は が き 通 信 Number.29---PI
POST CARD CORRESPONDENCE 1994.9.25
ごあいさつ

最大級の暑い暑い夏をいかが過ごされましたか? ヨーロッパでも100年ぶりの暑い夏でした。これは人間が環境を破壊しつづけてきた結果だと思います。車イスに乗っている私たちがまず人間の傲慢さに気づき、そして警告を鳴らしていきたいものです。                   

1994年9月25日 向坊弘道
2ヶ月遅れの通信

福岡県 KM

毎日暑い日が続いていますが、お元気でお過ごしでしようか。
先日 はがき通信の28号を受け取りましたが、5月中旬 そちらに送った私の通信が記載されておりませんでした。海外へ出張される直前でしたので、手違いが生じたのでしょう。…次号はよろしくお願いしますね。  
1994年7月26日




Mさんから上のお手紙をいただき、びっくりしました。Mさんの下の通信は、27号の締切後に届きましたので、次号の通信用ファイルに差し込んでおいたつもりが別のファイルに入っていました。申し訳ありません。
松井




皆さん、お変わりありませんか。
昨年11月号の通信で手術室に向かったままご無沙汰しておりましたが…私は生きながらえております。肉体が病んでいる時は切ないものがあります。術後のベッドの中で11月号の通信を読ませていただきました。気弱になっていたのでしょうか…? 何気ない言葉が胸を熱くしました。手術(注:精索水瘤)は失敗でした。慎重に様子を見ながら治療を続けて行くことになり定期的に通院しています。膀胱や腎臓の耐用年数で寿命が決まる?と後藤礼治さんが言っておられましたが、私の場合だと棺桶に“首”いやっ“ハゲた額”まで入っている計算になります。
皆さん、泌尿器の管理だけは、くれぐれも気をつけてくださいよ!私たち、頚髄揖傷者にとって膀胱や腎臓の状態が生命に及ぼす影響は大きなものがあります。そして1年に1回はMRIを受けるようにして下さい。今年の2月にMRIで首のレントゲンを撮ったところマヒが上に上がって来ておりました。今の状態がいつごろから始まっていたのか検査を怠っていたので分かりません。私のようにならないように定期的な検査を受けて下さい。私は半年に1回、MRIを受けなくてはいけません。あっちもこっちもガタガタです。 5月8日に以前入院していた病院の交流会同窓会)へ出かけました。院長先生の話しから始まり、整形外科の先生で興味のある話しがきけたので紹介します。

≪廃用症候群≫


安静を長い間続けていると、手足の関節が動かなくなるばかりでなく、さまざまな障害がでてくること…あらゆる臓器の機能が低下して、いろいろな症状が現れるそうです。関節のほか、筋肉、骨などの萎縮、血庄の調節機能の低下、心臓の動きの低下なども起こります。それらの予防について→昼間は横にならないように心掛けること、適度の運動も欠かせませんね。

会場で呼吸法を学びました。呼吸法は自律神経の訓練にもっとも簡単で効果的な運動だそうです。自律神経は心臓の動き、内臓の動きなど人間の意志とかけ離れて生命の維持を、ある意味で自動的に行う神経で、筋肉を動かして身体を動かす体性神経(注:植物神経のこと)が旅先の私たちには大切な神経ですね。
≪呼吸法≫背筋を延ばして座り、肩のカを抜いてリラックスします。鼻からゆっくりと大きく息を吸います。5、6秒かけて腹も胸もいっぱい吸い込みます。そして今度は口から少しずつゆっくりと息を吐いてゆきます。10秒から20秒かけてすべてのものを吐き出すつもりで吐ききります。この吐ききることが大切です。以上の吸ったり、吐いたりを4、5回繰り返すだけで自律神経の訓練になります。

退院して社会復帰した人の話しや辛くて苦しかった体験談を涙ながらに話される方がいて良かったと思いました。中でも最後に話された方が一番印象に残りました。確か向…?坊主?…いやっ、名前は…向坊弘道さんと言っておりました。ユーモアを交えた楽しい講演でした。36年間の闘病生活の末に築き上げた強さを感じたとともに、自由人というべき大胆でI気のある意志、僕も生ある限り常に何かに向かって生きて行こう、そんな気持ちにさせる話しでした。一人でも多くの人との出逢いを求めて、一つ一つの出逢いを大切に生きて行きたい、そんな気持ちを膨らませながら会場を後にしました。

