はがき通信ホームページへもどる No.124 2010.8.25.
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 『臥龍窟日乗』 —テーブルチェック— 


 レストランの勘定を、レジではなくテーブルについたまま済ませることをテーブルチェックという。最近、日本人の間でも普及してきたが、怖い話をひとつ。
 平成15(2003)年9月。毎年この時期、ラスベガスでは世界最大のサイクルショーが開催される。新年度モデルが一斉に発表されるとあって、わが社では是が非でも行かねばならない。だが誰も忙しくて時間がとれない。結局一番暇な社長がいってくれと、滞在24時間で往復する破目になった。
 当時、成田=ラスベガスの直行便は日航とノースウエストが就航していたが、いつものようにいったん台北に行き、そこからラスベガスへの往復航空券を買い求めた。台北から成田経由でラスベガスへ飛ぶのだが運賃ははるかに安い。厳密には航空法違反なのだが商社マンはほとんどこの違反をやっていた。(現在は廃止路線となっている)
 ラスベガスは盆地状になった砂漠の中に人工的に造られた街だ。近くの湖から水を引いてひとつの街をつくってしまうのだから、アメリカ人のやることもスケールがでかい。旧市街は北東部にあるが現在ではゴーストタウンのような様相だ。
 ストリップ(繁華街)と呼ばれるのはラスベガス通りのシーザーズパレスからサーカスサーカスというホテルの間までをさしていたが、最近ではシーザーズパレスの南側が開けてきているようだ。わが社では1泊30ドルで泊まれるというので、サーカスサーカスのそばのモーテルを定宿としていた。サイクルショーの会場・サンズコンベンションまでは徒歩15分である。
 ショーの会場では旧知の友人に会い、久しぶりに夕食をともにした。ストリップから少々路地を入った中華料理屋で歓談し、友人とはそこで別れた。帰り道、スーパーマーケットに寄って、ワイン、プロシュート、メロンを買いモーテルに戻った。結局ラスベガスで歩いたのは会場内を除くとこの往復30分のみである。翌日午前、成田行き直行便に乗り込んだ。
 「出費もごくわずかだった」と独り悦に入っていたら、ひと月ほどたってクレジットカード会社から140万円もの請求が来てびっくり仰天だ。
 カードを紛失したわけではない。カード会社が発行した正真正銘のカードが私の手許にある。電話で利用明細を尋ねると、サンタバーバラで骨董品(こっとうひん)を購入したらしい。もちろん心当たりはない。日付を聞くと私がアメリカを出国した3日後のことだ。偽造カード使用者が本人でないことは、パスポートの出入国記録が証明してくれる。
 私が第三者にカードを預け出国した後、第三者か骨董品をだまし取りカードだけエアメールで日本に送るという方法もないではないが、そんな手の込んだ手口は組織犯罪でもなければ不可能だろう。いずれカードの所有者に嫌疑がかかる。
 滞米中の24時間を振り返る。カードを使ったのは中華屋とスーパーの2度だけである。中華屋の方で、いつものようにテーブルチェックをした。その時の情景が鮮やかに甦(よみがえ)った。カードを託したウェイターは20分たっても30分たっても戻ってこなかった。40がらみの大柄な中国人で、やたら愛想がよかった。
 滞在時間が短かったことが幸いした。中華屋でデータを読み盗られたに相違ない。
 カード会社の話ではこの時期、ラスベガスで同様の事件が多発した。数10人もの日本人がデータを盗まれているが、利用者がダブっている店が複数ある。わずか数キロメートルのストリップに数千店のホテル、カジノ、レストラン、土産物店などがひしめき合っている。どの店で犯行が行われたか特定できなかった。私は2度しかカードを使用していない。「お蔭で犯人にアシがつく」と感謝された。
 カードからデータを盗む機械があるとは聞いていた。どんな最新鋭のものかは知らない。犯人は私がルーレットに血道をあげているさなかであろうくらいに甘く見た。だが私は名うての博打嫌いで通っている。さすがに最新鋭の機器も、私がギャンブルアレルギーのデイトリッパー(日帰り旅行者)だとまでは読み取れなかったようだ。

