなく、かんとん(陥頓:筋膜を飛び出た腸が戻らなくなる状態)を起こしたら激痛を伴い腸が壊死し、命にかかわる等の説明を受けてオペ選択を余儀なくされた。
 ベッドでのエアーマット使用や排泄などの日常生活の説明をし、それに沿った対応が可であることを聞き安心する。入院当日、少し早めに妻の付き添いでリフト付きタクシーを利用して着院。簡単なインフォームドコンセントによると、クーゲル法といって弱った筋膜の内側にメッシュを入れ腹壁を支える術らしく、普通は局所麻酔だが全身性まひの患者は初めてなので全身麻酔で行う。入院も通常5日間だが1週間となった。
 いよいよオペ当日、朝、浣腸120ccで排便を試みたが出ないまま午後のオペに臨む。オペ室ではドクター5名、ナース5名で脱腸のオペにしてはチョッとオーバーかなと思う体制。麻酔が効きだした頃、んっ? あ゛あ゛〜便が出てるうと告げ……「大丈夫、大丈夫」の声が遠くなり……。
 術後の院内ではほとんど痛みもなく快調で、後半はベッドサイドのリハビリと退院に向けて車いすでの時間を入れる。入院中の排尿は、ユリドームを着けずオムツのため、1日昼夜を問わず何回となくオムツと入院衣やシーツの交換に手を煩(わずら)わせて気の毒であった。
 脱腸の原因は加齢が多く、他に便秘・排尿障害もあるという。私の場合は、特に後者だろうと思う(強調)。長いあいだ排ガス・排泄のために、就寝と起床時、入浴時、排便時に腹部をヘルパーさんにかなりの力で叩いたり圧したりしてもらってきた。
 術後は恐ろしくて排便のときだけ腹部に手を当ててもらい、その手の平に自力で腹を膨らまして調整しながら圧を掛けている。オペに関する医療系のネット情報では、痛みも少なく日帰りで翌日から職場復帰も可とあるがとんでもない。2か月ほどは鎮痛剤のお世話になるし、半年くらいは腹部のどこに触れても飛び上がるように痛む。2年経った今でも時折りキリッと来る、特にプッシュアップのときなど。
 腹圧を利用している諸氏は、くれぐれも用心されますように。ありがとうございました。

佐賀県:K.N.


 頸損と介助犬(その4) 


 現在の時点で介助犬を迎えるための合同訓練を始めたのが、1年前のこと。9月の末から12月の上旬まで、1日2時間程度で最低法定日数の40日間を多少超えての訓練を行いました。これは私の事情や体力、訓練事業所さんの予定等を相談してできた日程でした。
 訓練事業者さんは誠実な青年で好感を持つことができて、コミュニケーションとしては、思ったことをハッキリと伝えて問題を解決できるように心がけた。しかし、犬の訓練に長けているにしても「頸損」という障害に関しての認識は、あまり評価のできる状況では無い部分はご愛嬌と言うべきであろう。頸損で『C6A・C6B』レベルの状態であれば、そもそも犬が好きであり飼育の部分を家族等に任せる環境と周辺環境を整えれば、介助犬の存在がプラスに働くことも多いというのが私の感想である。
 つまり、世の中で普及に使われる「自立への手助け」や「手段」としての言葉通りに、受け取ることは現実的とは思いにくい。まぁ、この感想がこれから先、数年過ぎた頃に「そんな時期を乗り越えたねぇ」と変化していくものなのか? この点は、私自身が楽しみな部分でもある。
 身体的自由度があることと家庭の環境的なことも合わせて、介助犬と暮らすための全般を自分自身で解決をしなくてはならず、排せつ物の処理や給餌(きゅうじ)の際にバランスを崩して落車の危機に陥ったり、介助動作の指示を聞かずにテーブルの下に潜り込まれて困ったりと、その話は「ネタか!」と言われそうなエピソードを蓄積させながら、ひたすら年内(2014年中)に認定試験を受けることを目標としての日々をこなしていきました。
 (以下、続く。)

東京都:K.S.



 「何かあったら責任取れない」 


「1人では危険だから、2人介助者を連れてきてください」と言われるようになってきた。私の重度化が進んだのだろうか? 「私は資格を持っていないので、何かあったら責任が取れないので……」と。59年間、1度も「何か」はなかった。「何かがあったら……」は、言い訳に過ぎない。多くの障害者が同じことを言われて、大切な人生をむなしく過ごした。障害者側が何か言っても良いのなら、何か言っておきたい。
 最初は、プールで、一番怠慢で何もしないプール職員に言われた。私はカッとなったが、怒りを抑えた。
 急に車イスに移乗ができなくなって、ハンディキャブ運転手に頼んだら、事務所から電話がかかってきて「ヘルパーを頼んでほしい」と言われた。
 「介助」には、「何かあったら責任取れない」が常につきまとう。結果、人生全体が消極的になる。これは、肢体不自由だけではなく視覚障害者の行動を見ても、介助如何によって行動範囲が規定されてしまっている。知的障害者も、めったに事故はおきないと言ってもどこにも行けないで、自宅で間食をしてブクブクと太っていく。
 障害者側が「責任は自分でとります」と、一筆入れれば良いのか?
 「家族は、だれかいないのですか?」と言う人も多い。「家族は、障害者の世話をする責任がある」と言うのは、世界の非常識。家族は、関係ない。少なくとも日常の世話をしているのだから、「あなたが来たときは、あなたにやってほしい」のよ。何があっても責めないからさ。
 それにしても、常識的に考えて『重度』は、(たくさん年金をもらっているのだから)「金でヘルパーを雇うのが常識でしょう」と言う声が聞こえてくる。こわ〜い。

東京都:M.K.









【編集後記】


 猛暑だった夏ですが、皆さん、お元気に乗り切られたでしょうか? この「はがき通信」が発行される頃は、横浜懇親会も終わっていますが、今は、無事に終了することを願うばかりの心境です。
 さて、前号で麸澤さんが《ごあいさつ》で、加齢等に伴う健康管理の重要性を述べられていました。また、152号でIさんが「どんな検査等を受けているのか?」皆さんに質問されていらっしゃいました。
 私の場合をここに書いてみたいと思います。年に2回程度の尿検査、年に3回程度の血液検査、骨密度検査(体脂肪も一緒に測れる)、市から受診券が配布される特定健康診査(血液検査他心電図・眼底検査等)、胸部レントゲン、乳がん検診、胃カメラ、半年毎の歯科検診、半年毎の尿路系CT(結石の有無と腎臓や膀胱の状態の確認←腹部の臓器の様子もわかる)、腎臓と膀胱の超音波検査、インフルエンザの予防接種といったところでしょうか。
 私も、五十路になってから完全に“守り”に入ってしまったような気がします(笑)。
 次号の編集担当は、藤田忠さんです。

編集担当:瀬出井 弘美





………………《編集担当》………………
◇ 藤田 忠  福岡県 E-mail:stonesandeggs99@yahoo.co.jp
◇ 瀬出井弘美  神奈川県 E-mail:h-sedei@js7.so-net.ne.jp
◇ 戸羽 吉則 北海道 E-mail:toba@blue.ocn.ne.jp

………………《広報担当》………………
◇ 麸澤 孝 東京都 E-mail:fzw@nifty.com

………………《編集顧問》………………
◇ 向坊弘道  (永久名誉顧問)

(2015年2月時点での連絡先です)

発行:九州障害者定期刊行物協会
〒812-0054 福岡市東区馬出2丁目2-18
TEL:092-292-4311 fax:092-292-4312
E-mail: qsk@plum.ocn.ne.jp

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