最近の若いエネルギーに満ちた通信や女性の方の優しくて夢のある通信はいいですね。野郎ばかりだと殺風景でいけない。それから、自慢話も良いじゃありませんか…それでその人の励みになれば何でもアリです。でもただ今ソース顔で足が長くて優しい彼とアツアツ恋愛中です!といった通信はあまり読みたくないな、個人的な意見として。片思いの彼女がいて勇気がなくて一生告白できません!と言った便りはいいなぁ。これからのはがき通信が楽しい心の通信となっていくことを願いつつ…。
皆さん、お元気で。   5月12日



電動車椅子−イマセン製、5年使用−を無料で提供するという追伸は取り消して欲しいそうですが、ぜひ欲しい方は送料自己負担でMさんに直接お願いしてみたら、如何でしようか。(編集部)


書くことへのこだわり

横浜市 HS


前号の通信に「手紙を出したくても出せない」という内容のお便りがあり、切実な思いを感じました。私はこの通信を知ってから1回を除き、毎回お便りを差し上げています。不特定多数の方に向かって通信を出すということは何か怖さもありますが、2ヶ月に一度日頃自分の考えていること、思っていること等を曲がりなりにも便りとしてまとめ上げるという作業に、自分なりの意義を感じています。元来、手紙を書くことは大好きです。文通している人も何人かいます。電話より手紙という人間です。手っ取り早いのですが、電話の方がむしろ苦手です。気に入った便せんや封筒、絵はがきを選ぶのも楽しいものです。

私は字が上達したのには一つのきっかけがありました。退院後(復職する前)、ワープロより何とか自分で書くということにこだわっていた私は、自分に合った筆記用具をいろいろと探していました。自分の手で書きたいという気持ちは切実でした。切実な願いに近かったと思います。その当時は、病院のOTの先生に作って頂いた自助具に、ペンを差し込んで使用していました。福祉機器の展示場などを回り、何点か購入したものの納得できる物が見つかりません。それがやる気を揖ねていたのか、字も相変わらずヘタクソのままです。

そんな折り、褥瘡で入院することになりました。ずっとベッド上なので、暇な時間は山のようにあります。私はその時間を、心から信頼できる友人に手紙を書くことに費やしました。それをノルマのように、ただひたすら毎日書き続けました。わずかに起きる時間はありましたが、ほとんど寝た状態で横を向いて書きました。気胸を併発していたので、不安な心の日記代わりでもありました。友人もそんな私に答えてくれて返事をくれました。3ヶ月余りして退院してみると、私の字は格段に上達していたのです。小さくまとまり、何となく書き慣れた字になっていました。友人には今でもとても感謝しています。書かずにいられないような、切羽つまった状態に置かれたのが良かったのでしょうか…。そのお陰か、現在は指の機能が少しよくなったせいもあり、長い文章は疲れるのでワープロに頼っていますが、市販の水性ペンの0.1ミリから0.5ミリを普通に持って使用できるようになり、愛用しています。復職してから仕事でボールペンも使うようになったせいか、ゆっくり書けば複写紙で3枚くらいは大丈夫になりました。必要に迫られるって大切かもしれません。甘えていられませんから。

これからもよはどのことがない限り、ずっと通信にお便り差し上げますのでよろしくお願い申し上げます。

追伸

前号でTFさんが紹介された「車いす総合賠償保険」のパンフを私も取り寄せてみたのですが、申し込もうかどうか迷っています。
ご覧になった方、もしくは既に加入されている方がいたらご意見をお聞かせ下さい。また、頸損になってから民間の生命保険に加入している方がいたらお知らせ下さい(一社から断られてしまったもので)。
8月19日 横浜市