千葉県:臥龍



 ハワイに行ってきました 


 先日、6月4日から10日までハワイにのんびり行ってきました。私事ですが、じつは今年の1月、兄が亡くなりました。まだ68歳の若さだったので、けっこう辛いものがありました。人間、何時どうなるかわかりません。真面目で仕事一筋の兄貴だったので、特にいろいろ感ずるところがありました。
 そこで元気なうちにいろんなところに出かけようと思い、今年は4月の伊勢神宮から始まって箱根、ハワイ、山中湖、軽井沢、鳥取、函館、沖縄と歩いて最後はホノルルマラソンに挑戦しようと思っています。
 車椅子になって2回目のハワイですが、やっぱりハワイは何度行ってもいいですね。今回は栃木の研修仲間夫婦と4人で行ったのですが、まず飛行機の中での排尿ですが、僕は尿意はあるのですが、バルーンを入れてレッグバッグを付けて行くことが正解です。
 ホテルはいつもハイアットリージェンシーに泊まるのですが、前回とまったく同じ部屋でした。ハワイは、さすがバリアフリーが進んでいる国だと思うところがいくつかありますのでご紹介したいと思います。
 ホテルですが、ツアー会社に車椅子使用者であることを伝えておいたところ、ベランダに出るためのスロープがあり、トイレも手すりが付いていて、洗面台も車椅子が入る高さになっています。シャワーも車椅子のまま移れるように椅子が付いています。ベッドが少し高かったので、下の台を取ってもらい自分の車椅子と同じぐらいの高さにしてもらいました。
 行った日に必ず行くステーキハウスは、オハナ・イーストホテルの地下なので前回、誰かに背負ってもらうしかないなぁと思っていましたが、ちゃんと違う所にエレベーターが付いていました。ホテルもそうですが、元気な時は全然気が付かなかったことがいくつかありました。レストランも日本料理屋もほとんど車椅子のまま入店することができます。本当にありがたいですね。また、お店も道路もほとんどバリアフリーでエレベーターも付いているのでとても助かりました。
 今回は初めての人がいたので「車椅子ハワイ・ドットコム」という会社のSさんに、行く前から島内一周観光とパワースポットをお願いしておきました。朝、9時から夕方6時までびっしりと観光案内をしていただき、ガイドも素晴らしかったのですが車椅子のまま乗れるリフト付きの車でしたから、乗り降りがとてもスムーズで車椅子も押してくれるのでとても助かりました。以前はリフト付きのバスだったので乗り降りにとても時間がかかり、他のお客様にとても迷惑を掛けたことを思い出します。
 トイレの件ですが、トイレは日本のほうがはるかに進んでいます、ハワイでは確かに車椅子のマークは付いていますが、男女それぞれに少し大きめのスペースのあるトイレがあるだけです。ほとんど男性用に女房と一緒に入るわけですが、たまに男性用が使用中の時は女性用に入らなければなりません。ハワイのトイレはほとんどが膝から下ぐらいの所から開いていまして、隣で用を足している人の足がそっくり見えるのです。僕が入ったすぐあと隣に真っ赤なマニキュアを足の爪にした若い子が入ってきまして、隣で息を殺してその子が終わるのを待っていました。その時つくづく、「俺には覗きはできないなー」と思いました。と同時にいつも男のトイレに入っていましたから、「女房には大変辛い思いをさせてしまっていたんだなー」と反省もいたしました。ですから、次回からはレッグバッグを付けてあまり女房に迷惑をかけないようにしようと再認識しました。
 今回のハワイは女房をのんびりさせてあげようということが目的の一つでしたので、たまには違ったホテルに行ってゆっくり食事をしようということでシェラトン・ワイキキとザ・ロイヤル・ハワイアン・ホテルに行きましたが、ロイヤル・ハワイアン・ホテルでは軽食と喫茶ができる柵(さく)の目の前がワイキキビーチです。そこに座ったとたん尿意をもよおしてしまい、ウエイターの方にその旨を流暢(りゅうちょう)なジェスチャー付きの日本語で伝えたところ、すぐ理解していただき、連れて行っていただいたところがファミリーと書いてあるトイレでした。しかし、ここに入るのには鍵(かぎ)が必要なんです。違う係りの人を呼んできて、2箇所付いている鍵を何とか時間をかけて開けていただきました。急ぎの場合はちょっと無理ですね。ハワイには確かにファミリーと書いてあるトイレがショッピングセンターなどにはあるのですが、ほとんど鍵がかかっていてわれわれにはあまり意味がないトイレです。しかし、中は立派な大理石張りで豪華そのもののトイレでした。あまり使用していないためでしょうね。
 さて、その後はつらいことがあれば楽しいこともあります。一番ビーチよりのパラソルの椅子に座り、軽食と飲み物を注文し目の前の若いギャルたちのはしゃいでいる様子を楽しんでいました。胸の谷間は水着からこぼれそうで、お尻の割れ目は半分ぐらい見える水着とは名ばかりの紐(ひも)パンツ、あれでは着けないといっしょじぁないかとサングラスの下のつぶらな瞳がやけに納得していました。時間の経つのは早いものです、あっという間のひと時。女房孝行が亭主孝行になったような貴重な時間でした。次に来る時はなぜかここら辺のホテルに泊まろうと、よさを無意識のうちにアピールする自分がいました。すべてを理解済みの女房は軽くうなずいていました。さすが結婚40年と言うほかありません。いつもながら頭が上がりません。