新幹線の初旅

KS

ハガキ通信のみなさま、こんにちは。
残暑お見舞い申し上げます。厳しい暑さが続いておりますが、体調などくずされていませんか?
私は40日の長い夏休みをいただいておりますが、計画したこともあまり実行せず、寝ることの多い日々でした。2台のクーラーは毎日フル稼動の状態でした。それでもなかなか体温調節がうまくいかなくて3度はど点滴をうってもらいました。
7月の末から3泊4日で仙台に行ってきました。サークルの研究会参加のためです。3泊の外泊は初めてのことでした。そして新幹線に乗るのも初めてのことでした。車いす用の乗車券はこの辺りでは新幹線駅の駅長室でしか買えませんでした。その不便さにまずうんぎりしました。切符を買いに行ってくれた人が気をきかせて車いすが普通より大きいことを言ってくれていたので、あととても助かりました。というのはプライベート・ルームという席に座ることができました。これは個室になっていて椅子と車いすが入れる広さがあります。何かの記事で車いすで新幹線を利用する時はプライベート・ルームと指定して申し込むようにということを読んでいたのですが、すっかり忘れていたのです。それから乗車の30分前に駅長室に行きます。すると係りの人が荷物用のエレベーターに案内してくれて、それでホームに上がります。そして座席の車両まで連れて行ってくれます。

東京駅での乗り換えの時も通路が入っていて車両の入り口まで係りの人が迎えに来てくれていました。とても親切でありがたいなぁと思いました。東京駅で東北新幹線に乗り換える時、駅下の裏道をぐるぐると案内されている内に、ありがたさが薄らいできました。駅に乗客用のエレベーターがないために案内してもらわなければいけないのです。そして荷物用の臭いエレベーターを利用するしかないのです。しかもご丁寧に荷物用エレベーターには錠がかかっていました。JR東海とJR東日本を利用した訳ですが、「別会社なので乗り降りのお願いは僕らが頼むと気を悪くするので自分達で頼みなさい」と言われた時はひどくびっくりしました。

全般的にJR東海の方が比較的対応が管理的でないような気がしました。仙台駅では乗車の2、3日前に電話をかけて乗車日を告げ、どうしたらいいかを聞かなければなりませんでした。
新幹線の旅は長かったです。家に帰って熱がでるかと心配しましたが比較的元気でした。私のような重度の障害者でもこうして遠い地まで旅が出来るようになったことはありがたいですが、もっと気楽に列車旅行ができるようになってほしいと思います。
研究会はとても勉強になりました。1日4、5時間車いすに座っていたので、床ズレが心配でしたが、それもなく、この夏休みの私にとっての一大行事を無事に終えることができました。
皆様どうかお体には気をつけて下さいね。
8月21日


KNさんへ返信

NF


今年の夏は記録的な猛暑で、しかも雨が殆ど降らない状態がいまだに続いています。皆さんお変わりありませんでしょうか?
私は、体調を崩してこの夏は2回も(7月末と8月末)点滴をしてもらいました。
Nさんお便り有り難うございました。病気の苦しみと精神的な苦しみを克服されて、今を生き生きと生きておられるNさんには頭が下がります。
Nさんの手紙の中で「死にたいと思う人は寂しくて優しすぎるのです」と言う言葉にはホロリと涙が出ました。正直に言って、今でも死ねるものなら死んでしまいたいと思っているし、寂しがり屋です。自分が優しい人間なのかどうかは擬問ですが、どちらかといえば冷たい人間なのではないかと思っています。でも、自分も生き生きと生きたいし、今でも「生かされている」ということは、「何か」をやらなければならないから、この世に残されているのだから、その「何か」をやらないうちはあの世へと行けないだろう!

それと、「ご自分は本当は大好きなはずです」と書かれていましたが、自分が嫌いで、この世から自分という存在が、無くなってしまえばいいと思っているから、現実から逃げようとして自殺をしたりするのではないかと思っているのですが…。
今の自分は、誰かに来て欲しい、そばに居てほしいなんて思っています。でもこんな考え方は、「甘え」でしかない!!こんな気持ちでいたって、誰も来ませんよね!わかっています。自分の足で自分の道を見つけて歩いて行かない限り、人なんて来ないし、ましてや人の心の痛みや苦しみが分からない人間のところにも来ませんよね!
人に「してもらうばかり」で自分は何も行動をしていないんですもんね。
有りのままで自然に生きたい!本当の自分の姿はどんな人間なんだろうか?でも今は、手元にある資料とかを読んで、充電するしかなかなぁ〜なんて考えています。
はがき通信の№21のお便り読ませていただきました。全介助ということに驚いています。前号の原稿もワープロでかなり時間をかけて書かれたのでしょうね。今も病院に入っておられるのでしょうか?
何か訳のわかんない、返事となってしまい申し訳ありません。こんな人間ですが、Nさんの友達の一人に加えて頂けるなら、自分としても嬉しいです。宜しくお願いします!!
もう一度「運と幸せ」を自分の手でつかみ取りたい! 40歳になるまでには!
9月3日