 その夜は、山中湖在住のO内先生とハワイ生まれのジャネットご夫妻の娘さん「キアナ」がカラカウア通りでストリートミュージシャンをしております。7月も3、4日と1泊で、山中湖のホテルマウント富士にて「安らぎのワークショップ」というセミナーがあります。僕たちもその時、キアナとはじめて逢ったのですが、じつは女房は「あたしこの人の歌を聞いたことがある」と言い出しました。そんな馬鹿な、と思いましたが本当でした。ハワイに行った時、われわれの泊まったホテルの真下でキアナは歌っていたということでした。驚きですね。
 今回は、ゆっくりとキアナの素晴らしい歌声とお客様を引き付ける笑顔とコミュニケーション作りが大変勉強になりました。ハワイに行った方は、ぜひ9時過ぎとちょっと遅い時間ですが、ギターを抱えて歌っているキアナの所によって見てください。けっこうエネルギーをもらえますよ。シェラトン・プリンセス・カイウラニ・ホテルの前あたりで歌っています。今回も、新しい日本料理屋さんを見つけました。カラカウア通りでも一番動物園よりのところにある、「義経」というお店です。ここもやはりホテルの1階です。値段はリーズナブルでとてもおいしく、なんといっても女将が素晴らしく、楽しい人です。僕も1回でファンになってしまいました。次回は必ず行こうと決めました。芸能人もけっこう来るそうです。それもうなずけるような感じのいい素晴らしいお店です。ハワイに行った方はぜひ寄ってみてください。



 僕らは、どうしてもステーキは1度ぐらいで後は日本料理になります。ハイアット・リージェンシー・ワイキキの真裏にある、日本料理の「踊り子」、それからその近くにあるラーメンの「えぞ菊」、どちらも僕的にはけっこうおいしいですよ。あと観光はいろいろなものがたくさんありますが、お勧めはスターオブホノルル号で行く「サンセットディナークルーズ」ですね。ロブスターからステーキまでフルコースが出て、豪華船から見るサンセットとホノルルの夜景は最高です。
 とりとめのない話になってしまいましたが、ハワイは素晴らしい島で車椅子でも簡単に行けるところです。ぜひ皆さんも気軽に行ってみてください。昔に比べたら旅費もずいぶんと安くなってきました。ドル交換は成田で1ドル95円でしたが、ホノルルでは92円でした。今度ハワイに行く方は頭に入れておいてください。ハワイの方がお徳です。
 

山梨県:H.N.







【編集後記】


 6月18日から膀胱結石で入院した。今回で2度め。今回は結石が大きかったため、開腹でのオペ(局所麻酔)となってしまった。その原稿は、また「はがき通信」に書きたいと思う。
 そのベッド上で鳥取のY脇さんの訃報(ふほう)をお聞きして、身体中の力が抜ける思いだった。体調をくずされて緊急入院されたことは知っていたが、秋に鳥取に行く計画を立てていた矢先の訃報……本当にショックだった。沖縄では、お元気そうだったのに……。
 Y脇さんとは、2002年に開催された京都懇親会のときに初めてお会いした。故向坊さんと同い年。そのときに、『ドリームリーフ』という植物をいただいた。『夢の葉っぱ』……とても生命力の強い植物で、葉っぱ1枚を水に浮かべておくと葉のギザギザの部分から芽を出す。
 大きくなるのを剪定(せんてい)しながら、ずっと自室で育ててきた。「花が咲くんだよね」とY脇さんはおっしゃっていたが、Y脇さんも私もドリームリーフの花を8年も経つが、まだ1度も見たことがない。いつかこの葉っぱに花が咲くことを楽しみに待ちながら、Y脇さんの分までこれからも育ててゆこうと思う。心からご冥福(めいふく)をお祈り申し上げます。
 次号の編集担当は、藤田忠さんです。 



編集委員:瀬出井 弘美







………………《編集委員》………………
◇ 藤田 忠  福岡県 E-mail:fujitata@aioros.ocn.ne.jp
◇ 瀬出井弘美  神奈川県 E-mail:h-sedei@js7.so-net.ne.jp

………………《広報委員》………………
◇ 麸澤 孝 東京都 E-mail:fzw@nifty.com

………………《編集顧問》………………
◇ 松井和子            
◇ 向坊弘道  (永久名誉顧問)

(2010.4.1.時点での連絡先です)

発行:九州障害者定期刊行物協会
〒812-0069 福岡県福岡市東区郷口町7−7
TEL&FAX: 092-629-3387
E-mail: qsk@plum.ocn.ne.jp

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