ドーム観戦レポート

福岡県 夢運び人


拝啓 「はがき通信」のみなさま
残暑お見舞い申し上げます。今回は、ドームでのスポーツ観戦についてレポート致します。福岡ドームについてのレポートです。車椅子でのドーム観戦、それは普通の座席に移動し、そこで観ることの出来ない人の場合についてのレポートです。
次の4つのことが挙げられます。
  1. 駐車場について
  2. 座席について
  3. トイレについて
  4. チケットについて
これら4つについて一番の難題として
  1. 駐車場の占める割合はもっとも大きく、車でドームを訪れた場合、駐車場に車をおければ観戦は出来ますが、駐車場が満杯の場合、近くに駐車場などありませんので、観戦は諦めざるを得ません。ドームでのスボーツと言えば、野球が主で、野球の場合、大抵ナイターとなっておりまして、午後6時からの試合でも、日曜日の場合、午後1時ぐらいにはすでに駐車場は満杯となっており、そうでない平日の場合でも、3〜4時間前には満杯になりますので、相当早い時間に現地に着かなければ、せっかくの観戦は不可能となります。イベントがある場合、駐車料金は一回が2千円で、時間は関係ありませんが、イベントなどがない平日の場合、時間料金となっております。車椅子用のスペースがいくつかありますが、数えるほどもなく、そこには工事現場にあるような三角帽が置いてありまして、それを移動させて車を置く形になりますので、ゲートで、係員に車椅子ですからと言えば、Dの何番とか教えてくれます。
  2. 座席について、車椅子から普通の座席に移動できない場合、外野席が逆コの形になっており、そこには座席がありませんので、車椅子ごとそこで観戦する形となり、介護者はそばで立っての観戦もしくは、すぐ下の外野席での観戦となります。左端に大きなスクリーンがありますので、それと併用して観戦すると良いでしょう。
  3. トイレについては、車イス用の席のすぐそばにあり、普通の人はまず使わないので問題点はまったくありません。
  4. チケットについては、内野席を買っていようと外野席を買っていようと、車イスの観戦は外野席となりますので、入場される歳、係りの人にチケットを見せれば、払い戻しをしてくれます。例えば、内野席を2枚買っても車イスと介護者は外野席となりますので、差額を払い戻してくれます。なるべく早くドームヘ行き、試合後は最後の退場となり、係りの人が関係者用のエレベータを使って、来たときと同様に誘導してくれますので、試合後はいつでも移動できる様に心の準備をしておくことが大切です。日曜日にドームでスポーツ観戦をする場合、午後1時に車を駐車場へ置き、ナイターが始まるまで5、6時間待たなければなりません。

福岡市内の人は、タクシーが使えますので、駐車場の心配なく観戦出来ますが、帰りのタクシーが捕まらない場合も出てきますので、そのこともご理解下さい。
今回は福岡ドームでのスポーツ観戦についてレポートしてみました。もし誰か行かれる人がありましたら、きっと役に立つと思います。まだまだ暑いですが、「はがき通信」のみなさんもお元気で、さようなら。敬具 9月7日


パソコン用レーザ光線入力装置を導入

東京都 KF


8月初め、KFさんからパソコンを使い始めたと電話通信がありました。

入力装置がレーザ光線と新兵器という耳寄りな情報に訪問して見せていただきました。以下は松井の取材メモです。

Fさんはパソコン使用経験なしでしたが、ワープロを使いこなした活発な通信に関心を持ち、「上の空」に続く著書はワープロを使ってみようかと考え始めたそうです。

たまたま国立リハの所長が「上の空」の電子化について相談にみえたとき、国リハで開発したレーザ光線入力装置の導入を勧められました。


野球帽の翼に取り付けた光線を出す装置を頭の動きで操作しながら、特製のキーボード上に赤○を走らせる。

赤○光線が指やマウススティックの替わりにキーボードを操作します。


マウススティツクより入力は楽かなと感じました。

ただしキーボードが38万円、レーザ光線装置が20方円と高価です。Fさんは意思伝達装置として杉並区に申請し、全額補助されたそうでず。
なおパソコンは友人のお古(98F)、背中の痛みが耐えられなくなるまで、1時間半くらい続けて操作可能だそうです。
東京都 KF : CQN03007@niftyserve.or.jp



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